子どものやる気を高める保護者の関わり方

「勉強が続く! わかる! 『ビッグデータ』時代の家庭学習」の連載の第7回。
5月に入りゴールデンウイークが明けると、多くの子どもたちが新しい学年での生活に慣れてきます。新学年のはじめのうちは高かった学習意欲が少しずつ落ちてきて、学習習慣がなかなか身につかない…という保護者の声も、よく耳にします。
それでは、学習意欲を維持するにはどうすればよいのか。今回は、小学生の「勉強のやる気」の高め方について、進研ゼミの学習記録の分析からわかったことを紹介します。前回に引き続き、ベネッセコーポレーション・分析センターの山本るり子に話を聞きました。

Q.子どもの学習意欲をどう高めればよいか、悩んでいる保護者が多いようですね。

-ベネッセ教育総合研究所の調査結果*1を見ると、小学生の保護者の76.7%が「毎日勉強するよう促す」と回答しています。なかなか勉強しない子どもに対してどのように働きかければよいか、保護者が悩んでいる様子がうかがえます。

-進研ゼミのビッグデータからは、新年度が始まる4月は教材の取り組み量がいちばん多く、1年の中でもっともやる気が高い時期だということがわかります。しかし、子どものやる気には波があります。例えば、ゴールデンウイークや夏休み、冬休みなど、生活リズムが変化するタイミングで、学習習慣が乱れる子どもが増えます。反対に、テストなどの目標ができると、学習意欲が高まったりします。学習意欲が高まるタイミングは、子どもによって違います。
*1 ベネッセ教育総合研究所「小中学生の学びに関する実態調査」(2014)

Q.学習意欲を高める方法を研究しているそうですが、どのような内容なのでしょうか。

-私たちは、進研ゼミのデジタル教材を使って学習する50万人以上*2の会員のデータから、クラスター分析という手法で子どもたちの学習状況をいくつかのパターンに分けました。そのパターンごとに、学習を促すタイミングやアドバイスの内容を変えて、学習習慣が定着するようサポートしています(詳しくは第2回をご覧ください)。

-さらに、どのようなことが子どもの意欲を高めるのに有効なのか、さまざまな方法を試しました。その結果、小学生のうちは、保護者の働きかけで学習意欲が高まり、学習が継続しやすくなることがわかりました。
*2 2016年4月現在

Q.保護者の働きかけとは、具体的にどのような方法でしょうか。

-保護者の働きかけが大事というのは、よくいわれています。しかし、実際に自分の子どもに対して、どのタイミングで、どのような声かけをすればよいかがよくわからない、という保護者は多いと思います。勉強していない様子が目について、ついつい叱ってしまうことに悩んでいる保護者もいます。

-デジタル教材のよい点の一つは、子どもの学習記録を可視化できることです。進研ゼミの小学生向けの講座では、子どもの取り組みや正解率などを保護者のかたにメールでお知らせするサービスを行っています。また、子どもから保護者にメールを送ることができる機能もあります。保護者は、子どもの側にいなくても、子どもの学習状況を把握できます。メールから子どもの学習状況やメッセージを受け止めて返信したり、がんばりを認めるなど、適切なタイミングで子どもに働きかけることもできます。

-ビッグデータを分析してみると、子どもと保護者の間で学習に関するメールのやりとりがあるケースでは、ない場合に比べて約8%、教材に取り組む比率が高いことがわかりました。保護者が働きかけを行うチャンスを逃さないことが、子どものやる気を高めることにつながっているといえるでしょう。

Q.働きかけのタイミングのほかに重要なことはありますか。

-どのような働きかけをするか、その内容も大切だと思います。先ほどお話をしたとおり、進研ゼミのデジタル教材では、一人ひとりの学習状況のパターンに合わせて教材活用の方法を提案しています。この子どもに対するメールと同じ内容を、保護者にも配信して、保護者からも同じメッセージを伝えてもらうという試みをしてみました。

-子どもを挟んで進研ゼミと保護者から同じ働きかけをするので、私たちはこれを「サンドイッチメール」と呼んでいます。すると、子どもにだけメールを送っていたときと比べて、教材の取り組み率が2~3割も高くなることがわかりました。

-「サンドイッチメール」は、年数回、子どもの教材への取り組みが停滞しそうになるタイミングで送っています。それまでの学習状況からよいところをほめ、またその子どもにあった具体的な教材の使い方を提案する内容です。子どもは、進研ゼミからのメールと同じタイミングで保護者からも具体的な内容をほめられ、学習成果を確認し合ったり、次の目標を考えたりします。このように、その子どもの状況に合った内容の言葉かけを、同時に複数からなされることで、子どものやる気が高まったのだと考えられます。

Q.保護者の役割は大事なんですね。

-特に小学生くらいまでは、保護者が自分を気にかけていてくれている、認めてくれていると感じることが、やる気を高めるのに有効です。中学生くらいになると「高校合格」のような目標をもって学習できるようになりますが、小学生のうちはまだ中・長期の目標で学習を促すのは難しいのです。そこで、学習内容そのもののおもしろさや他者からの働きかけで動機づけてあげる必要があります。そうした発達段階や学習理論に基づいた働きかけが求められます。

-さらに、子どもや保護者の状況も、一人ひとり異なります。究極的には、それぞれの状況にぴったり合った提案を、子どもにだけでなく保護者のかたにもしていきたいと思います。デジタル教材の利便性や、そこで蓄積されるデータを活用して、ご家庭と進研ゼミとで子どもたちの学習を見守り支えていくことができる教材・サービスを、今後も開発していきたいと考えています。

今回は、子どもの学習意欲の向上における保護者の働きかけの重要性、そしてそれを支えるデジタル教材のしくみについてお伝えしました。今後さらに研究開発が進み、さまざまなタイプ・状況の子どもたちに合った学習環境、学習方法が整っていくことが期待されます。(文・沓澤糸)

プロフィール


山本るり子

ベネッセコーポレーション
ゼミカンパニー 分析センター
学習データアナリスト
ベネッセコーポレーション入社後、進研ゼミのマーケティング、デジタルサービス開発、データ分析などを担当。「チャレンジタッチ」開講当初から、データ分析に従事、学習行動の分析に携わっている。

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