人文社会系学部は不要? 文部科学省の通達の背景を専門家が解説
文部科学省が国立大学に対して、教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止・転換を通知したことが、大きな話題となっている。これには強い批判があるものの、どのような形であれ、国立大学がこれから再編の時代を迎えることは確実だろう。これからの国立大学について、ベネッセ教育情報サイトでは、教育ジャーナリストの斎藤剛史氏に解説してもらった。
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2004(平成16)年度に法人化された国立大学は、各大学が大学運営に関する6年間の「中期目標・中期計画」を策定し、その取り組み状況などを勘案して、文科省から運営費交付金が配分される仕組みです。今回の文科省の通知は、第3期計画を策定するにあたっての方針などを示したもので、人文社会系学部などについて、「組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組む」としています。また第3期計画では、国立大学をいわゆる地域貢献型・特定分野集中型・トップレベル型の3タイプに分けることが決まっており、これも大学関係者の反発に拍車を掛けています。
成果がすぐに表れないからといって、人文社会系の学問が必要ないということにはなりません。また、国立大学が理工系中心になれば、人文社会系の志望者は私立大学を選択するしかなくなります。さらに、通知は社会的要請の強い分野への転換を挙げますが、企業などの即戦力となる人材を養成するだけが、大学の役割ではないでしょう。
ただし、文科省通知の背景には、国立大学の在り方をめぐる大きな問題があることも見落とせません。それは、国立大学の多くが「ミニ東大」とも言える同質的な大学となるか、それとも特色や異なる社会的役割を持つ大学になるか、ということです。文科省は2016(平成28)年度以降、国立大学を含むすべての大学に対して、「アドミッションポリシー」(どんな学生がほしいか)、「カリキュラムポリシー」(学生にどんな教育をするか)、「ディプロマポリシー」(学生にどんな力を身に付けさせるか)の3つのポリシーの明確化を義務付けることにしています。いずれにせよ、第3期計画が始まれば、国立大学の組織再編は急速に進みそうです。
出典:「再編」時代に入る国立大 教育の変化にも注目を -ベネッセ教育情報サイト