幼児期のきょうだいげんかへのかかわり方【後編】しこりを残さない対応のポイント

きょうだいげんかは人間関係の築き方を学べる重要な場となりますが、保護者の対応によっては、子どもの中にしこりを残し、そのために大人になってからもきょうだい関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。発達心理学・幼児教育の専門家である東京学芸大学の岩立京子先生に教えていただきました。



一方のみに我慢させない、バランスのよい介入を

きょうだいの関係は、性別、年齢差の幅、親子関係などのいろいろな要素が絡んで成り立っているため、きょうだいげんかへの対応にも正解はありません。子育て全般にいえることですが、大切なのは感受性と応答性です。子どもの様子を見て、何をしてほしいのかをとらえ、下記をベースにしながら、対応の仕方を調整していきましょう。

(1)けんかのルールを決めておく
相手にけがをさせるような暴力は論外です。「ぶったり蹴ったりしない」など一定のルールを決めておきましょう。ルールを破った時、破りそうになった時に、保護者が介入する基準にもなります。絶対に許せないことには、毅然とした態度で臨みましょう。そうした保護者の態度を子どもは「いつもと違う」と感じ、「大変なことをした」という反省にもつながります。

(2)保護者が介入する場合は、互いを尊重する態度で
明らかにどちらかにけんかの原因があり、一方の力や立場が強い場合には、保護者が介入したほうがよいでしょう。たとえば、下の子が上の子のおもちゃを握って離さない場合、上の子の感情が高ぶって暴力を振るいかねません。まずは、「お母さんが預かるからね」と、おもちゃを両者から引き離し、感情の仕切り直しをさせます。そのうえで、両者の話を聞きます。この時、どちらかに肩入れをするのはNGです。子どもたちが言いたいことを聞き、双方に伝える役に徹します。小さい子の場合は言葉を補って伝えるとよいでしょう。双方の思いを伝え、相手のことが考えられるようにし、互いが納得できるように導いていくのです。親の権威を振りかざし、力で押さえつけ、頭ごなしに叱ってはいけません。親が見ていないところで、いじめたり暴力を振るったりするようになってしまいます。

(3)小さい子どもでもいけないことはいけないと叱る
きょうだいげんかの原因としてよくあるのが、下の子が上の子のおもちゃを壊した、遊んでいる場所に侵入したといったことです。「まだ小さくて言ってもわからないから」と、上の子ばかりに我慢をさせるのはよくありません。下の子が故意にしたことではないとしても、上の子の前で下の子を叱ってください。上の子のプライドが保たれ、「お母さんはわかってくれた」と自尊心が満たされます。そうしたうえで、上の子に「大切なものを壊されないように工夫しようね」というのです。場合によっては、「もういいよ」と弟や妹を許してくれるかもしれません。

(4)叱ったあとは、親から歩み寄る
子どもは未熟なのですから、悪い行為を叱っても、次のチャンスを与えることも大切です。子どもが落ち込んでいたら、好きなおかずでも作って「ご飯にしましょう」と声をかけてあげてください。「叱ったあとに甘やかすのはよくない」というかたもいますが、子どもが親に謝るチャンスをつかむのはなかなか難しいものです。親のほうから声をかけ、仕切り直しをしましょう。

(5)子どもの欲求をそれぞれつかんで対応を
けんかの言い分で、「お兄ちゃんばっかり」「弟ばっかり」と言われることがあると思います。自分では平等に接しているつもりでも、それぞれの欲求が違うために、受け止め方が違うから、そのような言葉が出てくるのです。年齢にもよりますが、上の子ならば、認知的にも発達しているので言葉で認められたいと思っています。たとえば、「ぼくと弟と、どっちが可愛い?」と聞いてきたら、「あなたよ」と言葉で言ってあげればよいのです。平等にしなければと思い込み、「どっちが可愛いとは言えないわ」と答えるから、余計に子どもは固執してしまい、下の子に手を出したりしてしまいます。また、下の子が生まれると赤ちゃん返りをして、哺乳瓶を巡ってけんかが起きたりします。その時には、上の子用にも作ってあげましょう。ミルクが飲みたいのではなく、自分にも同じようにお母さんに作ってほしいのです。必ずしも平等に接することがよいとは限りません。「お兄ちゃんばっかり」「弟ばっかり」というサインが出たら、その欲求に応じてあげるときょうだいへの不満が小さくなっていくでしょう。

(6)けんかが多い原因は家庭外にある場合も
あまりにもきょうだいげんかが多い場合、家庭外に原因があるかもしれません。たとえば、幼稚園で友達におもちゃを横取りされてばかりいるために、きょうだいにその不満をぶつけていたというケースもあります。幼稚園の先生に話を聞くなどして、外での子どもの様子をつかみましょう。

(7)時には気分転換をして、親子ともにリセット
きょうだいげんかがあまりにも激しく、精神的に参ってしまったら、児童センターなどに出かけてみてはどうでしょうか。家庭とは違う場で過ごし、違う人と出会い、違う遊びをする。そうすることで心に余裕が出てきて、子どもに優しくなれますし、子どもも思いっきり遊んで欲求が満たされます。自分も子どもも気分転換をし、仕切り直しすることも有効な解決策です。


プロフィール


岩立京子

東京学芸大学総合教育科学系教授。心理学博士。専門は発達心理学、幼児教育。幼稚園教諭や保育士を養成するかたわら、保護者の保育相談なども行っている。著書は『子どものしつけがわかる本』(Como子育てBOOKS)など多数。

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