【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その3>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
いじめ問題に対する熱意の測り方と、公立との違いは?
子ども自身で、自分に合う学校を考えさせるには?
通学時間の限界は?
いじめ問題に対する熱意の測り方と、公立との違いは?
Q | いじめ問題に対する熱意を測るにはどうしたらよいでしょうか。また、公立と比べた場合、トラブルは少ないのか、対応がどの程度違うのかも知りたいです。 |
A | 【森上教育研究所】 「公立と比べた場合、トラブルは少ないのか、対応がどの程度違うのか」という質問ですが、いじめがあることは、私学の場合は学校経営にも影響が大きいので、学校全体が一丸となって取り組んでいるケースが多いと思います。その点では、私学のほうが、公立よりもいじめは少なく、対処も手厚いと思います。しかし、その実態は明確にはわかりません。 いじめ問題に対する熱意がある、いじめの対策が優れている、と明言している学校があったとしたら、受験生・保護者はどのように思うでしょうか? 「いじめが多い学校だから、いじめ問題に対する熱意があり、いじめ対策も優れているのではないか?」と思われれば学校は困ります。学校はいじめ問題は避けて通ろうとするので、どの学校がいじめ問題に対する熱意があり、いじめ対策が優れているかはわかりません。 「いじめ問題に対する熱意を測るにはどうしたらよいでしょうか」という相談ですが、個別相談などで「学校全体として、いじめ問題にどのように対処しているか」と質問してはいかがでしょうか。前に述べたように、いじめ問題で熱意を測るのは難しいので、説得力を感じられる回答かどうかを尺度として考えます。「学校全体として」と前置きするのは、回答した先生は対処できても、他の先生はわからないからです。「学校が一丸となっているかどうか」「いじめ対策がシステム化しているか」を確認してください。 【日高のり子さん】 公立と私学では、私学のほうがいじめに関して厳しい姿勢で対応してくれると思います。成績に関しても、生活態度に関しても、ある基準を満たしていない生徒は、進級、進学が難しいということも聞きます。 いじめに関する質問は、私が参加した学校説明会でも必ず出ていました。いじめについて保護者の関心が高いということは、学校側も重々承知のことだと思いますが、質問に対して返ってくる答えはさまざまでした。明確に「絶対許しません! 徹底的に対処します!」という学校もあれば、勉強についての熱弁とは裏腹にしどろもどろになってしまう先生もいらっしゃいました。また、いじめを生まないために校舎に死角をなくすなど工夫をしている学校や、職員室の配置に工夫されている学校もありました。 いじめがある学校もない学校もあると思いますが、その対処、対策は各学校によって違うので説明会などで質問されるといいと思います。 |
子ども自身で、自分に合う学校を考えさせるには?
Q | 子ども自身が自分の行きたい学校を選ぶことのできる機会は、学校の文化祭や運動会くらいでしょうか? 親向けには説明会や進学フェアなど機会がたくさんありますが、子どもの判断材料となる機会が少ないように感じます。子ども自身に、どの学校が自分に合うかを、どのように考えさせたらいいでしょうか。 |
A | 【森上教育研究所】 おっしゃるように、子どもが学校を見る機会は、文化祭や運動会で、その他にあるとすればオープンスクールでしょうか。実際には、保護者のかたが文化祭に子どもを連れて行き、志望校の選定を行っているケースが最も多いようです。 受験生はどのように志望校を決定するのか? 学校のネームバリューで決めてしまう場合もあるでしょう。また、塾の先生、塾・学校の友人、親や親せきなど周囲の人からの評判で決めることもあるかと思います。しかし、子ども自身が6年間通う学校ですから、人からの話よりも、自分の目で見て決定してもらいたいと思います。訪問して、学校・在校生・教師を見なければわかりません。学校を理解することは、まさに「百聞は一見にしかず」です。 受験生本人が主体となって訪問する文化祭では、どのような事項を確認すべきなのでしょうか? それを理解して参加しなければ、楽しいだけで終わってしまいます。保護者のかたから、重視すべき事項について子どもに確認しながら、文化祭を見て回るとよいと思います。また、受験生は社会経験が少ない小学生であることを考えると、理解しやすい事項に着目すべきだと思います。私立中高一貫校在籍者アンケートで、「受験生のとき重視した、文化祭での確認事項」が何かを調査しましたので、参考にしてください。 【日高のり子さん】 文化祭、運動会の他に、オープンキャンパスや学校体験、部活体験など、受験生が参加できるものがいろいろありますよ。志望校のホームページをチェックしてみてください。こういうイベントに参加すると、先輩や先生の印象や学校の設備、雰囲気など、子どもなりに何か感想をもつはずです。 うちの子どもも4年生の頃は、ここはきれい、ここは楽しい、ここは寂しい感じがするなどつたない感想でしたが、5年、6年となるにつれ、ここは先生と生徒の仲が良くて明るい、ここはやる気が感じられないなど、だんだんしっかりした感想に変わってきました。 子どもの感想を聞いてメモをとり、好きな順位を決めるなどして、子どもの気持ちを引き出してください。うちは冗談まじりに「さてこの学校は星いくつでしょう?」と子どもに聞いていました。星の数を聞いて「どうして多いの? 少ないの?」と感想を引き出す工夫をしていました。 |
通学時間の限界は?
Q | 入学後は6年間の長丁場となりますが、始業時間が早い学校、通学時間の長い学校では通学時の負担が気になります。朝、自宅を出る時間の限界は何時頃とお考えですか? 男女差はあると思いますが、教えてください。 |
A | 【森上教育研究所】 都心の学校に上りの電車で通うと、自宅を出る時間により、通勤ラッシュとぶつかるため、通学時間が長いと大きな負担となりますが、下りの電車であれば通学時間が長くとも負担は少ないようです。「朝、自宅を出る時間の限界」=「学校の始業時刻」−「限度通学時間」と考えることができます。例えば、始業時間を8時30分、通学時間の限度を90分とすれば、「朝、自宅を出る時間の限界」は、7時ちょうどということになります。 下の表は「志望校の限度と思われる通学時間はどのくらいか」という質問を、中学受験生の保護者と学校にアンケート(※)した結果をまとめたものです。保護者アンケートでは半数以上の保護者が「50~69分(53%)」に集中しています。つまり、受験前にはほとんどの保護者が60分前後を通学時間の限度と考えていることになり、一般的な通学時間の限度90分を考えると、まだ理想を追求していることになります。 学校アンケートでは「110~129分(31%)」、「130分以上(16%)」の割合が多く、合計すると47%になります。しかし、それらの学校でも110分以上の遠距離通学者はクラスに数人ではないでしょうか? というのも、保護者アンケートの表を見ると、110分以上の通学時間を限度としているのは、100人のうち5人(2%+3%)だからなのですが、それらの生徒は極端な例で、一般的には90分を通学時間の限度としてもよいでしょう。 ※2007年7月に行った、中学受験生の保護者452名と首都圏の中高一貫校119校を対象としたアンケート 【日高のり子さん】 朝の時間だけでなく、帰宅時間、食事して勉強してお風呂に入って何時に就寝できるかなど、総合的に考えて生活のリズムに合った通学時間を選ぶ必要があります。部活によっては朝練があるところもありますので、お子さんの睡眠時間と体力なども考えてみてください。 ちなみにうちの場合、通学時間は1時間ですが、毎日部活があり、睡眠はたくさんとりたいタイプなので、ぎりぎりな感じです。学校からは毎日2時間は自宅学習するように言われていますが、なかなか難しいです。 でも、なかには2時間以上かけて通っていらっしゃるお子さんもいます。個人差がありますよね。 |