高校も「総合」ますます重視へ? 次の学習指導要領

次期学習指導要領(小学校は2020<平成32>年度から、中学校は21<同33>年度から、高校は22<同34>年度入学生から全面実施)の改訂方針を検討する、中央教育審議会の特別部会が、8月当初の論点整理を目指して大詰めを迎えています。このうち「総合的な学習の時間(外部のPDFにリンク)」は、高校の先生の中にさえ、「次の指導要領ではなくなるのではないか」と勘違いしている人もいます。しかし、むしろ位置付けの上では、ますます重視されることになりそうです。

「総合」は、「ゆとり」の中で「生きる力」を育むことを目指した、2000(平成12)年代初頭の指導要領の目玉として導入されました。(1)自ら課題を見つけ、自ら学び・考え・主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる (2)学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的・創造的に取り組む態度を育てる……がそのねらいです。改めて読むと、昨年11月に行われた指導要領改訂の諮問とも共通するキーワードが、ちりばめられていることがわかります。ただ、導入前は「地域や学校・児童生徒の実態に応じた学習」という面が強調され過ぎて、何をやったらよいかわからないというとまどいが、学校現場に少なくなかったことも確かです。

そのため、小学校では国際理解教育の一環としての外国語活動、中学校では進路学習が多くなる一方、教科を横断した学習でどんな「力」を身に付けさせるかが、あいまいになる傾向も否めませんでした。そうした点が、いわゆる「ゆとり教育批判」の標的になり、文科省は実施途中の2003(平成15)年12月に指導要領を一部改正して、計画的な指導によって各教科・道徳・特別活動で身に付けた知識や技能を関連付けて、学習や生活で総合的に働くものとするよう明確化しました。

現行の指導要領では「総合」の授業時間が小中学校ともで削減され、高校は3~6単位のままながら、2単位まで減らすことが可能になったことも影響して、「総合」が軽視されたとの誤解も一時広がりました。しかし実際には、かつて「総合」で全部引き受けていたような「言語活動」を各教科等で行うようになったため、その分を減らしても大丈夫だという判断からでした。ただ、中教審での委員の指摘によると、「高校で『総合』を学習した覚えがない」と振り返る大学生が少なくないといい、教科学習に比べ高校での存在感が薄いのが実態です。

指導要領の「構造化」を目指す次期の改訂では、各教科で育成する資質・能力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性(学習意欲)」の観点(学力の3要素)で明確にし、それを「総合」や特別活動で生かすことによって、どんな学習にも役立つ「汎用的能力」に高めようとしています。特別部会の検討案でも、「総合」が学力の向上にも寄与しているというデータを挙げながら、学校の教育活動全体における意義を改めて明確化するとしています。ますます各高校にはがんばってもらい、子どもたちに具体的な「生きる力」を付けてほしいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

子育て・教育Q&A