2014年の教育、「改革」が目白押し‐渡辺敦司‐
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新しい年を迎えました。教育をめぐっては、政権を取り戻した安倍晋三首相の下で「教育再生実行」の改革が次々と打ち出され、昨年末までにさまざまな方針が示されたところです。2014(平成26)年の教育はどうなるのでしょうか。
滋賀県大津市の中学生いじめ自殺事件などを契機に改革の必要性が求められた教育委員会制度については、教育長を教育行政の責任者とする中央教育審議会の答申を経て、今年の通常国会(常例1~6月)に地方教育行政法などの改正案が提出される見通しです。ただ、教育の政治的中立性や継続性・安定性をめぐって中教審で対立が続いてきましたから、法案づくりでも細部をめぐって曲折が予想されます。本当に責任ある体制が築けるのか、保護者や地域住民にとって安心できる公教育になるのか、まだまだ注目が必要です。
教育内容に関しても、道徳教育や小学校英語を教科化することが相次いで提言されました。これらの授業時間数を増やそうとすると当然、ほかの教科など全体にも関わってきます。従来おおむね10年に一度、全面改訂されてきた学習指導要領がどうなるのか、また、道徳や英語にとどまらずカリキュラム全体を「21世紀」にふさわしいものへと刷新に踏み切るのかどうか。さらには指導要領が変わる前であっても、その趣旨を先取りして学校で実践するよう求める動きも強まることが予想されます。
指導要領を具体的な形で表すのは個々の学校の授業ですが、その際に大きな役割を果たすのが教科書であることは言うまでもありません。教科書検定をめぐっては、第1次安倍内閣の時に全面改正した教育基本法の趣旨をより徹底した教科書になるようにと、検定基準を見直す法令改正が今後の焦点になります。下村博文文部科学相は通常国会で法案を成立させ、2014(平成26)年度に検定する中学校教科書(使用開始は16<同28>年度)から適用したい考えです。また、正式な検定基準見直しに先行して、東京都や神奈川県などで昨年もあった自治体主導により特定の高校教科書を採択対象から外すような動きが加速するかもしれません。
将来の教育を大きく変えることになりそうなのが、大学入試改革論議(外部のPDFにリンク)です。2012(平成24)年11月から検討の場を中教審に戻していますが、大学入試センター試験に代わる「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」をめぐっては、実施教科・科目どころか実施主体がどこになるかも教育再生実行会議の提言では示されておらず、具体的な制度設計はこれからです。達成度テストが1点刻みでなくなることを受けて、各大学がどのような選抜資料を使うべきかも議論が必要でしょう。さらには、大学入試改革はもともと、大学教育・高校教育との一体で改革することが求められていたことですから、大学教育や高校教育の改革論議がどうなっていくのかも同時に見ていく必要があります。
このように今年は、教育改革をめぐる動きが目白押しです。新聞などの報道はもちろん、ぜひ当サイトの教育ニュースにも注目してもらいたいと思っています。