専門学校の授業料減免を促進へ 苦しい学生生活を間接支援‐渡辺敦司‐

大学生などに比べて手薄だとされる専門学校生への経済的支援を文部科学省が検討しているという動きは、以前の記事で紹介しました。このほど有識者検討会の報告(外部のPDFにリンク)がまとまり、それを受けて文科省は専門学校が授業料減免を行った際に経費の一部を支援するよう、2015(平成27)年度概算要求に4億7,100万円を計上しました。国の財政も厳しいですが、経済格差と教育格差の拡大が心配されるなか、実現が望まれます。

概算要求(外部のPDFにリンク)によれば、対象となるのは職業人材の育成を目的とする専門学校に通う、
(1)生活保護世帯(世帯年収約250万円未満程度)
(2)市町村民税所得割非課税世帯(同約270万円未満程度)
(3)所得税非課税世帯(同約330万円未満程度)
(4)保護者等の倒産、失職などにより家計の急変した世帯
の学生と、それに準じる経済的に困難な生徒。国からの支援額は減免額の2分の1以内で、元の授業料の4分の1を超えない額としています。こうした支援によって専門学校に授業料減免の拡大を促すことで、経済的に厳しい環境に置かれている人も多い専門学校生を間接的に支援しようというものです。

以前の記事でも紹介しましたが、都道府県が設置認可を行う専門学校は、私立大学などと違って国からの私学助成がなく、自治体として授業料減免制度を行っているのは高知県だけのため、各学校が授業料収入など限られた独自財源の中から費用を捻出しなければならず、それが授業料減免の広がらない要因にもなっていると指摘されていました。

報告書に付けられたデータを見ると、家庭の年収が300万円以下の割合は大学生で8.7%なのに対して専門学校生は17.4%を占めており、高校生も保護者の年収が低いほど専門学校を志望する割合が高くなる傾向があります。実際、生徒が専門学校を選択するのは「就職に有利」「専門分野を深く学べる」「資格取得に有利」などが主な理由ですが、「学費が高くないこと」も短大や大学より多くなっています。

そうは言っても私立専門学校の学生納付金の平均額は、2013(平成25)年度で約110万円。私立大学の131万円より安いとはいえ、同短大の112万円とそれほど変わりありません。日本学生支援機構の奨学金を受けているのは2012(平成24)年度で2.7人に1人(19万5,581人)で、大学生(2.6人に1人)よりやや少ないものの、学生の収入という視点から見ると、私立大学生は家庭からの給付が62.3%を占めているのに対して(2010<平成22>年度)、私立専門学校生は48.5%と半数を切っており、定職に就いて学費を稼ぐなどしている者も1割以上います(09<同21>年度)。経済的理由により中退した者も近年、11~12%で推移しています。

報告書では、専門学校進学者には地元志向が強く、卒業後も地元に就職したいと考える傾向が大学以上に強いことなど、職業人材育成の中核的な教育機関として地域の活性化に貢献している意義を強調しています。専門学校生への支援は、単に生徒個人を助けるというだけでなく、安倍政権が目指す「地方創生」にも一役買うことになるのかもしれません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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