特別支援教育を受ける児童・生徒が20年で倍増‐渡辺敦司‐
盲・ろう・養護学校などに分かれていた「特殊教育」が、発達障害も含めた「特別支援教育」に移行してから8年目になります。少子化にもかかわらず特別支援教育を受ける児童・生徒は増加し、各地で特別支援学校の新設や教室増が行われていることは、ニュースで見聞きしたかたも少なくないと思います。具体的にはどうなっているのでしょうか。
特別支援学校や小・中学校の特別支援学級について、2013(平成25)年度の学校数や学級数、児童・生徒数が増えている状況は、以前の記事(学校基本調査速報に基づく)で紹介しました。政府の教育再生実行会議で配布された資料(外部のPDFにリンク)によると、20年前の1993(平成5)年度と比べると、特別支援学校または特別支援学級に通う小学校段階の児童は2.1倍、中学校段階の生徒は1.9倍になっています。障害のある児童・生徒の増加というだけでなく、障害の種類別に対応した特殊教育に比べ、一人ひとりの障害の状況に応じて個別の教育支援計画や指導計画が立てられる特別支援教育への転換によって理解が進み、きめ細かな対応が得られる特別支援学校・学級を選ぶ保護者が増えていることも事実でしょう。
もっと急増しているのが、通常学級に在籍しながら必要に応じて特別な教室に通う「通級」です。制度化された1993(平成5)年度は小学校で1万1,963人、中学校では296人にすぎませんでしたが、2006(同18)年度に学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)が加わるなど発達障害が対象となったこともあって、小学校は5.9倍の7万924人、中学校は実に23.5倍の6,958人に上っています。
昨年の記事でも紹介したとおり、特別支援学校は1学級6人(重複障害の場合は3人)、特別支援学級は同8人で編制されており、わずかな児童・生徒数の増でもすぐ学級増につながります。その分、同時に学級担任である教員も増やすことになります。しかし、特別支援学校でさえ1教室をカーテンで仕切るなどして学級増に対応するなど、ハードの整備が追い付いていない現状もあります。また、50代教員の大量退職で新規採用が増える中、特別支援教育に高度な専門性と指導力を持った教員の確保が大きな課題となっています。
国の財政難もあって、少子化で児童・生徒数が減っているのだから小・中学校などの統廃合を進めるなどして教員数をはじめとした教育関係予算を削減すべきだとする主張(外部のPDFにリンク)も根強くあります。もちろんムダを削減すべきなのは当然ですし、集団の中で教育を行うためには一定の児童・生徒数や学級数が必要で、学校規模の適正化のために統廃合を行うことは教育上も求められます。ただし、特別支援教育ひとつ取っても、きめ細かな教育を行うためには昔に比べ一人にかけるコストを増やさなければならない分野があります。まして、これからの子どもたちに超高齢化社会を支える担い手としての役割を期待するなら、一人ひとりにもっとがんばってもらうよう、いっそう教育にコストをかけなければならないでしょう。特別支援教育の充実は、障害や困難を抱える子だけの問題とは言えないのです。