第12回 国・公・私立学校の学力状況と公立中高一貫校
第11回コラムに続き、さらに文部科学省の調査結果と適性検査とのかかわりを探ります。
「平成20年度全国学力・学習状況調査 教科に関する調査の結果(7)国・公・私立学校の状況」の結果は「国立・私立学校は一般的に入学者選抜を行っていることに留意する必要があるが、平均正答数について見ると、19年度同様、国立・私立学校は、公立学校を上回っている」というものでした。
詳しく見てみましょう。なお、私立学校は学校比較対象からはずします。公立・国立の調査実施率がほぼ100%であるのに対し、私立は約50%の実施率しかないからです。しかし正答率分布グラフは、私立のほうが若干緩めではあるものの、ほぼ国立と同様な分布曲線を描いています。
小学校国語AとBにおいて、平均正答数と平均正答率は、
〈公立〉は、Aが(11.8問/18問、65.4%)、Bが(6.1問/12 問、50.5%)
〈国立〉は、Aが(14.7問/18問、81.6%)、Bが(8.3問/12 問、69.3%)
国語の平均正答率で、Aは16.2%、Bは18.8%、国立は公立を上回っています。
同じく算数AとBにおいて、
〈公立〉は、Aが(13.7問/19問、72.2%)、Bが(6.7問/13問、51.6%)
〈国立〉は、Aが(16.1問/19問、84.6%)、Bが(8.8問/13問、68.0%)
算数の平均正答率で、Aは12.4%、Bは16.4%、国立は公立を上回っています。
中学校の詳細は割愛しますが、国立と公立の平均正答率は小学生以上に開き、国語Bでは22.1%、数学Bでは26.4%もの差になっています。
(数字はいずれも文部科学省発表による)
さて問題はこれからです。小学校国語Bと算数Bにおいて、満点と誤答数1問までの割合をとってみると、国立の児童では、国語Bが約21%、算数Bが約17%を占めます(詳細は、文部科学省ホームページを参照)。これまでの私の経験則から判断すると、この層の児童は大学入試において、国公立および医学部を含む難関私立に入学する可能性が極めて高い児童です。
この範囲に分布する公立の児童は、国語Bに約7%、算数Bに約5%います。人数にすると、国語は約8万人、算数は約6万人です。中間をとって公立小学校児童の約7万人は、国立小学校児童最上位層と互角に渡り合える力量(潜在能力)を有するとみてもいいでしょう。
適性検査を課す公立中高一貫校(併設型と中等教育学校)は、この約7万人の対象児童に照準を当て、少なくとも大都市圏では、私立中学校とパイの分捕り合戦をすることになるといえます。このうち約1万人が国立・私立中学上位校に進学すると考えても、残り約6万人が公立中高一貫校生の候補となります。平成20年度までに設置された公立中高一貫校(併設型と中等教育学校)は、合計80校、約1万人が進学しています。仮にその全員が上記枠内の児童だとしても、まだ5万人を受け入れる余地が公立中高一貫校にはあるということになります。
文部科学省は、中高一貫校を国・公・私立を含めて500校と構想しているようですが、公立だけに限っても中高一貫校はまだまだ増えていきそうです。