まるで強迫観念にかられたように自分の物を確保したがる[教えて!親野先生]

さて、ご相談のケースです。

最近、対応を変えたとのことで、私は今のやり方でいいと思います。
というのも、一番大事なのは、子どもを安心させてやることだからです。
これが何よりも最優先です。
そのことに気が付いて、ご夫婦一緒に方針転換できたのはとてもいいことです。

口で説得したり叱ったり異常性を指摘したりしても効き目はありませんし、かえって逆効果です。
こういう時、「一度見れば大丈夫だからね。歩いて逃げていくはずがないんだからね」と口で説得しても、それだけでは子どもの不安は収まりません。
「一度見ればわかるでしょ!」「何度見ても同じでしょ!」「しっかりしてよ」などと叱ってはね付ければ、子どもの不安が増幅するだけです。
「頭がおかしいんじゃない」「みっともないでしょ」などと、その異常性を指摘するのも、不安の増幅につながります。

本人は心配で心配でたまらないのですから、それを押さえつけても逆効果です。
まずは、気が済むようにしてやってください。
子どもの不安を受け入れて、助けてやって、安心させてやってください。
もちろんいつも一緒にいられるわけではありませんが、一緒にいる時はぜひそうしてやってください。

「ここにあるからね。大丈夫だよ」と、口で言って安心させてやるのもいいでしょう。
その時は、「大丈夫だよ!(何度見ればわかるの!)」というような怒った感じで言わないようにしましょう。
「大丈夫だよ。絶対大丈夫だからね。心配ないからね」と安心させる感じで言うようにしましょう。

そして、常日頃から「何か困ったことがあったら、お父さんやお母さんが助けてあげるからね」「心配なことがあったら、いつでも言ってね」と、繰り返し言ってやるといいと思います。
また、「園で困ったことがあったら、先生にどんどん言っていいんだよ。先生が助けてくれるからね。お父さんからも先生に頼んであるから、大丈夫だよ」と言ってやるのもいいと思います。
場合によっては、先生だけでなく仲の良い友達について言っておくのもいいでしょう。

子どもにとって、このような「自分は守られている」という意識は大きな安心材料になります。
それがあるとないとでは、大違いです。
それは、大人が思っている以上のものです。
叱ったり異常性を指摘したりするのを一切やめて、ひたすら子どもを安心させることに全力を注ぐといいと思います。

そして、実際に先生にも話して、家と同じような対応をしてもらうとより大きな効果があると思います。

とにかく、毎日の生活を安らかな気持ちで安心して送れるようにしてやることが大切です。
そのためには、生活のいろいろな場面でほめることを増やし、叱ることをなくすことです。
ものの言い方でも、マイナスイメージの言い方をやめて、プラスイメージの言い方に心がけてください。
子どものありのままの姿や気持ちを受け入れ、許し、共感してやってください。

習い事、勉強、しつけなどで、負担になることを増やさないことも大切です。
子どもが好きなことに熱中できる時間、心から清々した気持ちで楽しめる時間を、できるだけ増やしてやってください。
親子の触れ合いやおしゃべりの時間を、たっぷり取ってください。
おしゃべりも、とてもいいストレス解消になります。

このようにしていけば、ストレスを発散し心を開放することができます。
毎日安心して生活でき、生きる喜びを味わうことができます。
そういう生活をしていれば、自分を癒しながら成長していくことができます。
不安な気持ちは徐々に薄れていきます。

そして、成長するにつれ、自分の心との付き合い方も身に付いていきます。
私もそうでした。
だんだん自分に合ったストレス解消法を身に付けていきます。
自分の不安や心配の飼い馴らし方も学んでいきます。

こういう経験は、人間の心について考えるいい機会を与えてもくれます。
自分の心を見つめた経験は、必ず、他の人の心を思いやることにつながります。

さて、ここまで私の考えを書いてきましたが、冒頭で言いましたように私はこの分野の専門家ではありません。
専門家なら、もっと的確な診断やアドバイスが可能になるはずです。
遊戯療法やお絵描き・歌・ダンスなどの芸術療法といった治療法もあるようです。
ですから、一度専門家に相談してみることを強くおすすめします。

たとえば、小児神経科・小児精神科・精神科・心療内科・臨床心理士・保健所・児童相談所・教育相談所などです。
小児科でもいいかもしれません。

また、関係の本やインターネットである程度の知識を得るのもいいでしょう。
インターネットは、相談できる専門家を探すのにも役立つかもしれません。

お子さんは、毎日苦しんでいると思います。
それを考えると、早めに専門家に診てもらうのが一番いいと思います。
風邪をひいた時内科に行くのと同じです。
これも心の風邪のようなものです。
心の風邪は先ほどのような専門家に診てもらうのが一番です。

気軽な気持ちで行ってください。
私も、10代の終わりごろ、神経症で精神科に行ったことがあります。
精神科に行くには抵抗感がありましたが、ただの思い過ごしでした。
行ってみれば普通の病院でした。

今は、こういう心の病院はどこもけっこう混んでいます。
それだけ、ストレスの多い社会になったということもありますが、みんな気軽に行くようになったということでもあります。
ですから、ただひろさん親子も、気軽に行ってください。
行けば、必ず得るものがあるはずです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
ただひろさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。



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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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