大学編入が可能に 高校「専攻科」ってどんなところ?

改正学校教育法の施行により、2016(平成28)年4月から、高校専攻科の修了者に、大学編入学資格が認められます。専攻科というと、中卒者を対象とする高等専門学校(高専)と混同する人もいるかもしれませんが、それとは別もので高校卒業者を対象にした課程です。いったい高校の専攻科とは、どんなものなのでしょうか。

高校専攻科は、高校卒業者を対象に、より高度な教育を行うために設けられた課程で、現在、全国に132校(公立68校、私立64校)あり、約1万人が在籍しています。ただ、実態としては、看護師や3級海技士など、高校3年間だけでは取れない国家資格の取得を目指したものが多く、看護系と水産系が専攻科の半数以上を占めています。また、これまで専攻科修了者は制度上、高校卒業者と同じ扱いとなっており、大学に入るには、入試を経て1年生として入学するしか、方法がありませんでした。つまり、学校制度の中で高校専攻科は、1~2年間余分に勉強した努力や成果が、あまり評価されない状況にあったのです。

これに対して、文部科学省は2015(平成27)年に学校教育法を改正し、高校専攻科の修了者に対して、大学2年次以上への編入学資格を認めることにしました。これによって、大学編入学資格が与えられる者として、短大卒業者・高等専門学校(高専)卒業者・専門学校卒業者(修業年限2年以上)に、高校専攻科修了者が加わり、学校制度の中で上級学校との接続がない状態が解消されることになったわけです。

ただし、すべての専攻科に大学編入学資格が与えられるわけではなく、文科省が定めた基準を満たす必要があります。文科省は、大学編入学資格を認める専攻科の条件として、修業年限2年以上であること、課程修了要件が62単位以上であること、教員の半数以上は専攻科の専任教員であること、専攻科を設置する高校に専攻科専用の教室や施設・設備を設けることなどを挙げています。

ただ、学校制度上の接続の問題が解消されたとしても、専攻科の大半が国家資格の取得を目指している生徒であるため、大学編入学に対して、どれだけのニーズがあるのかは未知数です。その一方で、職業系を中心とする専門高校の活性化につながると期待する関係者も少なくないようです。

愛知県では、2016(平成28)年度開校の愛知総合工科高校に専攻科を設置し、5年一貫教育を実施するコースを新しく設けることにしています。技術革新のスピードが加速するなかで、高校の専門学科の3年間だけでは不十分という意見も多く、これに専攻科2年間を加えた5年一貫教育に乗り出す都道府県教育委員会などが増えることも予想されます。そうなると、5年一貫教育をしている高専と同様の教育が、高校でも可能になります。

高校専攻科修了者への大学編入学資格の付与では、実際に利益を享受できる者は少ないかもしれません。しかし、将来的には高校教育の中に5年一貫教育という選択肢が生まれ、子どもたちの進路選択の幅も広がるかもしないという可能性も持っているといえるでしょう。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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