幼児期のきょうだいげんかへのかかわり方【前編】押さえておきたい基本姿勢

きょうだいげんかが毎日のように絶えず、その対応に苦労しているという保護者のかたも多いと思います。けんかをするほど仲がよいともいいますが、毎日大騒ぎとなると、親も大変です。今回は、発達心理学・幼児教育の専門家である東京学芸大学の岩立京子先生に、保護者のきょうだいげんかへのかかわり方について教えていただきました。



きょうだいげんかは人間関係を築く術を学ぶ場

きょうだいの関係は、親子という縦の関係と、仲間という横の関係の中間にある「ナナメの関係」といえます。家族として身近にいて、年齢が近いため、親に対してよりも自己主張をしやすいのですが、お互いにまだ幼児であり、精神的に未熟ですから、相手のことを考えて自己調整ができません。ですから、けんかになりやすいのです。

しかし、保護者のかたにとって悩みのタネでも、きょうだいげんかにはよい面がたくさんあります。自己主張をし、ぶつかり合うことで、相手にも考えや立場があるのだと、子どもが気付くことです。お互いに主張していくなかで、相手の話を聞き、どのようにして折り合いを付け、そして仲直りをするのか。人間関係を築くために重要なことを、きょうだいげんかをしながら学んでいきます。幼稚園や保育園などでは遠慮しがちで何も言えなくても、きょうだいには何でも言えるという子もいます。家庭できょうだいを相手に自己主張をする経験を積み、いずれは外でも自己主張ができるようになる。きょうだいげんかはそういった練習の場になるのです。

幼いころはなんでもないことで言い争っていても、年齢が上がり、それぞれの認知・言語・自己調整力の発達にともなって、けんかの原因も仕方も変わっていきます。お互いの活動範囲が広がって、顔を合わせる機会が減れば、けんかは自然と収まっていきます。また、けんかを何度もしていくうちにお互いのことをよく知り、仲よくなっていくこともあります。そのうち、共同戦線を張って、親に対抗してくるようになるかもしれません。



けんかが起きてもまずは見守って

けんかが起きても、ただの言い争いであれば、何もせず、見守っていてください。そして、頃合いを見計らって、「おやつよ」「買い物に行くわよ」などと声をかけるのです。もし、食事中のけんかであれば、「食事がまずくなるから、あとにして」と冷静に言いましょう。お腹が減っていれば、食べ物につられて、けんかは中断され、食べ終わったあとはけんかをしていたことも忘れていると思います。
きょうだいげんかに親が介入しすぎると、「親が解決してくれる」「親がいなければ解決できない」と思ってしまい、親にすぐ言いつけるようになります。親も、口が達者なほうの主張をつい聞いてしまい、もう1人が不公平さを感じるようになります。けんかが大変なことだと思わせないためにも、おおらかに構えて、冷静な態度で対応していただけたらと思います。



「お兄ちゃんだから我慢しなさい!」と言ってしまった時は……

きょうだいげんかへの対応でよくしてしまうのが、上の子に「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」と言って我慢をさせてしまうことではないでしょうか。また、上の子と比較して、下の子に「お兄ちゃんはできるのに」「お姉ちゃんはできるのに」と言ってしまいがちだと思います。保護者がこうした態度を続けると、子どもの中に不満がたまっていきます。その時には反抗されなかったとしても、将来的に親子の信頼関係を築けていないということが起こり得ます。また、小学生高学年になって夜尿をしたり、不登校気味になったりという不適応行動に表れたりすることもあるのです。

保護者のかたも、いらいらしたり、体調が悪かったりして、よくないとわかっていても、「お兄ちゃんなんだから、我慢しなさい!」とつい言ってしまうことがあるでしょう。それはしかたのないことです。私も2人の子どもが幼いころにけんかばかりをしていて、「もういい加減にして!」と怒鳴ってしまったこともあります。ただ、そればかりが続くと、子どもは抑圧されて、欲求が満たされず、ますますけんかが増える……と悪循環に陥ってしまいます。子どもは不満がたまってくれば、なにかしらのサインを出してきます。そのサインを捉えて、自分の態度を振り返り、よくないと思う点を改めて、調整していくことが重要なのです。

言い過ぎたと思ったら、「さっきは言い方が悪かったね、ごめんなさい。お母さんはこういうことを伝えたかったの」と、子どもに謝ることも大切です。保護者のそうした態度は、自分が悪いと思ったら友達に謝るという、お子さまの成長にもつながります。

「親が子どもに謝れば、権威が保たれない」と考えるかたもいるようですが、権威をふりかざして一方的に押さえつけるだけでは、権威の前では何も言えないような大人になってしまうことも考えられます。謝るべき時は謝る、おかしいと思ったら主張して議論する。そうしたモデルを示してほしいと思います。幼児期からそうした姿勢を続けていくと、小学生くらいになった時、親が理不尽なことを言ったら、「そんな言い方をしていいの?」と正論を言ってくるようになるでしょう。


プロフィール

岩立京子

岩立京子

東京学芸大学総合教育科学系教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士を養成するかたわら、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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