高校の「専攻科」って何? 大学編入を認める答申も-斎藤剛史-

高校に「専攻科」という課程があるのをご存じでしょうか。通常の課程(本科)を卒業後、資格取得などのためにさらに2年間程度高校で学ぶための課程です。その専攻科が今、教育関係者などの一部で注目を集めています。中央教育審議会が2014(平成26)年12月、高校専攻科の修了者に大学編入資格を認めるよう答申したからです。

現在、大学3年生などの途中学年に編入する資格が認められているのは、短大卒業者、高等専門学校卒業者、年間授業時間数などが一定水準を満たした専門学校の卒業者などです。これに対して中教審は、小中一貫教育の制度化などを打ち出した答申「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」の中で、新たに高校の専攻科修了者も大学へ編入できるよう制度改正することを求めました。
高校の専攻科は、看護科や水産科など専門学科の卒業者がさらに高度な学習をするために設けられた2年間の課程で、2014(平成26)年5月現在、全国に133校あり、9,250人(男子1,652人、女子7,598人)の生徒が学んでいます。実際には、高校3年間の学習だけでは国家試験が受けられない看護師、3級海技士などの受験資格を得るケースがほとんどで、全国の高校のうち看護学科の8割、水産学科の6割に専攻科が設置されています。

これまで専攻科修了者には大学編入資格がないため、より高度な学問を身に付けるため大学に進学する場合、大学入試を経て1年生として入学するしかありませんでした。つまり、大学卒業のため通常の高校生は「高校3年+大学4年」の7年間で済むのに対して、より高度な学習をしたはずの専攻科修了者が「高校3年+高校専攻科2年+大学4年」の計9年間もかかってしまうというわけです。このため、高校関係者らは専攻科修了者に大学編入資格を与えるよう求めていましたが、専攻科の教育の質が不透明だとして大学関係者は編入に反対していました。
これに対して中教審は、教育内容や教員資格など高校専攻科の基準を新たに設けて教育の質を保証したうえで、高校専攻科での学習成果を大学教育の単位として認め、大学への途中編入を可能とするとしています。文部科学省は、早ければ2016(平成28)年度から高校専攻科修了者の大学編入を可能にする予定です。

学校制度の中で事実上の「袋小路」であった高校専攻科に大学編入資格が認められれば、高校3年間+専攻科2年間の5年間一貫教育を経て大学に途中編入するという、現在の高等専門学校とほぼ同様の仕組みが高校教育でも可能になります。そうなると、現行では看護科と水産科が大半を占めている高校専攻科ですが、工業・農業・情報などほかの分野にも大きく拡大していくことも予想されます。既に愛知県などは、新設予定の工業高校で専攻科を含めた5年間一貫教育を実施するプランを持っています。
高校における職業教育の充実や高度化という意味からも、大学編入が可能になることによって、これから高校専攻科がどう変わっていくのかが注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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