親と子、両者のために! 早寝早起きのススメ【後編】規則正しい生活のポイント

早寝早起きがよいとはわかっているけれど、なかなか実践するのは難しいのが現実のようです。「早く寝なさい!」と言っても子どもが言うことを聞かないこともよくあるでしょう。江戸川大学の福田一彦教授に、子どもを早寝に導くためのポイントを伺いました。



親と子、両者のために! 早寝早起きのススメ【後編】規則正しい生活のポイント


平日も週末も生活を変えないことが大切

前編でお話ししたように、睡眠は必要な量を満たしているかだけではなく、毎日、同じような生活リズムを維持することがとても重要です。寝だめは決してできるものではありません。平日も週末も、同じ時間に起きて、同じ時間に寝るのが望ましいでしょう。

それは、学校が長期休業中の時も同じです。夏休みに入った地域も多いと思いますが、ぜひ、学校に行く日と同じような起床時間と就寝時間を、守っていただきたいと思います。

では、何時に寝るのが適切なのでしょうか。小学生の場合、学校に行く時間から逆算して決めるのがよいと思います。たとえば、8時に家を出るのであれば、食事や支度に1時間~1時間半かかるとすると、6時半~7時には起きなければなりません。小学生ならば、10時間の睡眠は必要ですから、夜8時~9時が寝る時間となるでしょう。



食事の時間や照明などを工夫し、子どもを眠りに導く

子どもに「寝なさい!」と言っても素直に聞くわけではありませんよね。その時間までに子どもがベッドや布団に入るように、うまく誘導する工夫が必要です。

まず、お風呂ですが、寝る直前に入ると、体の表面だけでなく、内部の体温(深部体温)も上昇してしまいます。夜、深部体温が下がっていくことで眠くなるので、お風呂は寝る1時間以上前に入っておくのがおすすめです。
そして、夕食は、お風呂の前に済ませるご家庭が多いと思います。そうすると、9時に布団に入るならば、7時台にはお風呂、6時台には夕食と、時間が決まってくるでしょう。父親の帰りを待ち、家族そろって夕食をとるというご家庭もあるかと思いますが、子どもの睡眠という観点ではおすすめできません。食事の時間が遅くなると、必然的に寝る時間が遅くなってしまうからです。

親が夜更かしをするから、子どもも夜更かしになるという意見もありますが、ある調査では、母親・父親それぞれの就寝時間と、子どもの就寝時間には相関はありませんでした。関係があったのは、母親の帰宅時間です。帰宅後に夕食の支度をするので、帰宅が遅くなれば、夕食が遅くなるからです。それだけ、夕食の時間は、子どもの就寝にとって重要なのです。

リビングや寝室の照明にも気を配ってみてください。日本の住宅の照明は、明るすぎる白い光の蛍光灯が主流です。しかし、この照明にはブルーライトが多く含まれています。人間の目には、このブルーライトにだけ反応するセンサーがあり、この光の中にいると、脳の生物時計の時刻がどんどん遅れてしまい、いつまでも眠くなりにくいのです。寝る前に過ごすリビングなどは、暗めのオレンジ色の照明がよいでしょう。

このブルーライトは、スマートフォンや携帯型ゲーム、テレビなどのバックライトにも使われています。機器の操作をしていることだけでなく、目からブルーライトが入ることで、夜更かしが助長されます。特に、光は距離が近ければ近いほど影響が強くなるので、目の近くで見て操作するスマートフォンや携帯型ゲームは大きな影響があります。場合によっては「○時以降はゲームやスマートフォンは禁止」ということも必要でしょう。
同様の理由で、寝る直前まで勉強しているのも、眠りの妨げになります。勉強もなるべく早く済ませるようにしたほうがよいでしょう。

夏の場合、室温が高いと深部体温も上がり、寝つきも悪く、途中で目覚める回数も増えてしまいます。エアコンを付ける場合は、おやすみタイマーにして途中で切ってしまうよりも、室温を一定に保つように微弱でも付けておいたほうが、深部体温を低く保つことができ、健やかな眠りを得られます。



子どもの睡眠状態を把握し、生活習慣を見直そう

お子さまの夜更かしが続いたり、だるさをよく訴えたりするようであれば、学校で居眠りをしていないかどうかを、本人に確認したほうがよいかもしれません。何時に寝て、何時に起きているか、昼寝をしていたら、何時に何分間しているのか、一日の睡眠の様子を、1~2週間分記録してみてください。生活習慣を見直すきっかけになるでしょう。

また、何かのきっかけで学校を休みがちになった場合でも、朝起きて、夜寝るというリズムを大切にしてください。学校に行かないとなると、夜遅く寝て、朝遅く起きるという生活になりがちです。そうした生活が続くと、だるさが強くなり、無気力になっていき、ますます学校に行けなくなってしまいます。

朝、太陽の光を浴びて、体を起こすということは、精神的な健全さを保つためにも大切です。家の外での居場所(保健室登校やフリースクールなど)をつくり、外出するようにして、生活習慣を正すことで、気持ちを立て直していくきっかけをつかめることも知っておいていただければと思います。


プロフィール


福田一彦

江戸川大学社会学部人間心理学科教授。同大学睡眠研究所所長。医学博士。精神生理学・時間生物学などを専門とし、睡眠の発達、発達期における睡眠問題、健常者における睡眠まひ(金縛り)などの研究を行っている。

子育て・教育Q&A