所変われば育て方も変わる? 発見! 世界の子育て グローバル社会を生きる(2)イギリスでの生活を通じて感じたこと

楽しいことも、悩みや気がかりも多い「子育て」「教育」。さまざまな方法や考え方を知ることで、子育てに対しての気持ちが少し楽になったり、自分に合った方法にアレンジしたり……。
日本の、そしてご自身の子育て・教育を見つめ直してみませんか。



夫の転勤に伴い、家族で赴いたロンドン。暮らしてみるとそこは、思い描いていた以上にグローバル、多文化な社会でした。自宅から一歩外に出ると、耳に入るのは英語……と思いきや、実際にはバスに乗っても、お店に入っても、英語はもちろん、実にさまざまな国の言葉があふれていました。多くの移民を受け入れ、さまざまな人種や国籍の人々が入り交じって暮らしているのです。

そこで、私自身がこのようにグローバル化が進んだ環境で暮らした経験から、今後グローバル化がさらに進むなかで大切になると感じたことについて、エピソードを添えてご紹介します。

(1) 寛容さ、おおらかさ
多文化の人間が集まる社会では、それぞれが違う「常識」を持って共に暮らしています。それぞれの「常識」はそれぞれにとって正しいのですが、同時にそれぞれ違っているため、時として葛藤を生みます。私の場合、こんなことがありました。

イギリスでは、家の設備や家電などが、本当によく故障したり壊れたりします。その都度、同じ修理工のかたに来ていただきましたが、困ったことがありました。彼は玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えることをかたくなに拒否し、土足で上がろうとするのです。「うちは日本人の家庭で日本では玄関で靴を脱ぐ習慣があるから、我が家ではそうしてほしい」と話しても「それは日本の習慣だろう。ここはイギリスだからイギリス流でいい」と譲りません。何度か言い合いになり、時にはこちらが折れて土足で上がってもらったり、彼が譲って靴を脱いだり。最後には、お互い顔を見ると笑い合う仲になりましたが、それでも彼も私も、自分たちの主張を変えたわけではありません。妥協して譲り合うようになっただけです。

どちらかが相手の主張を受け入れられればよいのでしょうが、互いに譲れないというのは、よくあることではないかと思います。その時に、かたくなに自分の主張だけをとおすのではなく、相手の主張も時に受け入れる、そういう(妥協ともいえる)おおらかさ、寛容さが必要になることを実感しました。

(2) 失敗を恐れない気持ち
ロンドンで英語学校に通っていた時の話です。ヨーロッパや南米などさまざまな国からの参加者で構成された10名ほどのグループでレッスンを受けていたのですが、レッスン中のみならず休憩時間まで、皆とても積極的に英語でおしゃべりします。私と同レベルで英語を習いに来ているので、よく聞いていると文法的に間違っていたりするのですが、おかまいなし。「できる・できない」ではなく「間違ってもいい、失敗してもいいからやってみよう」というエネルギーを感じました。さまざまな人が集まる集団の中で埋もれてしまわないためにも、失敗を恐れずどんどん行動する気持ちは大切ですね。

(3) 学び続ける力
新しい社会で暮らす場合は、その社会のルールや情報を一から学ばなければなりません。言葉も同じで、日本で多少の語学力を身に付けていても、実際に暮らし始めるとその国で独自に使われている単語・略語・言い回しなどがたくさんあり、学び直していく必要があります(ただ、日本の学校で学ぶ英語は決して無駄にはなりません)。新しい環境の中で、自分に何が足りないのか、それを身に付けるにはどんなことを、どんな方法で学べばよいのかを考えて、学び続けることができる力が大切になります。

(4) 日本について理解していること
イギリスではさまざまな国の人と出会うことができましたが、会話していると「○○(たとえば年金制度)について、日本ではどうなっているの?」など、日本の、それもかなり突っ込んだことをよく聞かれました。相手は私が日本人なので、当然日本のことを深く知りたいわけですが、当の本人である私は、知識が足らずしどろもどろになることも……。歴史や文化も含め、日本のことをしっかり伝えられる知識は本当に大切だと感じます。


プロフィール

沓澤 糸

大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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