専門学校生への経済的支援も文科省が検討-渡辺敦司-

文部科学省はこのほど、「専修学校生への経済的支援の在り方に関する検討会」を発足させました。奨学金の充実をはじめとした大学生に対する経済的支援を検討する動きはこれまでにも紹介してきましたが、専修学校は大学などと制度が異なっているため、別に検討会を設けたものです。

高校生の主な進学先として、大学・短大・専門学校があることは、多くのかたがご存じでしょう。しかし大学・短大と専門学校がどう違うのかは、一般にはあまり知られていないのではないでしょうか。専門学校は、正式には「専修学校専門課程」といい、専修学校の一種です。では専修学校とは何かというと、実践的な職業教育や専門的な技術教育を行う教育機関として1976(昭和51)年に制度化された、比較的新しい学校種です。

専修学校には

(1)中卒以上を対象とする「高等課程」
(2)高卒以上を対象とする「専門課程」
(3)学歴不問の「一般課程」

の3種類があり、(1)を「高等専修学校」、(2)を「専門学校」と呼んでいます。(1)は高校と同じ中等教育機関、(2)は大学と同じ高等教育機関と位置付けられています。

あとからできた学校種のため、戦後すぐに制度化された高校や大学(学校教育法1条に定められているため「1条校」と通称)とはさまざまな面で扱いが違っています。その代表的なものが、大学の設置認可は国が行うのに対して、専門学校は都道府県が行うことです。時代のニーズに応じた職業教育を機動的に行えるようにするためで、学科改編を頻繁に行う学校も少なくなく、これが専門学校の強みともなっています。
逆に制度の違いがネックになることもあります。その大きな問題が、補助金です。私立大学は国から私学助成が受けられ、それを財源として経済的に困窮する学生に対する授業料減免を行うこともできますが、専門学校は管轄が違うため国からの私学助成が受けられません。専修学校に対する助成は地方交付税に算定されているものの、補助金と違って使い道が限定されているわけではなく、どれくらい予算を計上するかは都道府県の判断次第で、かなりの地域差があるのが実態です。文科省によると、自治体として授業料減免制度を行っているのは高知県だけです。半数近くの専門学校が独自に給付奨学金や授業料減免を行っていますが、その多くが他の学生の授業料収入などで賄われています。
専門学校生は大学生などと同様、日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金が受けられますが、それでも中退者の1割(約3,000人)は経済的理由によるものだといいます。大学生より奨学金やアルバイトへの依存度が高いことも同機構の調査でわかっており、経済的支援の充実が急務だと言えるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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