子どもの貧困問題、解消へ本格的な対策が急務‐渡辺敦司‐
政府が、「子どもの貧困対策に関する大綱」を閣議決定しました。以前の記事で、7月末にも大綱案を作成するよう検討を行っているとお伝えしましたが、実際には8月にずれ込みました。子どもの貧困の実態について、より深刻な最新の数値が明らかになったからです。
厚生労働省が発表した2013(平成25)年の国民生活基礎調査(外部のPDFにリンク)の結果では、平均的な収入の半分以下で暮らしている「相対的貧困」の状況が3年ぶりに明らかになりました。それによると、2012(平成24)年の「子どもの貧困率」(外部のPDFにリンク)は16.3%で、前回調査した09(同21)年に比べ0.6ポイント増加しました。今や17歳以下の子どものほぼ6人に1人が相対的貧困の家庭環境で育っているというわけです。子どものいない世帯も含めた全体の相対的貧困率が前回調査比0.1ポイント増の16.1%だったことに比べても、悪化の度合いが顕著です。
とりわけ、子どもがいる現役世帯で「大人が1人」の場合、相対的貧困率は54.6%と、4ポイント近く上昇しています。これに対して、「大人が2人以上」の場合は12.4%で、むしろ0.3ポイント減少しています。シングルマザー・シングルファーザーの家庭で貧困化が極めて深刻になっており、しかもその格差が拡大している実態が見て取れます。
2013(平成25)年の総所得を見ると、児童(厚生労働省では18歳未満と定義)のいる世帯全体では673万2,000円(2010<平成22>年調査比24万1,000円減)だったのに対して、母子家庭では243万4,000円(同19万2,000円減)にすぎず、その減り具合も3年で7.3%減と、児童のいる世帯全体(3.5%減)以上に大打撃であったことがわかります。生活意識を尋ねた設問では、「苦しい」との回答が児童のいる世帯全体でさえ65.9%と3人に2人なのですが、母子家庭では84.8%に上っています。しかも、このうち「大変苦しい」との回答が49.5%(児童のいる世帯全体は31.7%)と2人に1人を占めているのですから、放置できない状況にあると言ってよいでしょう。
相対的貧困状態にない家庭であっても、教育費は重い負担です。児童のいる世帯では児童の年齢が上がるにつれ母親の有職率も上がっていますが、非正規の割合が高くなる傾向にあります。年々かさむ教育費捻出のため、パートなどに出ている実態が浮かび上がります。
しかし貧困家庭では、生活するのさえやっとの状態なのですから、教育費どころではありません。生活保護を受けている人の4人に1人が子ども時代にも生活保護世帯で育っていたという調査結果があることは先の記事でも紹介しましたが、今回の調査結果からは「貧困の連鎖」がますます広がっていく心配が深まっていると言わざるを得ません。
貧困の連鎖をこれ以上拡大させないためにも、大綱をどれだけ予算や施策に反映できるかが問われます。貧困対策は当事者のみならず、将来の社会の担い手を育てるという点では社会全体の問題なのです。