「思考力・記述力」を付けておく 「模試」と「これからの受験生活」[高校受験]

今回は、模試と関連付けながら、これからの受験勉強の方向について、話を進めましょう。

■入試問題は「学習指導要領」の影響を受ける

 ずいぶん前ですが、「中学校では今年から新しい学習指導要領のもとで授業が行われている」というお話をしました。「今度の学習指導要領では、知識を活用する力、『思考力・判断力・表現力』が大変重視されている」ということも述べました。
 高校入試問題、特に公立高校の入試問題の作問は学習指導要領の影響を受けます。ですから、来年度の公立高校の入試問題はこれまでより「思考力・表現力」、とくに答案作成においては「記述力」が必要とされる問題が多くなることが予想されます。なかでも神奈川・茨城のように、入試を1回にするなど抜本的に見直す県では大きく変化する可能性があります。
 学習指導要領の改訂を受けて、今、公立中学校の現場では、「記述力」を付ける対策の一環なのでしょうか、頻繁に作文を書かせるようになっています。ですが、きちんとした「記述力」を付けるには学校任せでは不十分です。ぜひご家庭でも書く機会をつくってください。とくに方法を思い付かなければ、新聞記事の要約などがいいかもしれません。
 具体的には、朝日新聞なら「天声人語」、読売新聞なら「編集手帳」、毎日新聞なら「余禄」などのコラム欄の文章を読ませ、筆者がこの記事で言わんとしていることは何かを、200字程度でまとめさせるといった練習です。いきなり毎日では続かないでしょうから、最初は1週間に1回、慣れてきたら2回、3回でもいいでしょう。
 こうした練習で、単に思考力・記述力を付けるだけでなく、大人の文章を読む、知らない漢字・語句を辞書で調べる、といった地味な作業を繰り返すうちにお子さまの国語力は格段に向上するはずです。
 この時、できれば保護者のかたも参加しましょう。記事が国内・海外の話題を取り上げていたら、それについて保護者のかたが自分の意見・感想を述べるのです。意見・感想が難しければ、事実関係の確認でもかまいません。ひとしきりこれらを話題に会話してください。それがお子さまの社会への関心を広げることにもなります。

■新聞の図・表こそ対策に有効

 新聞にはいろいろな図・表が掲載されています。これが実は格好の材料なのです。入試問題で増えると予想されるのは、実は自由作文ではありません。提示された図・表から事実関係を読み取り、それをもとに自分で考えたこと、自分の意見を記述する……そうした問題が多くなると考えられます。
 1日に1つでいいですから、その日の新聞記事の中から図・表を選び、その図・表を見て気が付いたことを親子で出し合うのです。それが正しい読み取りか意見を交わす。もっと発見できることはないか、親子で競い合えば、けっこう楽しく勉強できます。
 模試の成績表を見て叱咤(しった)激励するだけでなく、新聞を題材に一緒に学び合うということもしてみてください。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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