直島イングリッシュキャンプ—作品鑑賞を通じて高校生が国際交流に挑戦!【直島アート便り】
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津山東高等学校は、2022年3月末に直島にて英語を使った学びのプログラムを実施しました。今回は、外国人講師と一緒に直島での作品鑑賞を通じて高校生が国際的な交流を深めた「直島イングリッシュキャンプ」の様子を紹介します。
「直島イングリッシュキャンプ」に向けた取り組み
津山東高等学校では、例年カナダへの海外研修を実施しています。しかし、昨年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響により海外への渡航が難しく、行き先を国内に変更しての開催となりました。
今回の行き先となったのは、瀬戸内海にある直島です。直島には豊かな自然や昔ながらの集落の中に現代アートが展開し、古くから地域に残る文化がある一方で、アートを始めとするさまざまな動きを受容しながら独自の文化を形成してきた場所でもあります。
そんな直島を舞台に、地域の中で現代アートが果たす役割を考えながら、英語での交流機会を創出するプログラムとして、津山東高等学校の先生方やベルリッツ岡山ランゲージセンター、外国人講師と共に「直島イングリッシュキャンプ」は企画されました。
来島に先立ち、生徒たちはオンラインにて事前研修に取り組みました。
まずは、オンラインレクチャーを通してベネッセアートサイト直島の活動背景や、作品の制作プロセスを学び、来島時に見てみたいことなどを書き留めます。
本村地区の地図を見ながら来島前に周遊計画を立てました。
次に生徒4、5名ずつのグループに分かれて、それぞれ外国人講師と英語でコミュニケーションセッションを行いました。英語で話すことに緊張していた生徒も、明るい講師との会話を通して次第に打ち解けていったようです。
英語で交流しながら直島を体験
当日は事前研修で分かれたグループごとに直島の本村地区とベネッセハウス ミュージアムを訪問し、英語でのプレゼンテーションへと繋げるワークに取り組みました。
家プロジェクトが展開する本村では、「本村の好きなところ」を探しながら来島前にグループで作成した周遊計画に沿って自由に集落を散策します。
各グループには講師が1名ずつ付いており、英語で会話をしながらグループでの時間を過ごしました。
初めは緊張した様子の生徒たちも、本村の地図を手に道順の確認をしたり、作品の感想を伝え合ったり、講師自身のことについて質問したりと積極的に英語でのコミュニケーションに挑戦していました。
また、同じ体験を共有するなかで抱いた作品や集落への印象は生徒によってさまざまであり、それぞれの関心事に紐づく多様な感想や意見を交わしながら、コミュニケーションを積極的に楽しむ様子がみられました。
ベネッセハウス ミュージアムでは、対話型鑑賞を通じて作品を鑑賞した後、それぞれ印象に残った作品を1つ選び、なぜ印象に残ったのかを考えるワークに取り組みました。
まずは作品をじっくり観察し、気になったことやなぜそう思ったのかを考え、言語化していくプロセスを繰り返しながら、作品を自由に鑑賞し、自分だけの作品鑑賞ワークシートにまとめていきます。
生徒たちは、作品と個々にじっくりと向き合うだけでなく、講師や他の生徒と感想を交わしながら、作品を鑑賞していました。
多様な視点を他言語で学び取る
最後に、各グループの講師の紹介と、それぞれ印象に残った作品について英語でプレゼンテーションを行いました。
英語プレゼンに向けて、まずはベネッセハウス ミュージアムにて取り組んだワークシートを仕上げ、グループ内で共有しました。
ベネッセハウス ミュージアムで取り組んだ作品鑑賞ワークシート。印象に残った作品をスケッチし、作品の第一印象やどこからその印象を抱いたかをそれぞれまとめました。
作品の色や形から使われている素材、置かれている場所までさまざまなところに注目していくうちに、好きな食べ物を連想したり、地球温暖化との繋がりを考えたり、人生を考えたり、作家の意図を想像したり、生徒一人ひとりが作品を通じて何をどう考えたのか、英語でアウトプットしていきます。
英語の表現や文構造は講師に添削をしてもらい、練習を重ねながらプレゼンテーションに向けて内容をブラッシュアップしていきました。
また、事前研修からずっと一緒にワークに取り組んできた講師を紹介すべく、グループごとにプレゼンボードにまとめていきます。1日を通して緊張も解けた様子で、最後は趣味の話から日本での生活の話まで、アート以外の話題にも花を咲かせていました。
プレゼンテーションでは、生徒一人ひとりが印象に残った作品を発表したあと、グループごとに講師を紹介し合いました。
直島での体験を通して、日本人同士だけでなく異なる文化的背景を持つ講師も加わり、一緒に作品の見方を共有し合うことで、生徒たちは自身と他者の視点を他言語で学習する、深い学びを実践できたのではないでしょうか。
鑑賞体験を通じて生まれるコミュニケーション
プログラム終了後、生徒からは次のような感想をいただきました。
「英語で何とか会話をしようと努力をして、先生と話が通じた時はとても嬉しかった。美術作品が好きなのでたくさんの作品に出会うことができて、自分の中で考えることができてとてもいい経験になった」
「事前研修のリモートで外国の先生と話す時はパソコンを通してだったからコミュニケーションとかも取りづらくて少し不安だったけど、直島での活動の時は町の風景とか家プロジェクトとかの作品を見て感想を言い合えたり色々な自分のことを話し合えてたくさんコミュニケーションをとれたし、普段英語だけで活動することはなかったのでいい経験になった」
見方に正解のない現代アートは解釈が自由であるが故に、「自分はこう思った」と考えを言語化したり、「あなたはどう思った?」と相手の意見に耳を傾けたり、言語の壁を超えて言葉を交わすきっかけとなります。
1日をかけて直島を英語で交流しながら体験し、考え、言語化する過程を繰り返すことで、生徒たちは作品を観ること、英語を使うことの楽しさと話す自信を身に付けられたのではないでしょうか。
豊かな自然や集落に広がる現代アートの鑑賞を通じて、多様な考えや文化に触れてみてはいかがでしょうか。
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