1人1台端末が開始。学びを豊かにする学校と家庭でのデジタルメディアの活用方法は?

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子どもたちが、パソコンやタブレット端末といったデジタルメディアにふれる機会が増えています。公立の小中学校では、児童・生徒1人1台のデジタルメディアと高速大容量の通信ネットワークを整備し、個性に合わせた教育を行おうという『GIGAスクール構想』も進められていて、これからの学びにも期待が高まります。一方、保護者のかたからは、期待とともに、健康や使い方を心配する声も。そこで、子どもとメディアについて調査しているベネッセ教育総合研究所の邵 勤風(ショウ キンフウ)に、デジタルメディアとの上手なつき合い方を聞きました。

この記事のポイント

子どもたちの学習でも身近になりつつあるデジタルメディア

オンラインで朝礼に参加したり、タブレット端末で学習したり、動画を観たり…。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や休校措置をきっかけに、デジタル化が急加速。子どもたちの日常にも、パソコンやタブレット端末といったデジタルメディアが広まりつつあります。

実際に、ベネッセ教育総合研究所が2020年8~9月に全国の小学校にアンケートを行ったところ、約6割の小学校の先生が、自身の学校でのデジタルメディアの利活用に「積極的に取り組んでいる」と回答。

公立の小中学校では、デジタルメディアを学びに生かしていく『GIGAスクール構想』も急ピッチで進められていて、近い未来、教室内外の端末とオンラインでつながり、考えを共有しながら学び合うようなスタイルを実現したいと考えている学校や教員が大多数です。

さらには、先生が一人ひとりの端末をチェックして理解度に合わせた指導をする、プレゼンテーションソフトを使って発表をする、といったことも可能になるため、実現すれば、学びの質も高められそうだと期待している学校や教員も多いようです。

*複数回答。
*出典:ベネッセ教育総合研究所「小中学校の学習指導に関する調査2020」(2020年8月末~9月末実施)

保護者はデジタル化に期待しつつ戸惑いも

一方、家庭での活用状況はどうでしょうか。保護者を対象に2020年5月下旬に実施した調査では、新型コロナ前の1月よりもコロナ禍の5月の方がゲームや動画を中心に平均使用時間が増えて、順に53.2分と63.0分に。学校再開後の7月になっても、その時間はあまり元に戻っていないことがわかっています。

それに対して、「子どもの健康への影響が心配」という保護者が48.9%。逆に「デジタルメディアを子どもの学習に活用させたい」が56.4%にのぼるほか、デジタルメディアでの学習のメリットについて80.5%が「どこでも勉強できる」、79.1%が「子どもが楽しく勉強できる」と回答。デジタル化に戸惑いつつも、期待している様子もうかがえます。

*デジタルメディアの利活用での意識の変化について尋ねた15項目のうち、一部の結果をまとめて、示している。「そう思うようになった」の%(「とてもそうである」+「まあそうである」)。

*「とてもそうである」+「まあそうである」の%。

ルールを決めて上手に活用していこう

とはいえ、デジタルメディアは、これからますます身近になっていくことは間違いなさそうです。上手に利活用していくには、どんなことに気をつけるとよいのでしょうか。

ベネッセ教育総合研究所が実施した別の調査では、ルールを決めてゲームなどをしている子どもほど、勉強もしっかりできているという結果も。もちろん使う目的によっても違ってきますが、例えば「ゲームや動画などの遊びで使う場合は1日1時間まで」など、お子さまと相談しながら“わが家のルール”を決めることも、使い過ぎを防ぐ一手でしょう。

一方、デジタルメディアの活用が広がったことで、「デジタルコンテンツが多くて、何がいいものかわからない」と悩んでいる保護者も少なくないようです。学習は、問題を解いたら終わりではなく、生涯にわたって必要に応じて学んでいけるように、学びかたまで身に着けていくことが大切です。そのためデジタルコンテンツを活用する際も、自分で学習の計画を立てたり、間違えた問題を解き直したりといった学びかたまで大切にしていくことが大事だと思います。

また、目の健康に配慮して「暗いところで使わないように」とアドバイスしたり、リアルな体験を通じて興味のある世界を広げたりと、バランスも意識したいところです。さらには、デジタルメディアは日々進歩していますので、保護者のかたもお子さまといっしょに、ときにはお子さまに教えてもらいながら使いかたを学んでいくことも、上手な使いかたを身につけるためには必要なことかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

世界中の人といつでもつながることができたり、花が開く瞬間など、動画で見ることで紙よりも理解しやすくなることがあったり、簡単には行けない場所をバーチャルに体験できたりと、デジタルメディアは使い方次第で、まさに楽しくわかりやすく学ぶこともできるメディアです。

一方、リアルに人と触れ合うこと、直接的な体験を重ねることも大切なことです。デジタルメディアは、あくまでも学びの一つの手段にすぎません。わが子がより豊かな学びができるように、デジタルメディアを上手に活用していただきたいと思います。

≪参考≫
・ベネッセ教育総合研究所による「小中学校の学習指導に関する調査2020」
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5558

・ベネッセ教育総合研究所による「幼児・小学生の生活に対する新型コロナウイルス感染症の影響調査 —2020年5月実施—」
https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=5520

・ベネッセ教育総合研究所の教育研究知見を元にした子育て・学びに関する記事の一覧はこちら
https://benesse.jp/special/berd.html

プロフィール

邵 勤風(しょう きんふう)

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 主任研究員。初等中等教育領域を中心に、子ども、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究に多数携わる。
これまで担当した主な調査は、「学習基本調査・国際6都市調査」(2006年~2007年)、「第3回子育て生活基本調査」(2007年~2008年)、「小学高学年の学びに関する調査2019」など。近年、子どもの主体的な学びを支える学び方や周囲の支援に関心を持ち、学び方に関する理論研究や実証研究に取り組んでいる。

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株式会社ベネッセコーポレーションの教育、調査、研究機関です。子ども、保護者、先生、学校などを対象に、教育に関連する調査、研究を行い、その研究成果や調査報告書、各種データを無償で公開しています。

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