不登校は「解消」後も継続的な支援が必要!‐渡辺敦司‐

最新の学校基本調査(速報)(外部のPDFにリンク)で2013(平成25)年度に年間30日以上「不登校」を理由に学校を欠席した小・中学生が増加に転じたことは、以前の記事で紹介したとおりです。増減の原因について実態を明らかにし、数を減らすよう学校や自治体が努力することが大切です。ただ、数が減ればよいというものでもありません。たとえ一人であっても不登校経験は、その後の人生に何らかの影響を及ぼさずにはいられない重大な問題だからです。

そうした観点から、文部科学省が学校基本調査速報を発表する1か月前に公表した「不登校に関する実態調査」に改めて着目してみましょう。2006(平成18)年度に不登校だった中学3年生1,604人を2012(平成24)年に追跡調査したものです。379人には、アンケートだけではわからない掘り下げた内容をインタビューしています。その結果、1993(平成5)年度の不登校生を追跡した前回調査に比べ、▽高校進学率が65.3%から85.1%へと大幅に増加▽高校中退率は37.9%から14.0%へと大幅に減少▽大学・短大等への進学も8.5%から22.8%に上昇▽就学も就業もしていない割合は22.8%から18.1%に改善……と好転していることは新聞報道などでも大きく取り上げられましたので、覚えているかたも少なくないことでしょう。

1993(平成5)年度の不登校生といえば、92(同4)年3月に文部省(当時)の「学校不適応対策調査研究協力者会議」が「登校拒否(不登校)問題について」という報告書をまとめた時の1年生です。昔は「登校拒否」とか「学校嫌い」の「学校不適応」だと考えられ、「なまけ」だとさえ言われていたこともありました。それが、この報告書によって「誰にでもおこりうる」ものだということが、やっと明確に指摘されたのです。
当時はまだ社会的認知も支援も不十分でしたが、今では登校拒否という言葉はすっかり過去のものとなりましたし、学校やスクールカウンセラー、教育センター等の支援はもとよりフリースクールや塾などの支援も広がっています。そう考えれば、数値が改善したことは当然です。肝心なのは、そこから何を教訓として読み取るかです。インタビュー調査では、「休んだことで今の自分がある」「成長した・視野が広がった」など、前向きに進んでいる様子もうかがえたといいます。高校進学後の不登校・中退防止対策はもとより、不登校体験をプラスに転化させるよう励ます指導が期待されます。

もう一つ大事な視点は、不登校状態が「解消」したあとも油断してはならないということです。文部科学省の定義は「年間30日以上」ですので、30日に満たないまでも休みがちな「グレーゾーン」の子は存在します。また、進学をきっかけにつまずき、不登校に陥るケースも少なくありません。大学進学率が全体で50%を超える中、今や不登校傾向を抱えたままで進学している場合も少なくないでしょう。不登校状態が解消したあとも、あるいは不登校傾向も含めて、子どもの自立を促すという視点で学校段階を越えた継続的な支援体制を充実させることが、ますます求められるでしょう。フリースクールなど民間セクターの役割も重要です。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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