【画家が教える水彩画の描き方】上手に描くための絵の具・筆の選び方から塗り方まで

小学校で学ぶ水彩画。しかし、絵の具や筆などをなかなかうまく使えない子どもを見ていると、「何かアドバイスしてあげたい」と感じることもあるでしょう。

水彩絵の具や筆を上手に使うには、その特徴を理解することが第一。ここでご紹介する水彩画を上手に描くためのテクニックは、自由研究や写生大会でも役立ちますよ。

動画でも水彩画のポイントを紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
動画ライブラリ「水彩画を上手に描きたい!」

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この記事のポイント

1.水彩画の基本と用意するもの

水彩画とは、水溶性の絵の具を使って描かれた絵画のこと。みずみずしく生き生きとした絵を描きやすいのが特徴です。

水彩絵の具なら、水の量を調節すればさまざまなタッチで描けます。光に照らされた緑の葉も建物の影が落ちる風景も自由に表現できるでしょう。

まずは、水彩画を描く道具がそろっているか、お子さまと一緒にチェックしてみてください。

【水彩画に必要な道具】
・筆
・筆洗(ひっせん)
・水彩絵の具
・パレット
・画用紙(絵を描くためのもの)
・紙(試し塗りのためのもの)
・布
・静物の場合はモチーフ(果物、野菜など)

道具を用意できたら、描く準備へ進みましょう。

2.準備:筆洗に水を入れる

最初に、筆洗のすべてのポケットに透明な水を入れましょう。
・筆を洗う場所
・絵の具を溶くための水を含ませる場所
という2か所を必ず使い分けるのがポイントです。

絵の具を溶かすための水を汚さないように気をつければ、絵の具本来のきれいな色を使えます。

3.準備:筆に水を含ませる

次に、乾いている筆先を筆洗の水に浸し、水になじませましょう。筆先が水になじんだら、筆洗のふちでそっとぬぐって水の量を調整します。

4.下絵を描く

色を塗る前に下絵を描くことは多いもの。下絵には、次の道具がおすすめです。

【下絵におすすめの道具】
・HBの鉛筆
・練り消し(消しゴムのかすが出ない)
・マーカー(輪郭をはっきりさせたいとき)
・油性ペン(絵の具を塗ってもにじまない)

では、これから紹介する3つのコツを押さえながら下絵を描いていきましょう。

4−1.絵の主役を決める

1つめのコツは、絵の主役を決めること。主役とは、自分が描きたいもの、気になるものです。

4−2.大まかな形をとらえる

2つめのコツは、大まかな形をとらえて描くこと。「丸のかたまり」を意識することで、描こうとしているものの全体のバランスが分かりやすくなります。

4−3.遠くと近くを描き分ける

小さな子には少し難しいかもしれませんが、遠近法について教えてあげると、さらにうまく表現できるようになります。

同じ大きさのものでも、遠くのものは小さく、近くのものは大きく見えることを意識して描き分けることが上手に描くコツです。

5.絵の具をパレットに取り出す

下絵が完成したら、いよいよ、パレットに絵の具を出します。これから使う絵の具の色を「あずき一粒分」くらい出しましょう。

6.絵の具の混ぜ方のポイント

絵の具を混ぜるときは、2色以上の絵の具をパレットに出し、塗りたい量だけ少しずつ筆先でとって混ぜるのがポイントです。

また、「三原色(さんげんしょく)」を意識すると色の調整がしやすくなります。三原色は、水彩絵の具でいえば「レモン色」「セルリアンブルー」「マゼンダ(赤紫)」です。

この3色の割合を変えて、たくさんの色を作ってみてください。自分で色を作るのも、水彩画の楽しみの1つです。

色を作ったら絵を描く画用紙とは別の紙に試し塗りするのを忘れずに。別の紙に塗って色を確認してから、絵に色をつけていきましょう。

7.筆の持ち方のポイント

水彩画では鉛筆と同じように筆を持ちます。

太い筆と細い筆は、塗る面積に合わせて使い分けて。筆の先端で細く描いたり、筆の毛全体を使って広く塗ったりしてみましょう。

筆をふいたり、描くときに水の量を調整したりするには、布を使うと便利です。布がなければ新聞紙でも構いません。

8.色を上手に塗るコツ

下絵の余分な線を消して色塗りを始めましょう。色塗りにもいくつかのコツがあります。

8−1.塗る順番を意識しよう

色を上手に塗るには、塗る順番が大切です。絵の主役から塗るよりも、薄くて面積の大きな色から塗っていくとよいでしょう。

たとえば上の絵のような風景画の場合、最初は空の薄い青、次が主役の木の緑と幹…と塗っていくと、きれいに仕上がります。奥行きを意識しながら塗りましょう。

8−2.空を塗るコツ

まずは、筆に水をふくませて、画用紙に水だけを塗るのがポイントです。画用紙に水がなじんで絵の具のかすれを防げますよ。

その後、太い筆に水をたっぷり含ませて絵の具を溶き、広い範囲を一気に塗りましょう。左右に大きく筆を動かし、上から下へ塗るときれいに塗れます。

水彩絵の具は、水が多いほど薄い色になるのが特徴です。空の下側にいくほど水を多めにして色を伸ばしていきましょう。木の緑や幹を描く部分にも、気にせず一気に空の色を塗ってしまってOKです。

8−3.木を塗るコツ

次に、主役となる木を塗ります。

コツは、色を置いた部分から引っ張ってくるようにして絵の具を伸ばしていくこと。お子さまには「傘の先で水たまりから水を伸ばしてみるようにしてごらん」とアドバイスしてみてください。

右利きのお子さまは左側から、左利きのお子さまは右側から描いていくと画面が汚れにくくなります。

8−4.光や影を塗るコツ

光や影を塗るときは、基本の色と他の色を混ぜて色を作ります。

影は黒とセルリアンブルー、光が当たっている部分は、基本の色に緑・黄・青・白などを混ぜてみましょう。

色を作れたら、光が差す方向を意識しながら塗ってみて。今回は上から光が当たっていると考え、右上に明るい緑、左下に暗い色を足しています。

木の幹も暗い部分と明るい部分を意識して、何種類かの茶色で塗りましょう。影のすきまから小枝が見えていることをイメージして描くと上手に表現できます。

「本当は枝葉つながっているけど、葉っぱで隠れてるんだね」などと声をかけてあげると、「じゃあ、こうやって描こうかな」というお子さまの工夫を引き出せるかもしれません。

さらにうまく描くなら、白を多く混ぜた色で枝や幹に木漏れ日を描くのもおすすめです。筆の先端で、ちょん、ちょんと描くのがポイントです。

8−5.主役と背景の差をつけるコツ

主役の木と背景の塗り方を変えると、画面全体にメリハリが出てきます。具体的には、背景を水を多めに含ませた絵の具で塗り、存在感を弱めるという塗り方が可能です。

きれいに塗るには、下絵の輪郭をなぞるのではなく、上のほうに絵の具をのせて下へ伸ばしていくのがポイント。濃淡を使い分けて塗り進めましょう。

最後に、空に白い絵の具で雲を塗り足したら、完成です。

9.水彩画をもっと楽しむには

水彩画を楽しむ一番のコツは、お子さまが描きたいものを描かせてあげることです。好きなものなら、じっくり観察するのも苦ではありません。

「全部同じ緑色だと思っていたけど、少しずつ違うみたい」
「ネコの細いヒゲはどうやったら描けるかな?」
「こんな建物があったら楽しい」

興味のある対象や想像したものを自分の手で表現する楽しさは格別です。好きなものを描くことで思わぬ発見があったり、うまく描けたときに自信がついたりするでしょう。

10.後片づけもしっかり!

絵が描き上がると「これで終わり!」としてしまうお子さまもいるかもしれませんね。しかし、「水彩画を描く」ことには、準備から後片付けまでの全てが含まれています。

絵を描いたら、
・使い終わった筆やパレットはよく洗って水を切って乾かしておく
・チューブに入っている絵の具が乾いて固まらないようしっかり蓋を締めておく
といった片づけも練習しましょう。

周りを汚さないために新聞紙などを敷いていたなら、それもお子さまと一緒に片づけるようにするとよいでしょう。

画材を適切に使うスキルが身につくとともに、次に描くときもスムーズに準備を始められますよ。

まとめ & 実践 TIPS

水彩絵の具は準備も片付けも大きな手間がなく、手軽に挑戦できる画材です。

どう扱ってよいかわからないときは難しく感じるかもしれません。しかし、水の使い方や絵の具の混ぜ方、下絵の描き方、塗り方などを1つずつ練習していけば、少しずつうまく描けるようになっていきます。

保護者のかたは、お子さまが好きなものを自由に描けるよう、準備などをサポートしてあげましょう。

お子さまが描く様子を見ていて「自分も描いてみようかな」と感じたら、ぜひ保護者のかたも一緒に水彩画に挑戦してみてください。

プロフィール


湯浅誠

建築パース制作会社に勤務後、現在は風景画家として活躍するほか美術専門学校の講師としても活動中。「江ノ島電鉄」のカレンダーの制作にも携わる。

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