声が小さいのが悩みです[教えて!親野先生]
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「声が小さい」のが悩みです。友達と遊ぶとき、家にいるときはかなりうるさいのですが、みんなの前に出たり、先生の前に出たりすると、ささやき声になってしまいます。本人は「恥ずかしいから」と言いますが、お店の人に「おいしいみかんをください」とか「この本はありますか?」などの声をかけることはまったく平気なようで、人見知りが激しいとか、重度な恥ずかしがりではないと思います。親としては、元気に挨拶して登園する子をうらやましく思ってしまいます。自分で自覚してる分、指摘すると嫌がるのでこのまま受け入れてあげるのか、やはり言って聞かせておかないと、いつまでも大きな声が出せないのかと悩んでます。小学校に入るまでには、何とか大きな声でと思っているのがプレッシャーなのでしょうか?幼稚園や体操教室の先生などには「二人のときはかなりしゃべりますが、みんながいると話さなくなりますね。自己主張ができるようになるといいですね」と言われます。もともとの気質なのか、これからの関わり方で変わるのか、どうかアドバイスお願いします。(花華さん)
【親野先生のアドバイス】
花華さん、拝読いたしました。
結論から言いますと、まったく心配はいりません。こういう子は、どのクラスにも一人か二人います。男の子でも女の子でもいます。でも、それで何か特別に困るということはありません。
また、かつての私の教え子で今は成人した子のなかにもいました。子どものころ声が小さかったからといって、今、何か困っているという人もいません。みんな、社会で立派にやっています。
以前、私の教え子たちが同級会を開いて、私を呼んでくれたことがありました。20代後半の彼らは、当然のことながら、小学生時代とは大きく変わっていました。そのなかに、当時は声がとても小さかった子がいました。でも、今はOLとして会社で楽しく働いているとのことでした。さて、ご相談のお子さんの場合を詳しくみていきたいと思います。
「友達と遊ぶとき、家にいるときはかなりうるさいのですが、みんなの前に出たり、先生の前に出たりすると、ささやき声になってしまいます」
みんなの前や先生の前で声が小さいといわれる子の多くは、家ではうるさいくらいの大きい声が出ます。でも、その子たちが友達と遊ぶときにも大きな声が出るとは限りません。つまり、家では大きい声だけれど、友達と遊んでいるときは小さい声しか出ないという子もかなりいるのです。ご相談のお子さんの場合は、友達と遊んでいるときにも大きな声が出るとのことですので、それはとてもいいことです。
「本人は『恥ずかしいから』とは言いますが、お店の人に『おいしいみかんください』とか、『この本はありますか』など声をかけることはまったく平気なようで、人見知りが激しいとか重度な恥ずかしがりではないと思います」
園児でこれができれば、まったく問題ありません。
「親としては元気に挨拶して登園する子をうらやましく思ってしまいます」
親は、何でも、自分の子にないものをほかの子に見つけると、うらやましく思うものです。元気に挨拶している子の親は、たとえば「挨拶だけはいいんだけれど、もっとやるべきことをちゃんとやってもらいたい」などと思っているかもしれません。
「自分で自覚してる分、指摘すると嫌がるのでこのまま受け入れてあげるのか、やはり言って聞かせておかないといつまでも大きな声が出せないのかと悩んでいます。小学校に入るまでには、何とか大きな声でと思っているのがプレッシャーなのでしょうか?」
あまりしつこく言うのはまったくの逆効果ですから、やめた方がいいでしょう。かえって自信をなくすのがおちです。
「もともとの気質なのか、これからの関わり方で変わるのか、どうかアドバイスお願いします」
このような場合、二つの理由が考えられます。恥ずかしいとか自信がないなどの精神的なものと、声帯が鍛えられていないという肉体的なものです。
私は、学校で、毎朝の健康観察のときに、この二つのものを同時に鍛えています。健康観察とは「大山太郎です。元気です」「水野洋子です。突き指をしています」のように、一人ずつ立って自分の健康状態を言っていくのです。
このとき、私は5点満点で点数をつけます。大きな声で言えたら5点です。もう少しという場合は、4点です。といっても私は甘いので、実際につけるのは4点と5点ばかりですが……。どんなに小さい声の子でも「4点。もう少しで5点」と言ってやります。
そして、小さい声の子がだんだんその子なりの大きな声になってきたら、5点をつけてやります。それでないと、小さい声の子がずっと4点のままでは、毎朝嫌な思いをしてしまうからです。これでは、まったくの逆効果です。始まって3回目くらいで1度は5点をつけてやります。
では、精神的なものと肉体的なものを鍛えるのに、家ではどのようなことができるでしょうか?
- 毎日明るく楽しく生活できるようにしてやってください。特に、家では、リラックスしておだやかな気持ちで生活させてやってください。心が解放されていることは、とても大切です。
- 声が小さいことを指摘するのはやめて、その子のいいところを見つけてほめてやってください。長所を伸ばして、自信を持たせてやることが大切です。
- 園や学校の先生たちに、声が小さいことをその子の「注目ポイント」にされないようにする必要があります。先生たちに、大目に見てもらうようにお話ししておくといいでしょう。なかには、この子の声を大きくしてやりたいと考えて、毎日「大きな声を出そうね」などと働きかける先生がいるかもしれませんから。善意からであっても、逆効果になることが多いので、気をつけた方がいいでしょう。
- 家の中で大きな声が出たときに、「大きな声でいいね。お母さんと大声競争しようか」などと言って、大きな声を出し合う。
- 学校に入ったら、宿題の音読(本読み)を、声帯を鍛える場にするといいでしょう。姿勢をよくして、自分にできるだけの大きな声で読むように言ってやってください。そして、声の大きさに点数をつけやるのもいいでしょう。ただし、逆効果にならないようにやることが大切です。先に書いた、私の例を参考にしてください。
- 以前、声に反応して動く、花のおもちゃがはやったことがあります。それを少し離れたところに置いて、大きな声を出して動かす練習をするのもおもしろいです。私も教室に置いてやったことがあります。今は、花ではなく動物などのものが出ているようです。
これらを参考に、その子とご家庭に合った、具体的な方法を工夫することをお勧めします。そして、気長に続けてください。成果が目に見えなくても、楽しみながら気長にやることが大切です。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。花華さん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。