高校では週30時間以上の授業も可能に 新学習指導要領

昨年3月に改訂された小・中学校の学習指導要領(今年度から一部先行実施)に続いて、高校と特別支援学校の新しい学習指導要領が、先頃告示されました。高校では、教育内容や授業時間数などに大きな変更はありませんが、国語・数学・英語などで共通に学ぶ科目が統一されるなど、見逃せない動きもあります。また、特別支援学校については、「特殊教育」(盲(もう)・聾(ろう)・養護学校など)から「特別支援教育」に国の制度が変わってから、初めての学習指導要領となります。

高校の新学習指導要領は、「週30時間」という標準授業時間数は現行どおりですが、生徒の実態に応じて、標準時間数以上の授業を行ってもよいことが明示されました。現行学習指導要領でも標準以上に授業をしてもよいことにはなっていましたが、限定的な扱いだったため、あまり利用されていませんでした。これからは、週30時間を超えて授業を行う高校がさらに増えることになりそうです。
また、高校の改訂では、「多様性」と「共通性」のバランスに重点を置いていることがポイントです。生徒が多様化しているのに伴い、高校は学校ごとに実態が大きく異なっているのが現状で、そのため従来は教育内容も「多様化」を進めてきました。しかし一方で、高校教育として必要な基礎的知識・技能は、共通して学ばせる必要があります。このため、すべての生徒が学ぶ「必履修科目」について、これまで複数の科目から選択する方式が採られていた教科のうち、国語・数学・英語の必履修科目を統一し、高校生全員が同じ科目を学ぶように変更しました。また、生徒の実態に応じて、「義務教育段階での学習内容の確実な定着」の機会を設けることが明記され、中学校の教育内容を高校で再度教えることができるようになりました。
各教科の科目構成なども変更されましたが、中でも注目されるのが英語です。必履修科目が「コミュニケーション英語I」となるほか、ほとんどの科目がコミュニケーション重視に再編されました。このため英語の授業は、原則として日本語は使わず、すべて英語で指導することになりました。

一方、特別支援教育では、現在でも障害のある子ども一人ひとりに対して、学校・医療・福祉などの分野の関係者が連携して「個別の教育支援計画」を作成し、さらに学校が「個別の指導計画」を定めることになっていますが、改訂では、学習指導要領上もこれらの計画作成が学校の義務であることを明確化しました。また、障害のある子どもと障害のない子どもの交流や共同学習などを計画的に推進することも盛り込まれています。
新学習指導要領は、高校が2013(平成25)年度の入学者から順次実施。特別支援学校は、小学部が2011(平成23)年度、中学部が2012(同24)年度、高等部が2013(同25)年度から本格実施されます。

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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