「みんな仲良く」と言わないで! 子どもに伝えたい嫌いな相手との付き合い方
- 育児・子育て
学校生活や習い事などで目標として掲げられることの多い「みんな仲良く」。
保護者としても、お子さまにいろいろな人と仲良くしてほしいと願うもの。ですが、実際はとても難しいことです。
もしお子さまが「あの子のことが嫌い」と打ち明けたら、保護者のかたはどのようにアドバイスすればよいのでしょうか。嫌いだと感じる相手とはどのように付き合っていけばいいのか、トラストコーチングスクール認定コーチで、3人の子どもの母でもある中原絵里子が一緒に考えたいと思います。
なぜ「嫌い」だと感じるのか、背景を知る
お子さまが、だれかを「嫌い」だと感じる理由はさまざまです。そう感じてしまうきっかけになるような出来事があったのか、なぜ「嫌い」だと感じるのか、まずは落ち着いて話を聞いてみるのがおすすめです。
「嫌い」という感情は複雑なもの。いやがらせをしてくる、暴力をふるう、嫌がることをわざわざ言ってくるなど、自分や友達など大切な相手に対する攻撃的な言動に対して「嫌だ」と感じている場合もあれば、性格や価値観の違いに対してそう感じている場合もあります。
よく似た言葉に「苦手」がありますが、「嫌い」はもっと感情的で、主観的なもの。理屈ではないだけに言葉にすることは難しいかもしれませんが、なぜ「嫌い」なのか、何が「嫌」なのか、お子さま自身にじっくり考えてもらうといいですね。
たとえば「わがままだから」という理由だとしたら、どういうふるまいや言葉をわがままだと感じるのかなど、自身の価値観に気付くことができます。また、もしかしたら相手の外見や成績など、自分にはないものを「うらやましい」と感じて、その気持ちを「嫌い」という言葉で表現しているのかもしれません。何に悩んでいるのか、一度とことん向き合ってみることで、自分を知ることにもつながります。
頭ごなしに「嫌いなんて言っちゃだめ」と否定するのではなく、「どうしてそう感じるの?」とフラットに話を聞いてみることで、お子さまの意外な一面に出会えるかもしれません。
気を付けたいのは、自分の価値観を「正解」として相手に押し付けないこと。これは保護者の方もお子さまも注意したいポイントです。
たとえばお子さまが習い事の道具で忘れ物をして、友達に「貸して」と頼んだけれど断られてしまった、という出来事があったとします。ここで相手の事情や気持ちを知らないまま、「ちょっとぐらい貸してくれればいいのに」と保護者のかたが憤慨してしまったり、「そんな子とは仲良くしなくていい」と決めつけたりすることは避けるべきです。
また、お子さまから「普通は貸してくれるものでしょ」といった言葉が出てきた場合は、みんなそれぞれの価値観をもっていることを伝えてあげてください。
嫌いな相手とうまく付き合うための基本的な姿勢
嫌いだと感じる理由にもよりますが、嫌いな相手を無理に好きになる必要はありません。暴力をふるわれる、いやがらせをされるなど攻撃的な言動があるなら、まず自分を守ること、そのために必要なサポートを得ることが最優先です。
「性格が合わない」など価値観の違いからくるものであれば、まずは可能な範囲で距離を取ること。物理的に距離を取ることが難しくても、「嫌い」という感情からなるべく離れるために、「あなたはそう思うんだね」と心の中でつぶやくなど、客観的にとらえてみるといいですね。
いくら嫌いだと感じるからといって、相手の人格や存在を否定してしまう言動はしないよう気を付けたいもの。相手に「嫌いだ」と伝えてしまったら、相手を傷付けることになってしまいます。嫌いであっても、お互いを尊重することができると理想的です。
嫌いな相手との付き合いがもたらす成長
嫌いな相手と関わることで、学びや経験を得られる場合もあります。
社会に出れば、嫌いな相手と関わらざるを得ない場面も多くなります。相手を否定するのではなく、「自分とは違うだけ」と考えてみるなど、とらえ方を変えることでネガティブな感情を少しでもコントロールできるようになると、人間関係のトラブルに巻き込まれにくくなります。
トラブルにならない関わり方を見つけることができれば、これから先ぐっと生きやすくなるはず。さりげなく距離を取ったり、相手との違いを受け止めたりするための練習だと思って、向き合ってみることをおすすめします。
具体的な付き合い方のコツ
ではクラスやチームなどに嫌いな相手がいる場合、具体的にどのような付き合い方をすればいいのでしょうか。
私の場合は、とにかく「あなたはそう思うんだね」「あなたはそうなんだね」と心の中で無理やりでも一度受け止めたうえで、相手はなぜそう思うのか、そんな態度を取るのか想像してみるようにしています。
たとえば子どもが「自慢話ばかりして見下すような態度を取ってくるクラスメイトのことが嫌いだ」と感じているとしたら、「なかなか親にほめてもらえないのかもしれない」「年の離れたきょうだいがいて、下に見られることが多いからかな」など、想像力を働かせて相手が「ついそうしてしまう」理由を考えます。
正解かどうかを確かめる必要はありません。ただ、相手にもなんらかの「事情」があるのかもしれない、という視点を持つことができれば、少なくとも相手の存在や人格そのものを否定することは避けられますし、冷静になれます。
そのうえで、子どもにも相手の「事情」を考えてみるように促します。そうやって別の角度から相手のことを考えていくうちに、子ども自身も冷静になり、うまく受け流せるようです。
「嫌い」は感情的なものなので、その感情のまま相手に接すると攻撃的になるなど、トラブルになりかねません。嫌いだとしても、同じクラスやチームなら共同作業が必要な場面もあります。そういう時に「嫌い」という感情から一度離れ、必要な協力をすることができれば、お子さまの自信にもなるでしょう。
まとめ & 実践 TIPS
「嫌い」だと感じてしまう相手がいることは、仕方がないこと。大切なのはその気持ちにどう関わるかです。「嫌いだから関わりたくない」なのか、「嫌いだけれどできる限り仲良くしたい」なのかによっても、その後のコミュニケーションも変わってきます。嫌いな相手との関わりを通じて、人として成長できる機会になればいいですね。
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