フリースクール「公認」は議員立法で? 教委が「計画」認定

以前の記事で、文部科学省がフリースクールを「公認」するかもしれない、と書きました。それが、保護者が教育委員会に計画を提出して認定を受けるという形で実現するかもしれません。超党派の議員連盟が、そうした構想を打ち出したからです。

フリースクールを「公認」するには、さまざまなネックがあります。フリースクールは、民間の柔軟な発想とカリキュラムで、一人ひとりの子どもに対応する「自由」な教育を行えるのが特長です。しかし、公的機関がその教育に何がしかの基準を作ってしまっては、そうしたメリットも台無しになってしまいます。
「超党派フリースクール等議員連盟」(幹事長:馳浩・元文部科学副大臣)の「多様な教育機会確保法(仮称)案」によると、保護者が「個別学習計画」を作成し、市町村教委の認定を受ければ、子どもを「学校」に就学させなくても就学義務を履行したものとみなします。一方、市町村教委は、家庭を訪問するなどして子どもに対する学習支援を行う、としています。法的にも現実的な提案ですから、制度改正自体は議員立法で行い、具体的な制度設計は文科省が詰める……という流れが考えられます。

憲法第26条は、すべての国民に「教育を受ける権利」を保障する一方、子どもの保護者に「普通教育を受けさせる義務」を課しています。義務教育といっても、子どもの義務ではなく、保護者の義務なのです。そして、この義務教育を担うのが、学校教育法で定める小・中学校などとされています。国公立だけでなく私立学校も「公教育」を担っており、大枠では学習指導要領に基づいた教育を行っています。これに対して、フリースクールは習い事教室や学習塾などと同じ「私教育」に分類されますから、フリースクールに通っても、「公教育」を受けたとはみなされない、つまり、保護者が就学義務を果たしたとはみなされないわけです。

現在でも、フリースクールに通った実績を、学校の出席扱いとすることができます。ただ、これはフリースクールに通えば自動的に認められるというわけではなく、卒業認定権を持つ「学校」の校長が、あくまで個々の子どもの状況を把握したうえで、自分の学校で行う教育に相当するものと判断できる場合、という制度的な整理をしています。
議連の法案が教委に計画を認定させることにしたのも、公教育としての質を一定程度担保しようというものと見られます。公教育は、今の社会で生きるために必要な力をつけさせるための教育を保障するためのものですから、極端に偏りがある教育では、子ども自身が社会に出た時に困ってしまいかねません。

ただ、学習指導要領と学校の関係のように、教委が細かいところまで保護者に指示するというのは現実的ではありません。あくまで、その子どもの力を最大限に引き出すにはどういう教育がベストかを共に考え、支援していくという姿勢が、お互いに求められるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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