犬島をフィールドに地域の魅力を発見しよう!山南学園の取り組みとは?【直島アート便り】

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岡山市立山南学園は、岡山市唯一の有人島である犬島が学区に含まれており、犬島をフィールドにした学習がカリキュラムに組み込まれています。2022年6月、山南学園では4年生が犬島全体を周遊して地域の魅力を発見するプログラムを実施しました。今回は、犬島で児童たちがどのような発見をしたのか紹介します。

この記事のポイント

なぜ犬島で学ぶのか

岡山市立山南学園は、小学1年から中学3年までの9年間を一体型校舎で生活する県内初の義務教育学校です。「未来を担う子どもたちのために発展的な新しい学校を」という保護者、地域住民の願いと協力に支えられ、4つの小学校と1つの中学校を再編成し、2022年4月に開校しました。

山南学園の学区に含まれている犬島は、宝伝港から定期船で約10分の場所に位置し、歩いて1時間ほどで一周することができる小さな島です。犬島には多様な地域資源があり、歴史や自然、アート、人々の暮らしなど、さまざまな角度から地域を考えるヒントが点在しています。

山南学園の先生方は、地域に愛着を持ち、児童たち自らが地域の魅力を世界に発信できるような活動を組んでいきたいと考え、犬島でのプログラムを計画しました。このプログラムの最初の活動として、「ふるさと学習」を行っている4年生の来島が決まり、児童たちは事前に犬島で自分が興味のある場所について調べました。そして、2022年6月21日、山南学園の4年生が犬島に来島しました。

犬島到着時の様子

犬島の歴史や自然から学ぶ

当日は4つのグループに分かれ、自分が調べたことを実際に確かめつつ、事前学習では知ることができなかった犬島の魅力を発見していきます。この日は雨でしたが、「天気は雨でも心は晴れ」という合言葉を唱えながら、雨合羽を着て島内を歩きました。

1909年、犬島では銅の製錬所がつくられましたが、銅価格の暴落によってわずか10年で操業を終えました。それから100年余り、製錬所跡は手付かずのまま残されていましたが、2008年にその遺構を保存・再生した犬島精錬所美術館がつくられました。

犬島精錬所美術館は、操業当時から残る煙突や銅の製錬過程でできる副産物を固めた鍰(からみ)煉瓦を生かし、自然エネルギーによって館内を過ごしやすい温度に保ったり、植物の力を用いた浄化システムによって汚水を綺麗にしたりなど、環境に負荷を与えない設計になっています。児童たちは実際に目で見て、肌で感じてみることで、美術館の仕組みを体感していきます。

犬島精錬所美術館の敷地内の至るところに鍰(からみ)煉瓦が残されている

終日各グループに美術館のスタッフが付いて案内した

犬島の製錬所は多くの遺構が良好な形で残されており、近代化産業遺産に認定されています。児童たちは製錬所跡をめぐりながら、かつてその場所がどのように使われていたのかを考えました。

近代化産業遺産を南側に抜けると、キャンプ場や海水浴場にたどり着きます。近くには採石場跡が残っており、昔犬島では石切りが盛んだったことを知ることができます。

また、犬島の西側に位置する「犬島 くらしの植物園」は、ただ草花を眺めるだけの植物園とは異なり、訪れた人が植物に手を入れることでくらし方を考える場所です。児童たちはくらしの植物園の説明を受けるとすぐに草花に触れて観察したり、ベリーの実を食べてみたりと、五感を使って植物の力を感じました。

自由に植物園で過ごしている様子

犬島の生活文化から学ぶ

犬島の歴史や植物に触れたあとは島の集落内を歩きます。山神社や天満宮など島の方が今も大切にしている神社や2010年から展開している犬島「家プロジェクト」をめぐりました。

雨のなか集落を歩く児童たち

犬島「家プロジェクト」F邸 名和晃平「Biota (Fauna/Flora)」(2013)を作品鑑賞する児童たち

犬島「家プロジェクト」の建物はいずれもガラスやアクリルといった透明な素材を用い、島の風景を見ながら作品を鑑賞することができます。児童たちは犬島の文化や島の方との交流を通して作品を制作した作家の想いに触れ、お互いに意見を交換しながら犬島について理解を深めていきました。

また、今回のプログラムでは犬島で生まれ育った在本桂子さんを講師にお招きし、犬島の暮らしについてのお話を伺いました。

在本桂子さんのお話を聞いている様子

実際に犬島の石が切り出されている映像を見たり、犬島に電気や水道が通ったときの話を聞いたりするなかで、かつての犬島の暮らしはどのようなものだったのかを考えます。児童たちはメモを取りながら興味津々に在本さんのお話に耳を傾けました。

犬島での体験から地域を見つめ直す

今回のプログラム終了後、児童たちからお手紙で次のような感想をいただきました。

「いろいろな話を聞いて、いろいろな作品をくふうして作っているんだなと分かりました」

「新しい大発けんがふえました。また犬島に行って、いろいろなアートを見たいです」

「わたしは、知らなかったことがたくさん分かりました。とくに、からみれんがは、島のいろいろなところに使われていて、びっくりしました。(中略)これからは犬島マップをつくって、犬島を大切にしていきたいです」

児童たちは犬島で実際に五感を使わなければ得られないさまざまな発見をしました。今回のプログラムのように、歴史や自然、アート、人々の暮らしなど、あらゆる切り口で地域を見つめることで、これまで知らなかった地域の一面を知ることができるかもしれません。

プロフィール



「ベネッセアートサイト直島」は、直島、豊島、犬島などを舞台に、株式会社ベネッセホールディングスと公益財団法人 福武財団が展開しているアート活動の総称です。訪れてくださる方が、各島でのアート作品との出合い、日本の原風景ともいえる瀬戸内の風景や地域の人々との触れ合いを通して、ベネッセグループの企業理念である「ベネッセ=よく生きる」とは何かについて考えてくださることを願っています。
https://benesse-artsite.jp/

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