【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その6>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
進路が明確でない場合の志望校の決め方は?
偏差値の合わない学校を志望することについて
人間形成に力を入れている学校選びのポイントは?
進路が明確でない場合の志望校の決め方は?
Q | 進路やしたいことが明確でない、イメージできない場合、目標(志望校)の設定は、どのように定めるべきでしょうか。 |
A | 【森上教育研究所】 相談の「進路」を将来の大学・職業とすれば、小学生に将来の大学・職業をイメージしてみろといっても、経験がないのですからイメージは浮かばないでしょう。保護者ですら、わが子にはどのような可能性があり、どのような進路を進ませるべきか明確にわかっているかたは少ないのです。 各ご家庭ではどのように「進路」を考えているのでしょうか? アンケートで保護者に聞いてみると、子どもの「進路」まで考えて志望校を設定しているわけではなく、わが子の性格や資質から「進路」を考えるケースはほとんどありません。中学・高校では、将来の職業についての授業も行われていますが、大学生になって就職活動のときに初めて、就きたい職業を考えるという学生が多いのです。 子どもの性格や資質から将来の職業をイメージすることが難しい、と考えるのであれば、子どもの資質ややりたいことは、子どもが成長すると共に変わっていくので、子どもの成長に対応できる学校を選ぶべきです。例えば、理系の素養があるのならば、志望校選定のときに、文系だけでなく理系の合格実績のある学校を選定すべきです。 【日高のり子さん】 小学生で将来の進路がはっきりしている子は、まずいないと思います。今の得意科目がそのまま得意であり続けるかどうかもわかりませんし、理系・文系の特徴が顕著でない学校を選んだほうがいいと思います。 それより、お子さんの雰囲気とかご家庭の教育方針などと合った学校を選ばれたほうが、豊かな学校生活が送れるのではないでしょうか。自由でのびのびとしているお子さんや、反対に体育会系のビシッとした感じが好きというお子さんもいるでしょうし…。 そして、選んだ学校にどんどん足を運んでみると、いろいろ見ていくなかで、ここだ! という出合いがきっとありますよ。 |
偏差値の合わない学校を志望することについて
Q | やりたい部活の強豪校が通学しやすいところにあり、子どもはあこがれているようですが、偏差値が子どもの学力より20程度下です。親としては抵抗があります。塾の先生はもちろん偏差値に合う学校をすすめるのですが、それだけで子どもに合う学校が見つかるとも思っていません。偏差値が20離れていることは大きいのでしょうか? 小さなことなのでしょうか? 偏差値が合わない学校に入った場合、満足のいく学校生活は送れるのでしょうか? また、子どもの希望をどこまで聞いてよいのでしょうか? |
A | 【森上教育研究所】 公立中学には学力の高い生徒も低い生徒もいるので、何人かの話が合う友人を見つけることは難しくはないはずですが、偏差値が20も離れた私立校となると、生徒全体の学力が違いすぎて、自分と話が合う友人を探すことに苦労するかもしれません。部活以外の学校生活では影響し合える友人にめぐり合えないかもしれません。その意味では、お子さんが満足のいく学校生活を送れるか不安です。中高6年間の学校生活は部活だけではありません。かといって、偏差値が離れているというだけで子どものあこがれている学校を否定することは、子どもの受験勉強に対するモチベーションを低下させることになり、得策とは言えません。 では、どうすればよいかということですが、お子さんがあこがれている部活と部活以外の学校生活は別問題ということ、学校生活には話の合う、影響し合える友人が不可欠であることをお子さんに説得するのではなく、そのことをお子さんに気づかせることです。例えば、入学後の学校生活を円滑にやっていけるかどうかをテーマとして、お子さんがあこがれる部活の学校を訪問してみるといいと思います。「家の近くにある部活の強豪校にはあこがれるが、そこにいる生徒とは話が合わないかもしれない」ということをお子さんが実感すれば、お子さんは、多少通学時間はかかっても、「やりたい部活の強豪校で、偏差値が自分の偏差値と同等、もしくは少し高い学校」を見つけようと考えるのではないでしょうか。 【日高のり子さん】 偏差値が20離れているというのは、ちょっと違いすぎる感じがしますね。部活には満足しても、高校生になって進路を決めるときに相談できる、自分と同じ力の友達が周りにいないのはつらいですよね。 でも…今ふとその部活が野球だったらと想像してみました。私、今年初めて甲子園球場で高校野球を見たんです。もしお子さんが甲子園をめざしているのだとしたら、それはそれでいいような気もしますが…。 ここはひとつ、やりたい部活の強豪校!というポイントに絞って、学校選びをしてみてはいかがでしょうか。いくつか選べたら、お子さんと一緒に見に行く! いろいろな学校を知ることで、お子さんの気持ちに変化が表れるかもしれません。見て、考えて、話し合ってをくり返すなかで、いい答えが見つかると思います。 |
人間形成に力を入れている学校選びのポイントは?
Q | 学力だけでなく、人間形成に力を入れている学校選びのポイントを教えてください。合同説明会などで尋ねたりしていますが、なかなか難しく感じています。 |
A | 【森上教育研究所】 私立中高一貫校ならどこでも「人間形成に力を入れている」という自負はあると思いますが、人間形成に力を入れた結果、どれだけ成果が出たかを説明できる先生はいないと思います。つまり、人間形成に力を入れた結果の成果を示す指標(数値)がないので、説明会などで先生がたに尋ねてもわかりにくいのです。 生徒の人間形成を行うための教育方針は、各校で異なると思います。「人間形成に力を入れている教育」を「全人教育」と考えると見つけやすいのですが、「学力だけでなく」という相談の記述から、全人教育で大学受験に力を入れている学校ということなのだと思います。全人教育と受験教育は相反する教育で、両立する学校は少ないので、「人間形成に力を入れている教育」を「精神面重視の教育」に置き換えて、受験教育と両立できる学校を探してみてはどうでしょう。「精神面重視の教育」を教育方針としている学校ならばわかりやすいはずです。 他にも教育方針の分類方法はあると思いますが、難関校・上位校の在籍者アンケートで、教育方針を「学習面重視」と「精神面重視」と「その中間」の3タイプに分けて、在籍校がどのタイプか質問しました。入学後は「その中間」のタイプが最も多いという結果がでました。御三家を含む難関校・上位校では「学習面重視と精神面重視の中間」のタイプの教育方針が多いのです。そのタイプの学校から志望校を選定してはいかがでしょうか。 【日高のり子さん】 中学受験をするということは、大学進学も視野に入れて考えている学校や保護者のかたが多いのだということを、学校説明会や受験に関する意見交換のサイトで知りました。 私はどちらかというと、多感な時期である中学・高校時代が、人間としての土台づくりに大切なのではないかという考えのもとに、勉強も精神面も同じくらい重要視している学校を選びたいと思っていました。どの学校も子どもの教育、育成を目標に掲げているのでそんな当たり前のことを…と思われるかもしれませんが、学校説明会に参加すると、学校によっての考え方の違いが少しずつ見えてきます。大学進学実績とその成績を上げるための努力・方法の説明に多くの時間を割く学校、勉強については雄弁なのに、いじめなどの質問にはしどろもどろな先生、進学校なので実績を上げたいのは山々だけど、生徒の意思を尊重してサポートしている、そしていじめは許さないという学校、勉強も大事、でも道徳教育も同じくらい大事と語った先生…このようなお話を聞くためには、合同説明会ではなく、各学校で行われる説明会に参加されることをおすすめします。 |