「人間力」で学力を向上させて志望大学に合格! ある学校の興味深い取り組みとは?
多くの業界で使われる「人間力」という言葉。その定義は業界ごとに異なり、さらには時代の流れとともに内容も大きく変化する。文部科学省の定義では、学力を含む人間性や社会で活躍するための能力も含むが、経済産業省では、行動力・思考力・協調性の社会人基礎力を「人間力」と定義している。中学受験の専門家である森上教育研究所の森上展安氏が、「人間力」と「学力」との関係について考察する。
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ここでは「社会人基礎力と人間性」を人間力と定義し、学力との関係を述べてみます。まず、中学受験をする小学生と大学受験をする高校生、学力を付けるために必要な人間力は同じではないかと思います。小学生でも高校生でも「勉強が大好き」という生徒は少なく、大多数は嫌いな勉強でも、志望校に合格するためにと、努力しているはずです。向上心・探究心・行動力・思考力などの人間力がなければ努力は続きません。そもそも、学力は持って生まれた才能だけではなく、大部分は努力によって身に付くもの。人間力を向上させることで、努力できるように教育すれば、学力は無理なく向上できるはずです。
神奈川県のある私立女子中高一貫校では、人間力で学力を向上させることに取り組んでいます。学校行事を使って人間力の指導を行い、年に2回、「生活面」「人間性」「能力面」の観点から自己評価をさせて、自覚を促します。大学受験を生徒にとっての最後の締めくくりとなる行事と考え、人間力で学力を向上させて志望大学に合格させようとする狙いがあります。
この学校では、「実行力がある人が最終的には目標を達成できる」ことを、行事の中で認識させることから始めます。「実行力を身に付けたい」と自発的に考え、成功体験を積み、最終的には実行力を身に付けるのです。人間力の成功体験がある生徒は、努力を惜しまなくなるようで、注目したい指導法です。