自己肯定感の向上、家庭が大きな役割

日本の子どもたちは、諸外国の子どもたちに比べて、自己肯定感が低いことが課題になっています。国立青少年教育振興機構の調査結果によると、生活体験やお手伝いなどの経験のある子どもほど、自己肯定感が高いことがわかりました。子どもの自己肯定感は、保護者の関わり方次第で、大きく変わるようです。

「体験活動」が多いほど自己肯定感が高い

調査は2015(平成27)年2~3月、全国の公立の小学1~3年生の保護者、小4~6の児童とその保護者、中学2年生と高校2年生の生徒を対象に実施し、子ども1万8,031人、保護者1万5,854人から回答を得ました。

それによると「自分には、自分らしさがある」「今の自分が好きだ」などの質問に、「そう思う」と回答した自己肯定感が高い(「高い」と「やや高い」の合計、以下同じ)と思われる子どもの割合は、小4が61.4%、小5が57.3%、小6が54.9%、中2が32.8%、高2が27.6%で、学年が上がるにつれて、自己肯定感が高い子どもの割合が減っています。

特に小6と中2では22.1ポイントもの差があり、小学生から中学生になると自己肯定感が大きく下がるのが特徴です。国際比較調査などでも、日本の高校生の自己肯定感が著しく低いことがわかっており、子どもたちの自己肯定感を高めることは、学習指導要領の改訂でも課題の一つとなっています。

一方、子どもたちの体験活動と自己肯定感との関係を見ると、「海や川で泳いだことがある」などの自然体験の多い子どものうち、自己肯定感が高かった者は61.1%なのに対して、自然体験が少ない子どものうち、自己肯定感が高い者は29.7%にすぎませんでした。

同様に、「タオルやぞうきんを絞ったことがある」などの生活体験の多い子どものうち、自己肯定感が高い者は60.0%、生活体験が少ない者では27.9%でした。また「食器をそろえたり、片付けたりすること」などのお手伝いを多くしている子どものうち自己肯定感が高い者は63.4%、お手伝いをほとんどしていない子どもでは22.4%でした。小さなころから自然体験や生活体験、お手伝いなどを経験している子どもほど、自己肯定感が高いと言ってよさそうです。

小さいうちからの関わりが大切

ただ、「子供の教育費(学校以外)」との関連では、子どもの教育費の支出が多い家庭の子どもほど自然体験が豊富で、しつけもできている……という結果が出ました。自然体験などは旅行やレジャーに関係してくること、経済的余裕のある家庭ほどしつけなどに時間が取れることなどが影響していると思われます。

その一方で、生活体験やお手伝いなどの多寡は家庭の経済力と関係ないということもわかりました。重要なのは、家庭の経済力ではなく、保護者がどれだけ子どもと関われるかということのようです。

この他、スマートフォンの依存度と、自然体験・生活体験・お手伝いなど体験活動の間に、関連は見られませんでした。その代わり、自己肯定感が高い子どもほど、スマホの熱中度が低いという結果が出ました。スマホ所有者のほとんどは高校生であるため、体験活動の影響が少ないためと推測されます。逆に言えば、スマホの問題についても小さなころから保護者との関わりの中で自己肯定感を高めることが重要といえるでしょう。

  • ※青少年の体験活動等に関する実態調査(平成26 年度調査)
  • http://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/105/File/01gaiyou.pdf

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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