これからの学びにアートが役立つ!?ベネッセアートサイト直島で学びを広げよう。【直島アート便り】【PR】
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昨今、アート思考やSTEAM教育など、「美術」は教科の枠組みを超えて学びの場に活用される場面が増えてきました。ベネッセアートサイト直島では、美術の学習だけでなく、総合学習、探求学習など児童・生徒が自発的に考えるための教育プログラムを提供しています。この記事では、「なぜ美術が主体性を養う学びに繋がるのか」を考えていきます。
「鑑賞」から身に着くこと
人間は、五感による知覚のうち視覚を通してほとんどの情報を得ていますが、記憶に留まる情報はそのうちのほんの僅かだと言われています。美術館での作品1点あたりの鑑賞時間は15秒程度だという実験結果もあります。作品を「みる」ことに注力しているはずの状況でも、十分に鑑賞しているとは言いにくいということが分かります。
十分に時間をかけて美術作品を鑑賞することは、「観察力」を身につける機会にもなります。
例えば、今皆さんの周りにあって目に入ったものを、1分程度よく観察してみてください。普段何気なく「みて」いるだけでは気づかないことがいくつか見つかったのではないでしょうか。美術作品を対象に観察してみると、得られる情報は素材や色・形などの表面的な特徴だけではありません、より様々なものが見つかるはずです。
意識して「よくみる」ことは、裏を返すと「よく考える」ことでもあると言えます。どの部分を観察し何に気づくか、その作品からどんなメッセージを受けとるかなど、おのずといろいろなものに思いをめぐらせることができるでしょう。
美術を鑑賞し、自分なりの解釈を進める際、「なぜそう思ったのか?」を問うことが重要です。
他の人の意見と違うその根拠を考えていくと、そのときの興味関心や周りの環境、今までに見聞きしてきたことなどと結びつけて連想していること、つまり自分の経験や価値観が投影されていることに気づきます。そのように時間をかけて美術を「みる」ことは、自分でも気づいていない自己を知ることにも繋がるのです。
アマンダ・ヘン「Another Woman No.02」1996年(左)、アマンダ・ヘン「Twenty Years Later」2014年(右) 写真:宮脇慎太郎
小豆島 福武ハウスにて同作家の作品を6点展示しています。(2021年4月現在)
例えば、この2枚の写真の作品をみるとき、どこに着目するでしょうか。右の写真は左の写真の20年後に撮影されたものです。この二人はどのような関係で、20年という年月の間にどんな変化があったのでしょうか。中には自分と家族との関係性に置き換えて想像してみる人、日常的なコミュニケーションの在り方や課題について考える人、時を経て変わるものと変わらないものに思いを巡らせる人もいるかもしれません。「鑑賞」は、その時の自分の中にある「問い」に気づき見つめることだとも言えるでしょう。
※この作品は、作家の住んでいるシンガポールの歴史や文化構造が背景にあります。そのような視点でもう一度鑑賞してみると、少し違った解釈を得られ、自分の地域の文化に目を向け捉え直すきっかけになるかもしれません。
参考:https://benesse-artsite.jp/uploads/about/magazine/magazine_202007.pdf
ベネッセアートサイト直島での「鑑賞」の特徴
ベネッセアートサイト直島では、現代美術を中心に展示しています。
展示されている作品の中には、日本で初めて国立公園に指定された美しい瀬戸内海の景観や、歴史ある集落に続く人々の営みと関わり合うものがあります。
自然と共生する作品からは、五感を使った体験や、季節や時間による変化を感じることができます。集落の中にある作品は、同じ時代を生きる作家が、社会を切り取る視点を様々な表現方法で提示しているとも言えるため、現代社会の姿や課題を考えたり、地域固有の文化に気づいたり、日常生活との繋がりを意識したりするきっかけになります。
ベネッセアートサイト直島にある作品の数は、直島だけでも100点以上、犬島や豊島など他の島も合わせると20以上のアートプロジェクトがあるため、様々な作品の鑑賞を繰り返し経験していくことで、より多くの自分の関心ごとと結びつけて考える力が養われていくことに繋がります。
自分の価値観に気づく体験は、決まった解釈のない作品が多い現代美術を対象にすることで、より自由に幅広く考えを広げていくことができます。また、その個人の解釈は人によって様々に異なり、唯一の正解はありません。共に時間を過ごす仲間や初めて話す人と一緒に作品をよく観察し、発見したことを意見交換したり、感じ、考えたことを共有したりすることで、自分が気づいていなかった視点を得ることもできます。
このように他人と解釈を共有しながら作品を鑑賞する方法は対話型鑑賞と呼ばれ、多様性理解にも繋がって自己肯定力が身に着いていきます。ベネッセアートサイト直島では、いくつかの美術施設で対話を用いた鑑賞プログラムを行っています。
このような経験を重ねていくことで、普段の生活の中でさまざまなものの見方を獲得し、未知なるものに抵抗するのではなく、興味を持って積極的に関わり、新しいアイディアを楽しむ姿勢を身に着けることに繋がるのではないでしょうか。
「表現」から身に着くこと
美術は、絵や彫刻だけではありません。音を伴うもの、身体を使うもの、光や水などの自然と呼応するものなど様々です。美術の表現手法は論理表現を必要とせず、純粋性が高く、自分なりの美意識が投影されるため個性豊かに表現されることが多く、人と違っていることが認められる数少ない分野です。
アート思考やデザイン思考では表現手法としても美術が活用されますが、作家の様々な表現方法に触れることで、美術の定義を広げ、より自由なアイディアや創造力を引き出すことにもつながります。
ベネッセアートサイト直島での「表現」の特徴
ベネッセアートサイト直島の作品は、地域の歴史、地形、気候、さらには科学、知覚心理学など美術の領域を超えて様々な要素や分野に拡張しているものも少なくありません。作家の制作プロセスをなぞりながら身体を動かして追体験してみることで、その作品がどのように周囲の「もの」や「こと」と結びつき、自分の中にあるものが表現されていくのか実感することができます。
また、個人の価値観や美意識を形にする表現だけでなく、自分が理想だと思う社会像を描いたり、それを実現するための具体的なアクションを考えたりすることへも展開していくことができます。
STEAM教育では、異分野を繋ぎ合わせ総合的に解決策を考える方法が重視されていますが、アートはその中の1つの分野としてだけでなく、異なる視点を繋ぎ合わせる土台をつくる役割として機能させることができるのではないでしょうか。
自分の考えを様々な分野にある手法とつなぎ合わせ、新しい提案やアクションプランとして形にしていく過程で、自分の考えの枠組みを広げたり、他人の意見と融合させたり、前例のない新しい組み合わせを生み出したりする姿勢を、楽しみながら育むことがアートの可能性だと言えます。
これからの教育現場で重視されることとは?
2018年から2022年にかけて改訂される新しい学習指導要領では、より主体的で総合的な学習や、思考力・判断力・表現力を身につけることなどが重視されています。
学校の外に学びの場を広げ、地域や企業など、様々なステークホルダーと関わる経験を通じて、社会とは何かを習得し、自分はどのように社会に参加し貢献し得るのかを考え、自分で自分の生きる道を選びもしくは切り開き、自信を持って歩んでいく人材を育てていくことが求められていくのではないでしょうか。
教師や周りの人に設定された課題解決やプロジェクト内での取り組みだけでなく、広いフィールドで自分なりの課題を捉え挑戦する機会をつくることで、日常生活にもその経験が活かされ、自然に好奇心や積極性が育まれたり、自信に繋がったりすることが期待できます。
美術は、特定の答えに縛りつけるものではなく、私たちに考えるきっかけや視点を明示しているものだと言えます。作品と向き合い、その時自分の中にある問いと答えを考えることにより、思考力を始め様々な能力が養われるのです。
ベネッセアートサイト直島での学びのすすめ
ベネッセアートサイト直島では、学校や団体の目的やテーマに合わせてカスタマイズしたプログラムをご提案しています。総合学習、探求活動を始め、SDGs、STEAM、アート思考、デザイン思考など、さまざまな実績があります。
ベネッセアートサイト直島の大きな特徴は、美術施設という建物の中だけではなく、自然や集落など、リアリティのある環境でアートを通じた様々な思考を得られることです。
また、海を渡る道中や、様々な場所にアートが展示されたホテルでの滞在も含めた「アートと共に過ごす非日常の体験」により、概念的で大きなテーマに取り組むこともできます。
今回紹介した鑑賞や表現のほか、地域や自然の場を読むフィールドワーク、ベネッセアートサイト直島のメッセージや活動プロセスからの学び、自力での課題発見や、社会や地域の理想像を具体的に提案するグループワークなどを一連の体験として設計しています。その季節や時間帯にしか見られない風景、その瞬間を共にする仲間との対話を通して、今の時代に私たちが直面している課題や自分がよりよく生きていくためのヒントについて考えてみてはいかがでしょうか。
詳しい情報やお問い合わせはこちらよりご確認ください。https://benesse-artsite.jp/education-program.html
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