三角形の内角の和や公式等、暗記するのが苦手です[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3男子(性格:大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま


質問

初めて取り組む問題も、時間をかければできるようになるのですが、時間がたつと忘れるようです。三角形の内角の和や公式等、暗記するのが苦手です。国語と同じように、まちがえた問題を正解になるまでくり返し解かせています。応用に弱いのですが、数字を変えただけの問題なのに解き方も忘れてしまいます。また、ひと通り、一緒に問題を解いていくのですが、「じゃあ、今度は一人で解いてみて」と解かせると、できません。それで、また、一から説明をしながら一緒に解いていきます。


小泉先生のアドバイス

「なぜを考える」と「幹をつくり枝葉を付ける」の2つの原則を守る。

国語の漢字にしても算数の公式にしても、たちまち暗記してしまう子どももいれば、くり返し覚えなければなかなか記憶が定着しない子どももいます。その子の資質とはいえ、すばらしい記憶力の持ち主は、本当にうらやましいと思います。せめて、よりよい暗記法を実践して、少しでも学習の効率をアップさせましょう。とはいっても、それほど難しいことではありません。「なぜを考える」「幹をつくり枝葉を付ける」の2つの原則を守ればよいだけです。

まず、「なぜを考える」ですが、何かを覚える場合「なぜそうなるのか」を実感することはとても大切です。理由を知ることで覚えやすくなりますし、忘れることも少なくなります。たとえば、ご質問に「三角形の内角の和」を暗記するのが苦手とありましたが、それは「内角の和=180°」と丸暗記するからです。なぜ180°になるかが理解できれば、あるいは実感できれば、決して忘れることはありません。

たとえば、下図は三角形のそれぞれの角を集めたものです。集めると直線ができますから、すなわち「内角の和は180°」ということが視覚的に理解できます。時間があれば、いろいろな三角形を紙で作って、実際にちぎって、それぞれの角を集める作業をお子さまにやらせてみてください。手を動かすという作業は、非常に印象に残りますし、すべての三角形の角が本当に直線になることを実感するとちょっと感動すると思います。



さて、このようにして1つ基本的なことが理解できると、その分野における「しっかりとした幹」ができます。あとはその幹に関係付けて、枝葉を付けるように覚えると非常に覚えやすいし忘れにくいものです。たとえば下の図は七角形ですが、このようなN角形の内角の和を求める公式は「180°×(N‐2)」です。計算すると、180°×(7‐2)=900°になりますが、公式を暗記してもすぐに忘れてしまうでしょう。



そこで、幹である「三角形の内角の和=180°」に関連付けます。すなわち、七角形を下図のように三角形に分けると、七角形は5つの三角形に分けられることがわかります。すると、180°×5=900°がすぐに出てきます。そして、八角形の場合や九角形の場合を考えれば、N角形の内角の和を求める公式もその場で求めることができます。つまり、忘れてしまっても原理原則から公式が導き出せるのですから、何も心配はいりません。こうなると かえって忘れないものです。



あるいは、下図のような三角形の外角と内角の関係もすぐ理解できるでしょう。つまり、三角形の内角の和(ア+イ+エ)は180°であり、(エ+ウ)も直線だから180°になります。ということで、三角形の内角の和と外角の和の関係は、ア+イ=ウとなることがわかります。このように、覚えればそうそう忘れることはないと思います。



さて、以上の「なぜを考える」と「しっかりした幹を作る」は公式を覚える時だけではありません。ご質問の中で、「数字を変えただけの問題なのに解き方も忘れてしまいます」とありましたが、その原因は、解き方を単に暗記しているだけだからだと思います。つまり、「なぜそうしなければいけないのだろう」ということを理解していないからです。たとえば、先ほどの七角形の内角の和を求める問題でしたら、「三角形を作るため」に補助線をひいたのです。この「なぜ」を理解していないと、適当に補助線をひいて、下の図のような補助線を引いてしまうかもしれません。これでは、答えに到達することは難しいでしょう。



「なぜ」を常に意識し、「幹」をつくって「枝葉」を付けていくという作業は、算数ばかりでなく、他の教科でもまったく同じように活用できます。また、問題を一緒に解く時も、「なぜそうするのか」を大切にすると、解き方を忘れることが少なくなると思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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