赤ちゃん返りとは?対応方法や主な行動を医師が解説

  • 育児・子育て

赤ちゃん返りは、保護者のかたにとって大変なものです。ただ、子ども自身にも何か大変なことがあるのだということを、忘れてはいけません。赤ちゃん返りは、まだうまくおしゃべりができない子どもたちの精一杯の表現方法。その行動の裏にある気持ちを理解してあげれば、親子ともに不安が解消されて、絆が深まるはずです。

この記事のポイント

そもそも赤ちゃん返りとは

赤ちゃん返りとは、ある程度成長した子どもが、弟や妹が生まれたことなどをきっかけに赤ちゃんのような態度を取ることです。妊娠が分かってすぐに赤ちゃん返りが始まることもあれば、下の子どもが大きくなってから急に始まることもあります。

ただ勘違いしてはいけないのは、「赤ちゃん返りは悪いことではない」ということ。ママやパパを困らせようと思っているわけでもなければ、保護者のかたの愛情が足りないわけでもありません。子どもたちが、「何もできなくても自分は愛されている」という自己肯定感を得るために、必要な行動なのです。

子どもが赤ちゃん返りをする理由

大人にとっては「このままで大丈夫?」と不安を感じる赤ちゃん返り。しかし、子どもにとって理由があるとわかれば、考え方が変わってくるはずです。

それでは、赤ちゃん返りをする主な理由を見てみましょう。

環境が変わって戸惑いを感じている

子どもは、周囲の変化に敏感です。それが、赤ちゃん返りの原因になることがあります。特にきょうだいが生まれるというのは、子どもにとって非常に大きな出来事。長男・長女の場合、生まれてからずっと両親を独占するのが普通だったはずです。ところが、弟や妹が生まれると、関わってもらえる時間が減ってしまいます。周囲が「お兄ちゃんやお姉ちゃんになるんだから」と言い始め、急にかまってもらえなくなることもあるでしょう。

大人からすれば、何でもないことかもしれません。しかし子どもは、急に周囲が変わってしまったように感じて不安になっています。その結果、ママやパパを独占しようとする行動に出るのです。

自分への愛情を確かめたい

親の愛情を確認したいときも赤ちゃん返りをします。赤ちゃんのお世話には、手がかかりますよね。上の子どもに今までと同じように時間をかけることはできません。すると上の子どもは、ママやパパからの愛情がなくなったのではないかと不安になるのです。

忙しいときに限って、わがままを言ったりべったりしてきたりするのはこのため。不安を感じているその瞬間に、子どもは愛情を確認したいのです。

ママ・パパの気を引きたい

両親の気を引きたいという気持ちから、赤ちゃん返りをする子どももいます。ママやパパが下の子どものお世話をしていると、上の子どもは自分が放っておかれているように感じます。そこで、自分に目を向けてもらいたくて親の気を引く行動に出るのです。

下の子どものお世話をしているときに限って、上の子どもがわがままを言うように感じる場合も多いはず。「自分に注目して欲しい」と考えて行動しているため、このタイミングになるのが自然なのです。

不安な気持ちを表現している

下の子どもが生まれると、環境が大きく変化します。ママやパパが自分に関わってくれる時間も減ってしまうため、上の子どもは不安な気持ちでいっぱいになってしまうのです。

その不安な気持ちは、「親から離れられない」「夜泣きをする」などの行動になって表れることもあります。不安な気持ちが解消されないまま無理に親から離そうとすると、ますます赤ちゃん返りが増える可能性もあるのです。

「もしかしてこれも?」赤ちゃん返りの主な行動

赤ちゃん返りの主な行動がわかれば、対処しやすくなります。「もしかして?」と思っているかたは、参考にしてみてください。

わがままが増える

赤ちゃん返りの代表的な行動として、「わがままを言うようになる」というものがあります。これまでは聞き分けが良かった子どもが、突然わがままを言い始めるということも珍しくありません。

あれこれ要求したり、「聞いて聞いて!」と主張したり、大人の話を遮って注目を集めようとしたり……。「なんだか最近わがまま?」と思ったら、それは赤ちゃん返りかもしれません。

甘えたがる

赤ちゃん返りをしている子どもは、甘えることで不安な気持ちを表現する場合もあります。「いつも親にくっついて離れない」「抱っこをせがむ」「どこに行くにも付いてきて欲しがる」「幼稚園に行きたがらない」などは、甘えている行動といえるでしょう。

親としては「甘えてばかりで大丈夫だろうか」と心配になり、無理に離そうとすることもあるでしょう。しかし、それは逆効果。不安が増してしまい、余計に甘えたがる可能性があります。

反抗的になる

赤ちゃん返りをしていると、反抗的になる子どももいます。着替えるように言っても着替えなかったり、注意されたら言い返してきたり、用事をしていると邪魔をしてきたり……。「素直じゃない」という行動も多く見られるでしょう。

また、直接反抗するのではなく、「態度」で表現することもあります。「好きなものしか食べない」「物に八つ当たりする」など、やってはいけないとわかっていることをあえてするのも、赤ちゃん返りの1つです。

今までできていたことができなくなる

今までできていたことができなくなるのも、赤ちゃん返りの行動の一つです。「自分で着替えていたのに手伝わないとできなくなった」「1人でトイレに行けていたのに行けなくなった」などは、よく見られる行動。手伝ってもらうことで、ママやパパに甘えようとしているのです。

また、夜泣きが始まったり、おねしょをするようになったりすることもあります。子どもの意思とは直接関係のない部分でも、できていたことができなくなる場合があるのです。

寝かしつけに時間がかかる

赤ちゃん返りをしている間は、寝かしつけるのに時間がかかることがあります。不安な気持ちで眠れない場合や、下の子どもに焼きもちをやいて寝ようとしない場合など、状況はさまざまです。

やっと寝ても、下の子どもに授乳をするときに起きてしまい、また寝なくなるということもあります。夜泣きやおねしょなど、睡眠に関して悩む保護者のかたが多いのも、赤ちゃん返りの特徴です。

暴力的になる

赤ちゃん返りの行動の一つとして、暴力的になるということもあります。ママやパパを叩いたり引っかいたりする場合もあれば、おもちゃを投げるなどの行動に出る場合もあるでしょう。

また、下の子どもに対して暴力的になるケースも珍しくありません。下の子どものお世話を邪魔したり、叩いたりつねったりすることもあります。下の子どもに対する嫉妬の気持ち、意地悪をすることで自分の方を見てもらいたいという気持ちが、こういった行動に表れるのです。

赤ちゃん返りをしたときの上手な対応方法

赤ちゃん返りは悪いことではありませんが、対応を間違えるとますます上の子どもを不安にさせてしまう可能性があります。赤ちゃん返りをしているときは、上の子どもを安心させてあげることが大切。では具体的にどうすれば良いのでしょうか。

スキンシップを意識して増やす

上の子どもが愛情を感じられるように、しっかり愛情表現をしましょう。スキンシップを多くしたり言葉かけをたくさんしたりするだけで、不安な気持ちは減っていくはずです。スキンシップには、愛情ホルモンや幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」を分泌させる効果もあります。

赤ちゃん返りは、上の子どもが「何もできなくても自分は愛されている」と感じるために必要なものともいわれています。愛情を持つだけでなく、それをきちんと伝えることで、子どもの気持ちを安心させてあげましょう。

子どもの気持ちを受け止める

赤ちゃん返りをしているときは、できるだけ要求を受け入れてあげましょう。甘えてばかりいる子どもを見ると、「このままで大丈夫?」と心配になるかたもいるでしょう。ただ、今までできていたのですから心配いりません。気持ちが落ち着けば、また今までのようにできることが増えてきます。

ただし、要求を聞き入れるというのは、わがままをすべて叶えてあげるということではありません。。無理なことやしてはいけないことは、きちんと伝えていきましょう。この場合も、「これがしたいんだね」「これが嫌なんだね」というように、気持ちは受け止めてあげてください。

叱りすぎない

赤ちゃん返りをしているときは、なるべく叱らずに済む対応を探してみましょう。忙しいときに要求をされると、イライラして叱りたくなることもあるかもしれません。しかし、赤ちゃん返りには不安や愛情確認の意味があるため、叱るのは逆効果です。

もちろん、つい叱ってしまうこともあります。その場合は、後からでもよいのできちんと謝って抱きしめてあげましょう。危険なときなどは、しっかり止めることも必要ですが、その際も大きな声ではなく静かに言い聞かせることを心がけてみてください。その方が効果的です。

親も気分転換をする

赤ちゃん返りが悪いことではないとわかっていても、ストレスは溜まるもの。ですから、子どもだけでなく、親も上手に不安やイライラを解消していきましょう。ストレスが溜まると余裕がなくなって、子どもと落ち着いて接することもできません。

子育てをしながらだと難しい部分もありますが、そのなかでも少しずつ気分転換の時間を作っていくと良いですね。「テレビを観る」「音楽を聴く」「本を読む」など、短時間でもできそうなことを見つけてみましょう。家族や子育てサポートなどを頼って、1人の時間も作ってみてください。

周りに助けを求める

自分ではどうにもできないと思ったときは、助けを求めましょう。下の子どもが小さいうちは、夜間の授乳やお世話で寝不足なはず。そんななかで上の子どもにも対応しようと思うと、親が追い詰められてしまう場合もあります。

両親で交代して出かけたり、祖父母に子どもを預けたり、自治体の子育て支援を利用したりして、子育てをお休みする時間をつくりましょう。保育園の一時預かりは、買い物・リフレッシュ目的など、理由を問わずに預かってもらえることも多いです。それらの制度も上手に活用しましょう。

子どもに感謝の気持ちを伝える

上の子どもに感謝の気持ちを伝えるのも効果的です。お手伝いをしてくれたときなどには「ありがとう」と言葉にしてあげましょう。どんなに小さなことでもOK。下の子どもをお世話する間待ってくれていたときなども、お礼を言ってあげてください。

感謝をされると子どもは、自分が認められていると感じられます。「自分のことも見てくれている」と、愛情を確認することもできるでしょう。不安な気持ちも徐々に軽減されるはずです。ぜひ、たくさんの「ありがとう」を伝えてあげてください。

励ますよりも褒める

感謝の気持ちを伝えるのと合わせて、少し大げさなくらい褒めることも大切です。褒められて嬉しくない人はいません。褒めることを通して、「自分が認められている」「自分のことを見てくれている」とも感じられるはずです。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんになってほしい」という思いで、子どもを励ますことも多いかもしれません。しかし、不安を抱えながら成長しようとしている上の子どもは、もう十分がんばっていますよね。ですから、「がんばって」ではなく「がんばってるね」と言ってあげてください。保育園に行った、自分で着替えた、ご飯を食べたなど、当たり前の行動を認めてもらえれば、子どももきっと安心できるはずです。

ハードルを下げてあげる

「お兄ちゃん・お姉ちゃんだから」「もう〇歳だから」と、ハードルを上げてはいませんか? それをちょっと下げてみましょう。実際の年齢よりも少し幼いと思って対応してあげると、親もストレスが溜まりにくいはずです。

早く年相応の言動をしてほしいと思って焦ると、余計に子どもを不安にさせてしまう可能性もあります。まだ生まれてたった数年の子どもです。「まだまだ甘えさせてあげよう」という気持ちで、ゆっくり関わってあげましょう。

2人きりの時間を作る

上の子どもと親が2人きりで過ごせる時間を作ることも大切です。下の子どもがいる場合、どうしても年齢が低い子どもの方に手がかかってしまいます。上の子どもとしては、自分に注目が向かない時間が長いため、不満に思うこともあるはず。なるべく意識して、上の子どもとの時間を増やしてあげましょう。

祖父母やパートナーと協力して、下の子どもを見てもらう時間を作ってみてください。そして、上の子どもと2人きりで過ごしてみましょう。時間が取れない場合は、寝る前の10分でも、朝の5分でもOK。短時間でも自分だけに目が向くことで、上の子どもが満足できるようになります。

お手伝いをお願いする

お手伝いはどんどんお願いしてみましょう。お手伝いをして褒められたり感謝されたりすると、子どもは「自分が認められている」と感じられます。

下の子どものお世話を手伝ってもらうのも良い方法です。おむつを持ってくる、服を片付けてもらうなど、簡単なものでOK。手伝ってくれたら、いっぱい褒めてあげましょう。弟や妹のお世話ができたという気持ちも感じられ、自信もつくはずです。

赤ちゃん返りはいつまで続く?ないこともあるの?

赤ちゃん返りの期間は、平均すると5.3ヶ月という調査結果があります。年齢でいうと、2~3歳の子どもに多く見られるそう。ただ、これはあくまで平均です。1ヶ月以内に終わった例もあれば、1年以上続いた例もあります。赤ちゃん返りがいつまで続くかは、子どもによって大きく異なるものなのです。

また、終わったと思ったら復活したり、わかりにくい状態で続いていたりすることもあります。保護者のかたの捉え方によっても違うでしょう。はっきり「終わり」を決めるのは難しいと考えてください。

なかには「赤ちゃん返りがない」というケースもあります。ただ、これも人によって異なるもの。保護者のかたが「ない」と思っているだけで、実は赤ちゃん返りをしている場合もあります。「赤ちゃん返り」という言葉で区別するのではなく、子どもの様子を見ながらその都度しっかりと向き合っていくことが、大事なのかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

赤ちゃん返りは、悪いことではありません。不安を解消したり愛情を確認したりするための、表現方法の一つです。「大好きだよ」という気持ちをしっかり伝えたり、気持ちを受け入れたりしていけば、いずれ落ち着きます。赤ちゃん返りについての理解を深め、対処法を考えながら、親子で一緒に成長していきましょう。

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プロフィール



子どもの心身の成長に向き合う現場を20年以上経験するドクター。経験に加え、日本小児科学会専門医・指導医、日本小児神経学会専門医・指導医、日本てんかん学会専門医・指導医、と数多くの認定資格を所持し、日々、てんかんや熱性けいれんなどのけいれん性疾患、頭痛、発達の遅れ、脳性麻痺など、主に神経疾患のお子さんの診察を行う。東京医科大学主任教授としても、次世代の医師の育成に力を入れている。

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