親と子、両者のために! 早寝早起きのススメ【前編】体と心によい睡眠とは?

ゲームなどに夢中になって、夜更かしをしてしまう子どもに手を焼いているご家庭もあるかと思います。しかし、子どもの睡眠不足は、保護者自身の睡眠時間が少なく、睡眠を軽視する傾向にあることにも問題があるのではないかという指摘もあります。そこで、子どものよりよい睡眠について研究をしている江戸川大学の福田一彦教授に伺いました。



親と子、両者のために! 早寝早起きのススメ【前編】体と心によい睡眠とは?


日本人の睡眠時間は、世界一短い!?

お子さまの睡眠時間はどれくらいでしょうか。保護者のかたは、毎日何時間寝ているでしょうか。各種の調査結果から、日本人の睡眠時間はとても短いことがわかっています。たとえば、OECD(経済協力開発機構)が2011(平成23)年に15~64歳を対象に行った国際比較調査では、日本人は男性7時間52分、女性7時間36分で、調査国中下から2番目でした。NHKの国民生活時間調査(2010<平成22>年)では、平日の平均睡眠時間は7時間14分。調査を始めた1960(昭和35)年と比較すると1時間ほど減っていました。他の国と比べると、日本人全体が極端な夜更かしなのです。

生物には生物時計(生体時計・体内時計ともいいます)が組み込まれていて、おおよそ24時間の周期で、活動と休息のリズムが繰り返されています。人間の場合、朝、太陽の光が目から入ることで、生物時計の時刻合わせが行われ、日中は活動し、夜自然と眠くなるリズムが刻まれています。地球の自転による24時間周期の昼夜の変化に適応するように、地球上の生き物は長い時間をかけて進化してきました。ですから、そのリズムに逆らうようにして睡眠が乱れると、さまざまな不調が起こるのです。

寝不足分を補うために昼寝をすればよいかというと、そういうわけではありません。生物リズムを崩すことになり、昼寝をした夜は、なかなか寝付けなくなり、結局、翌朝に起きられず、また昼寝をする……という悪循環に陥りがちです。
また、睡眠時間が、短すぎるだけでなく、長すぎても問題を引き起こします。頭がぼーっとしたり、体がだるくなったり。睡眠時間が短すぎる場合と同様に、生活習慣病のリスクが高くなるという研究報告もあるほどなのです。



土日だけ朝寝坊は、かえって体への負担が大きい

寝不足でも昼寝は不要というのは、子どもも同じです。適切な睡眠時間は、小学生(6~13歳)は10~11時間、中高生(14~17歳)は8~10時間ですが、一日のリズムに合わせて、夜にしっかり取ることが重要です。
多くの保育園で昼寝の習慣があると思いますが、自然な状態で昼寝をしない子どもに、昼寝を取らせてよいことは一つもありません。4~5歳児になると日中に覚醒状態を維持する能力がついてきて、昼寝をしなくなります。活動できるのに昼寝をしてしまうと、就寝時間が遅くなり、心身の状態が悪化してしまいます。
また、保育園時代の昼寝によって、夜更かしの習慣が定着すると、小学生になって昼寝をしなくなっても、3、4年生まで夜更かしの習慣が残ります。

週末、遅くまで寝ているというご家庭もあると思います。「休みの日くらい、ゆっくり寝て、体を休めよう」という気持ちはわかりますが、かえって、体調不良を起こす原因となり、逆効果です。週末だけ平日よりも遅く起きることで、時差ぼけの状態で2日間を過ごすことになります。そのリズムに慣れたころに、月曜日から早く起きるようになり、早寝早起きのリズムに慣れたころに、また週末がやってくる。つまり、覚醒と睡眠のリズムが常に狂っているような状態になってしまうのです。

文部科学省が行った調査結果を見ても、平日と休日に起床の時刻が2時間以上ずれていることがよくある子どもほど、午前の授業が眠くて仕方ないことがよくあると回答する割合が高くなっています(「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等の関係性に関する調査(2014<平成26>年)」より)。



幼児期・児童期から規則正しい生活習慣を付ける

幼児期や小学生のころから夜更かしの生活をしていると、その習慣は中学生、高校生になっても引きずってしまいます。日中、眠くなり、授業に集中できず、成績にも影響が出るでしょう。さらには、いらいらやだるさなど、精神的な不安定さを引き起こし、思春期の不安定な状態とあいまって、ますます反抗的な態度を取りやすくなります。いわゆるキレやすくなるのです。

そうなることを未然に防ぐためにも、保護者の目の行き届きやすい幼児期や小学生の時に、規則正しい生活を習慣化させておくことが大事なのではないでしょうか。早寝早起きは、子どもの心身の健全な成長のためであることはもちろん、保護者がのちのち子育てに悩まないようにするためにも重要なことだと思うのです。

夜遅くまで勉強していると、親としては安心かもしれません。しかし、睡眠の質を上げることで、授業に集中でき、日中での学習の効果が上がります。睡眠をきちんと取っている子どものほうが、成績もよいという研究結果もあります。長期的に考えた時、今の睡眠を大切にすることは、メリットが大きいと考えます。


プロフィール


福田一彦

江戸川大学社会学部人間心理学科教授。同大学睡眠研究所所長。医学博士。精神生理学・時間生物学などを専門とし、睡眠の発達、発達期における睡眠問題、健常者における睡眠まひ(金縛り)などの研究を行っている。

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