学校での成績はよいが、塾や模試などでの成績が上がらない[中学受験合格言コラム]

学校での成績はよいが、塾や模試などでの成績が上がらない

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

小5女子(性格:大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま


質問

語彙(ごい)力がありません。本は読んでいますが、読み終わるのが速く、理解できていないところは想像で話をつなげているようです。記憶力はよいのですが、意味を考えて覚えたり、イメージで覚えたりするのではなく、丸覚えするタイプです。漢字も、意味を考えると書けそうな文字でも音で考えるので、先生には「ユニークな漢字を書く」と苦笑されました。語彙や漢字などはドリルで覚えていくしかないのでしょうか? 学校での成績はよいのですが、塾や模試などでの成績が上がりません。


小泉先生のアドバイス

「なぜ」を考えることで、論理的思考力を身に付ける。

物事を論理的にとらえるのではなく、大ざっぱに感覚的に処理してしまう性格に原因があるようです。たとえば、「理解できないところ」を「想像で話をつなげている」のはよいのですが、その想像が適切かどうか確かめないと単なる思い込みになります。また、“丸覚え”は短期の記憶には耐えますが、長期の記憶になると忘れることが多くなります。漢字をドリルで勉強しても、意味を考えたり、関連付けて覚えたりしないとすぐに忘れてしまうでしょう。さらに、学校での内容は丸覚えや感覚で対処できているかもしれませんが、5年生の受験レベルになると対応できなくなってきます。論理的に考えなければ解けない問題が多くなり、6年生になるとその傾向はますます強くなるでしょう。このように、5年生以降の学習では、論理的思考力は必要不可欠なものであり、ぜひとも身に付けたいものです。

「論理的思考力」を身に付けるためには、常に「なぜ」を考えることです。漢字を覚える場合も、「なぜ」を考えれば、「へん」や「つくり」の重要性に気が付くと思います。あるいは、国語の選択肢問題で誤ったものを選んだ時、たとえば、選択肢アではなくてなぜ選択肢イが正しいのかを考えてみることです。選択した答えの正解・不正解も重要ですが、本文を根拠に説明できるかどうかがそれ以上に大切です。なぜなら、根拠が説明できないと、いつまでたっても正答率が高めに安定しないからです。「感覚」や「直感」でとらえる子どもは、自分で選んだ選択肢がなぜ正しいのかを適切に説明できません。説明しようとしますが、最後には「なんとなく」になってしまうのです。

しかし、このように「直感」で選んだ子どもでもデタラメに選んでいるわけではなく、そこには何らかの「根拠」があったはずです。その「根拠」が何なのかを自分では説明できない、あるいは精密に考えていないところが、論理的に考える子どもとの差なのではないでしょうか。つまり、考え方の「質」の違いというよりも「量」の違い、思考の“きめの細かさ”の違いのように思えます。そこを教えてあげればよいのですが、「論理的に考えろ」とか「もっと緻密(ちみつ)に考えろ」と言っても、本人には伝わらない場合が少なくありません。なぜなら、本人は自分なりに考えているからです。よく考えろと言われても、「よく考えているよ!」と言わざるを得ないでしょう。ここで大切なことは、思考のきめの細かさを、どのレベルまで細かくしなければならないかを具体的に示すことです。

そのためには、たとえば、紛らわしい選択肢問題を解かせ、なぜそれが正しいのかを詳しく説明させます。恐らく、説明できずに行き詰まってしまうでしょうから、そうしたら本文を根拠にして説明してあげましょう。適切に示すことで、本人の説明と示した説明を比べさせ、“ここまで細かく考えなくては難しい受験問題は解けない!”ということを納得させるのです。解答・解説がしっかりしている問題集を使えば、ご家庭でも指導できると思います。

論理的に考える子どももいれば、直感で考える子どももいます。それぞれの特徴をわかったうえで、必要な力があれば、練習により習得させましょう。論理的思考力も練習で身に付く力ですが、本番の試験までに残された時間という制限もありますから、早めに取りかかることが大切だと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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