家庭の経済力が子どもの学力に影響!? 保護者が子どもの教育で心を配りたいこと -木村治生-

平成26年3月28日に、文部科学省が「平成25年度全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の追加調査として行われた「保護者に対する調査」の結果を発表しました。この調査を分析したお茶の水女子大学のグループ(代表:耳塚寛明副学長)は、家庭状況と学力の関係を分析し、不利な環境にもかかわらず成果を上げている子どもや学校の取り組みにどのような特徴があるのかを明らかにしています。その結果からは、保護者が子どもの教育でどのようなことに配慮するとよいかを知ることができます。

それでは、調査で明らかになったのは、どのようなことなのかについてご説明しましょう。



家庭の背景と子どもの学力には相関がある

図1は、家庭所得と全国学力テストの正答率の関係(小6)を示しています。これを見ると、所得が高い家庭の子どもの正答率がより高いという傾向になっています。国語A・B、算数A・B共に、年収「200万円未満」と「1500万円以上」とでは、正答率に20ポイント前後の開きがありました。この傾向は、中3の結果でも変わりません。所得が高い家庭は、教育費も高額であり、校外学習の利用も学力に影響を与えていると考えられます。

家庭所得のような経済力のほかにも、保護者の学歴などの文化的な要因が、子どもの学力と相関があることが示されています。こうした家庭の社会経済的背景と子どもの学力に関連があるという結果は、今までの先行研究でも明らかにされています。


図1:家庭所得別の平均正答率(小学6年生)


学力を向上させる保護者の働きかけ

しかし、家庭の社会経済的背景は、容易に変えられるものではありません。この調査で興味深いのは、不利な環境の中で成果を上げている子どもの特徴や、そうした子どもの学力を高めている学校の特徴を明らかにしている点にあります。家庭の状況にかかわらず学力を高めるのに効果的な方法を示しているととらえることができます。

基礎的な分析を踏まえたうえで、この研究ではさらに、家庭の社会経済的背景の影響を取り除いても、子どもの学力と関係がある保護者の接し方を5つ示しています。これらは学力の向上に、プラスの影響を与えている働きかけだと考えることができます。
それは、次のようなものです。

(1)生活習慣に関する働きかけ(毎日決まった時間に寝る/起きるようにしている、毎日朝食を食べさせている、テレビゲームで遊ぶ時間を限定している、携帯電話などの使い方に関するルールや約束をつくっている(または、テレビゲームや携帯電話等を持たせていない)

(2)読書に関する働きかけ(本や新聞を読むようにすすめている、読んだ本の感想を話し合ったりしている、小さいころに絵本の読み聞かせをした)

(3)学習に関する働きかけ(子どもの勉強を普段見ている、計画的に勉強するように促している、子どもが英語や外国の文化にふれるよう意識している)

(4)文化・芸術・自然体験活動に関する働きかけ(子どもと一緒に「博物館や科学館」「図書館」「美術館や劇場」に行く)

(5)子どもとのコミュニケーション(子どもと「学校での出来事」「勉強や成績」「将来や進路」「友達のこと」「社会の出来事やニュース」について話をする)



保護者が気を付けたいこと

ここに挙げられているのは、子どもの様子に強い関心を持ち、学習面はもちろんのこと、日頃の生活や体験活動にも配慮をし、子どもとよく話をする保護者の姿です。その多くが、お金をかけなくても手間と時間をかければ工夫次第で実行できる内容だろうと思います。ただし、保護者の不断の努力を必要とし、当の保護者にとってはそれなりに大変な内容であるともいえます。すべての家庭で十分な働きかけができるかというと、難しい面もあるでしょう。

さらに考えたいのは、子どもの発達段階です。上述したような緊密な働きかけを、子どもが成長してもずっと続けていたとしたら、子どもは自立できるのか。子育てのゴールは自立であり、当面の学力向上だけではないはずです。自分で生活や学習をコントロールする力を身に付けることが大事であり、徐々に保護者が働きかけなくてもできるようにしなければなりません。また、会話の内容なども子どもの成長と共に変化するはずで、全体の会話量は減っていっても、進路の話などを意識的に増やす必要があります。

まずは、この研究で明らかにされた接し方の基本について、それぞれの家庭でできることから始めること。そのうえで、この基本を意識しながらも、すべてに手を出すのでなく、少しずつ子どもに任せること(任せられるところは保護者も手を抜くこと)。そうしたバランスをとった働きかけが、長期的に見て、子どもの自立にプラスに働くと考えます。


プロフィール

木村治生

木村治生

CRN主席研究員、ベネッセ教育総合研究所主席研究員。
ベネッセコーポレーション入社後、子ども(乳幼児~大学生)、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究、 学習のあり方についての研究、教育市場(産業)の調査などを担当。 文部科学省や経済産業省、総務省から委託を受けた調査研究にも数多く携わる。 東京大学客員准教授(2007年、2014~16年)、追手門学院大学客員研究員(2018年~)、横浜創英大学非常勤講師(2018年~)、文部科学省「中高生を中心とした子供の生活習慣づくりに関する検討委員会」委員(2013年)、「中高生を中心とした生活習慣マネジメント・サポート事業」における選定委員会委員(2017年)、光り輝く「教育立県ちば」を実現する有識者会議委員(2014年)、富山県学力向上対策検討会議アドバイザー(2014年)、草加市子ども教育連携推進委員会専門部会委員(2014年~)など。専門は社会調査、教育社会学。

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