「在宅勤務で体重が増えた」を因数分解出来る?身に付けたい数学の考え方

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学校での勉強が社会に出て役に立たない例として、数学の「因数分解」や「三角関数」が挙げられることがありますが、本当に役に立たないものなのでしょうか。今回は因数分解の学習を通して学ぶことについてお話しします。

この記事のポイント

そもそも「因数分解」や「三角関数」は何に使う?

高校で文系・理系に分かれる際に、「数学ができるか?」が大きな要因になると言われますが、周囲の文系といわれる人に理系の話題をふると「算数は必要だけど、数学はいらない」と力説し、その具体例として「三角関数なんて使ったことがない」「因数分解ができても何の得もない」という発言をよく耳にしました。

これらの単元の学校での勉強については、いろいろ意見が分かれるところではあります。では因数分解や三角関数が何に役立つかというと、次のような場面で必要とされます。

  • 因数分解・素因数分解 → 暗号技術、計算の簡略化など
  • 三角関数 → 測量、ゲームのプログラミングなど

日常生活や仕事で「暗号技術」や「測量」が関係しなければ、文系・理系関係なく因数分解や三角関数の知識は必要ないかもしれません。では必要のない知識は、学校で学ばなくてよいのでしょうか?

「因数分解」で「因数に分解する」意味は?

「因数分解」とは、その名の通り「因数」に「分解」することですが、その【因数】とは何かというと、次のように説明されています。

  • 1つの式がいくつかの単項式や多項式の積の形で表されるとき、その1つ1つの式をもとの式の因数という。

例えばx+x-6=(x+3)(x-2)という数式で考えると、(x+3)(x-2)がx+x-6の【因数】にあたります。つまり「因数分解」とは数や式を【かけ合わされている要素に分解する】とも言えます。しかし数学の問題で出される因数分解は、難解なパズルのようなもので、そう簡単には分解できないものもあります。

しかしこのように一見複雑にかけ合わされたものを、共通点や特徴から分析して【かけ合わされている要素に分解する】ことは、ふだんの生活や仕事の場面での問題解決で使われることがあります。例えば昨今の「在宅勤務で体重が増えた」という問題の場合、次のような「因数分解」が考えられます。

  • 体重の増加=(運動不足)×(食べ過ぎ)

「体重の増加」を上記のように「因数分解」できれば、それぞれの「因数」への対策を打てばよいという見通しが立ちます。このように因数分解の公式そのものを使わなくても、因数分解を通じて身につく「見方・考え方」が役立つのではないでしょうか。

文系・理系問わず必要な「数学的な見方・考え方」

学校での勉強では知識そのものの獲得だけでなく、その知識を習得する過程で見方や考え方を獲得していることもあります。別の言い方をすれば「因数分解【を】学ぶ」ではなく、「因数分解【で】学ぶ」ということです。「因数分解【を】学ぶ」というのは、因数分解の公式や問題をひたすら解くという知識や技能の習得を指しますが、「因数分解【で】学ぶ」は因数分解の問題を解く過程で獲得する見方や考え方の習得を意味します。

小学校では、今年から新しい教科書が使われていますが、そこでは【教科の見方・考え方】というものが強調されていて、次のような「数学的な見方・考え方」が示されています。

  • 「事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、根拠を基に筋道を立てて考え、統合的・発展的に考えること」(『算数科学習指導要領解説』 平成29年告示)

実はここで示された【教科の見方・考え方】は、来年以降に変わる中学校・高校の教科書でも強調されてくる観点です。これは知識や情報の更新サイクルが早くなってきた現在、「知識・情報【を】学ぶ」だけでなく、「学習する過程【で】学ぶ」ことの重要性が高まっていることとも関係しています。

学校で学んだことが卒業後に全く使わなかったからといって「不要である」と結論づける前に、今あるものの見方や考え方に何らかの意味や影響があると思い返してみてはいかがでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

因数分解や三角関数そのものを使うことはないかもしれませんが、その問題を解くプロセスで得る見方・考え方は、予測の立ちづらい世の中を生き抜くために習得しておいて損はないと考えます。

株式会社プランディット 十河(そごう)
編集プロダクションの株式会社プランディットで、進研ゼミを中心に、小学校から高校向けの教材の企画・編集を担当。

プロフィール



1988年創業のベネッセ・グループの編集プロダクションで,教材編集と著作権権利処理の代行を行う。特に教材編集では,幼児向け教材から大学入試教材までの幅広い年齢を対象とした教材・アセスメントの企画・編集を行う。

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