勉強が続く!わかる!「ビッグデータ」時代の家庭学習<第1回> 家庭学習を変える「ビッグデータ」とは?

みなさんは、「ビッグデータ」という言葉を聞いたことはありますか。最近、新聞やテレビのニュースなどでもよく取り上げられる「ビッグデータ」が、子どもたちの学習を大きく変えるといわれています。でも、「『ビッグデータ』ってそもそも何?」「学習が変わるってどういうこと?」と思われるかたも多いのではないでしょうか。

このシリーズでは、教育におけるデータ活用について、具体的な事例も含めてご紹介していきたいと思います。初回である今回は、ベネッセ教育総合研究所副所長・木村治生に聞きました。

Q そもそも「ビッグデータ」とは何ですか?

—現代は、私たちの意識や行動などの情報が、データとしてさまざまな形で蓄積されている時代です。蓄積された膨大なデータを「ビッグデータ」と呼びます。企業などでは「ビッグデータ」を分析して、さまざまなタイプの人の好みや行動パターンに合わせた商品やサービスの開発を行っています。

Q.教育ではどのように活用されるのでしょうか?

—子どもの家庭学習でも、タブレットやスマートフォンなどデジタル機器を使う学習が増えてきました。デジタル機器を使うと、一人ひとりの子どもの学習した日時、時間の長さ、学習内容や解答(正誤)などがデータとして蓄積されます。今までは詳しくわからなかった子どもの学習の様子が、手に取るようにわかるようになってきました。

—こうした教育の「ビッグデータ」活用には、大きく2つの利点があります。1つは、学習履歴の分析によって、「どのような学習が効果的か」がわかることです。問題の解答状況からは、「学習でつまずきやすいポイント」を発見することができます。また、学力を伸ばした子どもがどのような学習をしていたかを分析すれば、「効果が上がる学習方法」を発見することもできます。その成果は、デジタル教材だけでなく、紙の教材や対面での指導を改善するのにも役立ち、たくさんの子どもが恩恵を得ることができます。

—もう1つは、「一人ひとりの状況に合った学習」の提供が可能になることです。学習履歴からは、その子がどの問題にどれくらいの時間をかけて取り組んだのかや、正解・不正解がわかります。このデータを分析すれば、その子の学力の状況やつまずき、好みの学習方法に合わせた内容を提供することが可能になります。この一人ひとりに合った学習は、専門的には「アダプティブ・ラーニング」といわれています。学校や塾などでの対面的な指導では、以前から子どもの状況に応じた指導が行われてきました。しかし、それは先生が子どもの状況を読み取る力、すなわち先生の力量にも依存します。アダプティブ・ラーニングでは、データを生かして、対面指導に近い形で子どもに必要な働きかけができるのが特長です。このことは、それぞれの学習者に大きなメリットをもたらします。

Q.具体的には、どんな変化があるのでしょうか?

—例えば、子どもの学習のペースメーカーとして、あたかも隣に寄り添うようなサポートが可能になります。子どものやる気が落ちるタイミングなどを分析し、そうなる前にメッセージを送るなど、一人ひとりの子どもの気持ちや状況に応じた働きかけが可能になります。

—さらには、学習上の「つまずき」を見つけたり、まちがえた問題をできるようになるまで指導したりすることが容易です。子どもの多くは、自分がどこが苦手か、わからないときにどの内容まで戻って学習し直せばよいのかがわかりません。まちがえた問題を放置してしまいがちですし、学校や塾の先生も一人ひとりがどの問題をまちがえたのかまでは把握できません。しかし、デジタル教材では、子どものまちがいを容易に把握できます。その問題ができるようになるために、どこまでさかのぼればよいかもデータから明らかですし、まちがえた問題と似た問題をくり返して提供することもできます。それぞれの子どもにあった解説や指導が可能になるのです。

—実際に「進研ゼミ」でも、デジタル教材を用いて学習している会員が50万人以上(2016年4月時点)の学習データを、分析専任チームが検討しています。その結果は、教材の制作担当者や赤ペン先生の担当者に日々フィードバックされ、教材やサービスに生かしています。じつは、ビッグデータがあればすべてが解決するわけではありません。分析結果を教育的な観点から理解して、一人ひとりの子どもの働きかけに生かすには、「人」の力が最終的には必要です。データは、子どもの学習に具体的にいかしてこそ意味があるのです。

—ベネッセ教育総合研究所でも、学校と連携しながら、ビッグデータを子どもたちの学習にどう生かすかを研究しています。その試行錯誤は、WEBサイトで公開しているので、よろしければそちらもご覧ください。

★ベネッセ教育総合研究所「ビッグデータを活用した教育研究」
http://berd.benesse.jp/special/bigdata/

いかがでしたか。次回からは、このビッグデータで子どもの学習や教材が実際にどのように変わってきているのかを、具体的に見ていきましょう。
(文・沓澤糸)

プロフィール

木村治生

木村治生

CRN主席研究員、ベネッセ教育総合研究所主席研究員。
ベネッセコーポレーション入社後、子ども(乳幼児~大学生)、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究、 学習のあり方についての研究、教育市場(産業)の調査などを担当。 文部科学省や経済産業省、総務省から委託を受けた調査研究にも数多く携わる。 東京大学客員准教授(2007年、2014~16年)、追手門学院大学客員研究員(2018年~)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~)、文部科学省「中高生を中心とした子供の生活習慣づくりに関する検討委員会」委員(2013年)、「中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業」における選定委員会委員(2017年)、光り輝く「教育立県ちば」を実現する有識者会議委員(2014年)、富山県学力向上対策検討会議アドバイザー(2014年)、草加市子ども教育連携推進委員会専門部会委員(2014年~)など。専門は社会調査、教育社会学。

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