対話を楽しむ作品鑑賞のかたち「豊島横尾館トークツアー」とは?【直島アート便り】

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瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)には様々なアート施設があり、各施設で作品の特性に合わせたプログラムが展開されています。鑑賞者がそれぞれの物語を想像することができる豊島横尾館では、作品との対話を中心にしたプログラムを実施しています。

今回はスタッフと一緒に作品をじっくり鑑賞し、気づいたことや思ったことを共有しながら作品の鑑賞を深める「豊島横尾館トークツアー」について紹介します。

豊島横尾館の入り口ではスタッフが笑顔で参加者を迎えます

この記事のポイント

豊島横尾館ってどんなところ?

アーティスト・横尾忠則と、建築家・永山祐子が手がけた豊島横尾館は、豊島・家浦地区の集落にある築100年ほどの古い民家を改修してつくられました。

もともとの建物の配置を生かした「母屋」「倉」「納屋」から成る空間には平面作品11点が展示されており、庭と池、円塔、さらにはトイレにもインスタレーション作品が展開されています。

豊島横尾館 写真:山本糾

建物には随所に色ガラスを用いており、見る角度や時間帯によって空間の見え方が変化します。光や色の印象とともにそれぞれの空間での作品体験はコラージュのようにつながり、「生と死」をテーマに制作を続ける横尾忠則の世界観を体感することができます。

「原始宇宙」が展示された「母屋」の展示空間
豊島横尾館 写真:山本糾

様々な作品の見方に出合う

豊島横尾館では、スタッフとともに対話しながら作品を鑑賞する「豊島横尾館トークツアー」を開催しています(2021年10月現在)。スタッフによる作品解説だけではなく、参加者自身が気づきや疑問をもったことについて考え、それらを他の参加者と共有することで作品の鑑賞を深めていきます。

ここからは、これまでの参加者の意見を交えながら、「豊島横尾館トークツアー」の体験について詳しく紹介します。今回は豊島横尾館の最初の空間である「倉」の2作品を鑑賞しました。1点目の《天ニアルモノヲ見ヨ》は、豊島横尾館を訪れる人が最初に出合う絵画作品です。

今回の参加者は3名。作品の上部には「天ニアルモノヲ見ヨ」という文字が描かれています

まずは一人一人が作品をじっくり見るところから始まります。数分後、スタッフは参加者に作品を見て気づいたことや感じたことについて問いかけます。「スフィンクスがピアスをしている」「火山が噴火しているように見える」「この世の終わりみたい」など、参加者は作品からの発見やイメージについて自由に話します。

そこからさらにスタッフや参加者同士で対話を深めていくと、「この場所は絶望的に見えるけど、上部に描かれている『天ニアルモノヲ見ヨ』というのはきれいなところ、幸せを見よと言っているのではないか」といった作品に込められたメッセージにまで考えを発展させる人もいました。

作品をよく見て複数の人と話していくことで、一人一人の作品の見方が異なることがわかり、その異なる見方を受け入れることで自分の見方も広がっていきます。

自分なりの物語を共有する

続いて、豊島横尾館のために描かれた作品を鑑賞します。「何が描かれていますか」という問いかけでは「お墓に見える」「ろうそくが気になる」「先が見えない」など、様々な視点が共有されます。

参加者は作品から想像したそれぞれの物語を語ります

スタッフから作品のタイトルが《死の島》である旨が伝えられると、「横尾さんの『死の島』は明るい、にぎやか」「横尾さんの『死の島』はいろんなものに溢れていて、ここで死を迎えるのはどんな感じだろう」といった意見も挙がりました。いつの間にか参加者自身が作品の中に入り込み、自分なりの物語をつくっているようです。

これまでの参加者からは、「美術館では普段、キャプションや解説を読みながら鑑賞して、自分自身で考えるのは難しいと思っていましたが、今回はスタッフさんと話しながら見ることで楽しめました」「普段一人で美術館を見ていて、こんなにじっくり作品を見たことはないし、他の人の意見を聞くことはなかったので、新鮮でした。良い思い出になりました」といった声が寄せられています。

作品との対話がもたらすもの

横尾忠則は、自身の作品を鑑賞する人に対して「自由に想像して物語をつくってほしい」と語っています。(横尾忠則『豊島横尾館ガイド』河出書房新社, 2019年, p101)

作品の解釈は鑑賞者によって様々です。時間をかけて作品を鑑賞することで自分なりの視点や考えに気づき、さらに作品を見て感じたことや考えたことを言葉にして共有することで、思いもよらない作品の解釈に出合えるかもしれません。豊島横尾館でじっくり作品と対話してみませんか。

プログラム終了後も庭のインスタレーションで対話する様子が見られました

プログラムの開催日などの詳細はベネッセアートサイト直島のホームページをご覧ください。
https://benesse-artsite.jp/art/teshima-yokoohouse.html

プロフィール



「ベネッセアートサイト直島」は、直島、豊島、犬島などを舞台に、株式会社ベネッセホールディングスと公益財団法人 福武財団が展開しているアート活動の総称です。訪れてくださる方が、各島でのアート作品との出合い、日本の原風景ともいえる瀬戸内の風景や地域の人々との触れ合いを通して、ベネッセグループの企業理念である「ベネッセ=よく生きる」とは何かについて考えてくださることを願っています。
https://benesse-artsite.jp/

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