再び学校選びの観点について 宗教立別ーその4[中学受験合格言コラム]

ところで新興宗教の多くが「法華経」を根本経典とする日蓮宗系から輩出している、と梅原猛氏の『日本の霊性』(新潮文庫、2007年)にあって、たとえば、その一つの立正佼成会(佼成学園中学高等学校、佼成学園女子中学高等学校の母体)を創立した庭野日敬氏の功績を二つ挙げれば……と梅原氏が言うには、「一つは現実生活に仏教的な知恵を生かすというわかりやすい教義を打ち立てたことであると。例えば(中略)天台教学の根本的世界観である『一念三千』が日敬氏の手にかかると、『自分が変われば相手が変わる』というごく日常的な倫理に変化してしまうのである。」(同書237頁)と言われている。なお、二大功績のもう一方は、「世界宗教者平和会議」を企画実現した中心の一人であること。

この「自分が変われば相手が変わる」などというのは、梅原氏は「日常的な倫理」とされているが、むしろ今流行のコーチングの基本スキル、と言ったほうがピタリとくるかもしれない。仏教に浅い知識しかない筆者にとって「一念三千」と言われてもピンとこないが、「自分が変われば相手が変わる」などという考え方はなじみ深く、生きるうえでの大変有効な知恵だということはよく了解できる。
何しろ子育てのアドバイスのキーワードのようなもので、「親が子どもを変えようとしてもなかなか難しいものだから、そうではなくて自分を変えなさい。自分は自分で変えられるのだから難しいことはないよ」などとアドバイスをする。逆も真なりで、思春期で親を疎ましく思っていた子どもがいるとすれば、「親の良くないところ、嫌なところを変えたいと思っても変わらない。自分を変えればよい」という方向にコーチングするこのアドバイスは有効だろう。

ところで、梅原氏の先の著書には、良寛が曹洞宗の僧であったこと、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』は良寛がそうであったように常不軽菩薩(法華経出自)の徳を慕って書かれたものであること、といった指摘がある。
ということは、この子どもの心を捉えて離さない不世出の芸術家たちのバックボーンには、共通して仏教の土壌があったことになる。

およそ私立中学校・高校で学ぶ良さは、中高一貫、男女別学、宗教教育の3点とされてきたが、とりわけ最後の宗教教育はこのように奥が深いのである。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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