子どもの頭痛とは?【後編】

子どもが「頭が痛い」と言ったら、大人はまず「熱があるの?」と考えがちです。しかし、熱がなくても、心理的なストレスと関係の深い緊張型頭痛や片頭痛などの症状に悩む子どもも多いことが、近年明らかになってきました。
前回は緊張型頭痛と片頭痛について藤田光江先生に伺いました。今回は不登校の原因ともなる「慢性連日性頭痛」とそのケアについて伺います。



心理的ストレスと関係の深い「慢性連日性頭痛(CDH)」

学校生活に支障を来す頭痛として、片頭痛のほかに、慢性連日性頭痛(chronic daily headache:CDH)があります。CDHは1日4時間以上の頭痛が月15日以上、3か月を超えて続く頭痛です。
人口統計を基盤とした調査によれば、5歳から17歳の平均2.2%にCDHが見られ、男女とも12~14歳で多くなります。その原因は、緊張型頭痛、または片頭痛と緊張型頭痛の共存が多いことがわかっています(緊張型頭痛と片頭痛については前編参照)。もともと片頭痛を経験している子に、思春期になって何らかのストレスがかかり、頭痛が慢性化しているケースが見られます。
片頭痛だけであれば、発作のない時は元気に過ごせますし、鎮痛薬で痛みを抑えることもできます。しかし、心理的ストレスが絡んだ頭痛には、鎮痛薬はあまり効きません。子どもが不登校となり、「頭痛さえ治れば学校に行けるはず」と考えて、頭痛専門機関を熱心に受診する保護者も数多くいらっしゃいます。しかし、心因性の頭痛は治りにくいのが現実です。この病気と気長につきあっていく覚悟ができると、本人も保護者も肩の力が抜け、少しずつよくなっていくことが多いのです。



「頭痛ダイアリー」で自分のストレスを客観的に見つめる

CDHの治療には「頭痛ダイアリー」が役立ちます。ダイアリーには、頭痛の始まりと終わりの時間や痛みの強さ、起床・就寝時間や使った薬、その日の学校や家庭での生活、習い事やテスト、けんかやいじめなどストレスに感じたことを、小学校高学年以上なら本人に書き込んでもらいます。ダイアリーのよさは、本人や保護者が、学校や家庭での生活を客観的に見直し、ストレスに気付けるという点です。たとえば平日の朝や特定の曜日に起こりやすいといったことがわかれば、学校や習い事でのストレスとの関連が考えられます。(広く使われている頭痛ダイアリーは、日本頭痛学会のホームページからダウンロードできます。)



表現できない気持ちが頭痛となって表れることも

新学期やゴールデンウイーク明け、夏休み後の9・10月には、CDHによる受診が特に増えます。慢性化の要因には、学業や人間関係の問題が挙げられます。学業の問題でよく見られるのは、小学校高学年から塾通いをし、中学受験をして合格したものの、成績がふるわず、頭痛で登校できなくなるというケースです。保護者や周囲の期待に応えようとがんばり続けた末、息切れしてしまうんですね。

中学校時代は、子どもにとってただでさえきつい時期です。先生や先輩との関係も厳しくなりますし、自我の芽生えとともに、他人と自分の違いが気になり、人の欠点をあげつらう子もでてきます。そんな環境の中で、嫌なことを嫌と言えない子は生きづらくなります。人間関係のトラブルがあっても、つらさを吐き出せずにため込んでしまう。その気持ちが頭痛として表れるケースが数多くあるのです。
頭痛が慢性化している子どもには、まじめで大人に逆らわない、いわゆる「いい子」が多いという印象を受けます。特に一人っ子はモデルがいないため、反抗のしかたがわからない子も多いようです。家の中で気持ちを表現する方法を知らなければ、外で自分を出せるはずもありません。
カウンセリングでは、本人と保護者を別々に面接し、子どもには「今日から身近な人に、思ったことをストレートに言おう」とすすめます。保護者には、気持ちを吐き出しやすい環境の必要性、反抗は成長の証しと考えてほしいといったことを伝えています。本人が自分の気持ちを言語化できるようになると、頭痛も軽減し始めます。



子どもの生きる力を奪わない、CDHのケアとその予防

CDHが原因で不登校となっている場合、「頭痛があっても、できることをやっていこう」と考えることが必要です。授業に出られなければ保健室登校でもよいし、教育委員会が設置する適応指導教室やフリースクールに通う方法もあります。ダンスなど、好きな習い事を見つけたのがきっかけでよくなったケースもありました。心の問題が大きい場合、かかりつけ医に子どもの心の外来を紹介してもらうのもよいでしょう。通院にしろ、趣味にしろ、家庭の外とのつながりをつくることが大事なのです。
家庭ではバランスのよい食事を心がけ、生活のリズムを守るよう指導してください。スマートフォンやゲームに長時間熱中して昼夜逆転となることは、緊張型頭痛を悪化させ、百害あって一利なしです。

以前、「なぜうちの子は学校に行けなくなったのでしょうか。子どもによかれと思うことはすべてやってきたのに」とおっしゃった保護者のかたがいらっしゃいましたが、すべて与えることこそがよくない場合もあります。おもちゃや電子機器、塾やおけいこ事など、小さいころから何もかも与えられていたら「欲しい」という気力も生まれず、働くことや勉強する意味もわからなくなってしまうのです。
都市部の核家族では、家庭環境は密室になりがちですが、密室の息苦しさは心身の不調につながります。そうならないために、時間管理や約束を守ることなど基本的なルールを教えたら、あとは子どもの世界を少し離れて見守るほうがよいようです。友達同士で遊んだりけんかしたりしているうちに、子どもは自分なりの自己表現のしかたを学んでいきます。大人も自分の世界を大切にしてしっかり生きる……CDHを予防し、かつ子どもの生きる力を奪わないためにいちばん大事なのは、そういうことかもしれません。


プロフィール


藤田光江

筑波学園病院小児科、東京クリニック小児・思春期頭痛外来で診療。4人の子どもを育てながら小児科勤務医を続けた経験から『お母さんの悩み相談室』(婦人之友社)を執筆。他著書に『子どもの頭痛 頭が痛いって本当だよ』(メディカルトリビューン)がある。

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