言葉がきつく他人の行動に厳しい娘【前編】[教えて!親野先生]
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教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
小学1年生の娘のことです。元々言葉がきつく、他の人の行動に厳しい子で心配はしていたのですが、つい先日お友達のお母さんから、うちの子が何人かのお友達を叩いたり、その場にいる他のお友達にも叩くことを強要したりしていること、お友達を支配したいような言動が目に付くこと等を指摘されてしまいました。
娘に聞いてもまったく認めません。私が何かにつけ自業自得と言ったり、悪いことは悪い!と決め付けて言ったりしてきたせいかなと反省しています。
親野先生のお話にはまず受け入れて共感すること、とありますがなかなかできずにいます。今からでもがんばれば子どもは変わってくれるでしょうか?
(りほほ さん)
【親野先生のアドバイス】
りほほさん、拝読いたしました。
うすうす感じていたことであっても、はっきり指摘されるとショックですし、つらいですよね。
でも、物は考えようです。
ぜひ、いい機会としてとらえてください。
というのも、こういうつらいときこそが転機になるからです。
そうすれば、何年かあとには、「あれがいいきっかけだった」と思えるような日が必ずきます。
りほほさんも、もう何をすればいいかわかっていらっしゃるように思います。
りほほさんは、子どもに「それは自業自得でしょ」と言ってきた点を反省していらっしゃいます。
こういう反省はとても大事です。
反省を一歩進めて、「これからは、子どもに対してこういう言い方はもう決してしない」と一大決心をしてください。
もちろん、そう言いたい気持ちはよくわかります。
そして、確かにほとんどの場合は自業自得なのです。
でも、親がそれを言っても何一つ効果はありませんし、そればかりか、まったくの逆効果になることがほとんどなのです。
言われたほうは必ず「冷たいな」と思いますし、「わかってもらえないな」とも思います。
そして、「言っても無駄だ」「言うだけ損だ」という気持ちにもなります。
さらに、「親に受け入れられていないな」「愛されていないな」「私はいなくてもいいのかも」「自分で自分を守らなくては」というように進んでいくのです。
「そこまで?」と思うかもしれませんが、そこまでいくのです。
子ども自身も意識しないところで、だんだんそういう気持ちが芽生えていくのです。
「親に受け入れられていないな」「愛されていないな」「私はいなくてもいいのかも」という意識は、自分の存在に対する自信の欠如につながります。
「自分で自分を守らなくては」という意識は、親をはじめとした自分を取り巻く周囲への、基本的な信頼感の欠如につながります。
当然、親子の信頼関係にも深刻な影響を及ぼします。
また、こういう状態だと、学校で友達とちょっと肩がぶつかったりしてもけんか腰になります。
友達のちょっとしたからかいの言葉にキレてしまうということにもなります。
一種の被害妄想的な状態です。
自分の存在に対する自信があって、周囲への信頼感もある子は、いつも安らいでいて友達にも優しくなれます。
その反対の子は、そうはいきません。
いつも不安感があるので、友達を自分に引きつけようという気持ちがとても強くなります。
ちょっとでも自分がないがしろにされたり無視されたりしたと感じると、過度に反応してしまいます。
また、友達に対して、いつも自分のほうを見ていてもらいたい、自分を一番の友達と認めてほしいという気持ちも強くなります。
それが、結果的に友達の支配につながるのです。
りほほさんは、子どもに「悪いことは悪い! と決め付けて言ってきた」点も反省していらっしゃいます。
これもとても大事な点です。
ちまたでは、よく「ダメなことはダメと言わなければいけない」とか「悪いことは悪いと言うべきです」などと言われています。
でも、私は、「ダメなことをダメと言うだけではダメです」「悪いことを悪いと言うのは悪い言い方です」と言いたいと思います。
つまり、大切なのは言い方なのです。
子どもはダメなことや悪いことをたくさんします。
子どもの毎日はそういうことの連続です。
でも、そこで、親が毎日「○○しちゃダメでしょ」「それは悪いことだよ」「○○はいけません」などの言い方ばかりしていたらどうでしょうか?
子どものほうは嫌になってしまいます。
「ダメ」「悪い」「いけない」などと言われてばかりいると、だんだん自分自身が「ダメな子で悪い子でいけない子」と言われているように感じ始めてしまうのです。
ですから、親の言い方がとても大事なのです。
そこで、次の三つを頭に入れておくといいと思います。
1.
「○○するといいよ」「○○するとうまくいくよ」「○○すると気持ちいいよ」というように、プラスイメージの言い方にするだけで受け手の気持ちは変わります。
2.
または、「あなたが○○するとお母さんは心配だよ」「○○してくれるとお母さんうれしいな」というように、アイ・メッセージの言い方も効果的です。
3.
それと、叱る場面から入るのではなく、ほめる場面から入るというやり方もとても効果的です。
つまり、子どもができていないのを見て叱りたくなっても、そこはひとまず目をつぶっておくのです。
そして、そのとき、「今度できている場面をとらえてほめよう」と決意するのです。
そして、ほんの少しでもできている場面を目ざとくとらえてほめるのです。
この三つを意識していると、子どもに何かを言うとき、非難の要素を入れなくて済みます。
実は、この非難の要素を入れないということはとても大事です。
言い方のなかに非難の要素が感じられると、言われたほうは素直になれなくなってしまいます。
たとえ言われていることが正しいことであっても、自分が非難されていると感じると、人は心を開くことができなくなるのです。
どうしても、反発したくなってしまうのです。
そして、日常的に親の言葉の端々に非難の要素を感じていると、先ほども言ったように「受け入れられていないのではないか?」「愛されていないのではないか?」という気持ちにどうしてもなってきます。
さらに、いつも非難を含んだ言い方をされている子は、友達に対しても同じような言い方をしてしまいがちです。
表面的に言えば、口癖が似るということです。
でも、内面的にはもっと深刻で、周囲への基本的な信頼感の欠如が言い方に表れてしまっているということなのです。
このようなわけで、この非難の要素を入れないということはとても大事なのです。
このような地道で細かい点での努力が大事です。
ダメなことをダメと言い、悪いことを悪いと言うだけでは、問題は解決しないのです。
ダメと言わずに、悪いと言わずに、良いほうに導いてやることこそが大事なのです。
……この続きは次回で紹介します
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