図をきちんと見ないで自分の思い込みで解いている[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4女子(性格:大ざっぱ、強気なタイプ)のお母さま


質問

まだ平面図形しか出ていないのですが、かなり苦手です。くり返し解くことによってだいぶましにはなったのですが、図をきちんと見ないで、自分の思い込みで解いている気がします。たとえば「円の中に点があれば、半分のところになくても、半分に割れる……」と考えてしまいます。


小泉先生のアドバイス

推測に続けて「根拠」も考えるように促す。

性格的に大ざっぱな子どもや、強気な子どもにこのようなタイプが多いようです。要するに、思い込みが激しいタイプといえるでしょう。私の出会った子どもの中には、平面図形の問題を解く時に、「角Aは45度(くらい)だから、三角形ABCは直角二等辺三角形になり……」とやってしまう子どもがいました。何の根拠もないのに、角Aを45度と決め込んでしまうのです。
そこで「何で45度なの?」と尋ねると、「そのくらいに見える」という答えが返ってきます。これでは正解を得ることはなかなか難しいでしょう。実際、算数は苦手な子どもでした。角Aが45度だというのなら、「これこれこうだから」という“根拠”が必要であり、それが算数や数学の考え方です。ただやみくもに当て推量で考えても、正しい答えにはまず到達しないということを、子どもに説明する必要があります。

ただし、このような当て推量が、すべて無意味ではないことも付け加えておく必要はあります。なぜなら、「45度くらいかな?」とか「45度ならうまいのだがなあ」という推測は必要だからです。このような感覚は、算数や数学でも大切な感覚である「ひらめき」あるいはそれに類するものでしょう。それでは「やみくもな当て推量」と「大切な感覚であるひらめき」とはどこが違うのでしょうか。大きな違いは、そのもの自体よりも、その後の行動です。すなわち、その「ひらめき」を現実の事象とするような根拠を示せるかどうかということです。お子さまに説明する場合も、「そんな適当に考えていてはダメ!」と否定してしまうのではなく、「そうね。角Aが45度なら解けそうね。でも、45度である理由はある? なければ45度とは決められないよ」と、推測に続けて「根拠」も考えるように促すとよいでしょう。

あるいは、次のような説明がよいかもしれません。



物事を考える時には、2通りの方法があります。1つは、現時点からさまざまな条件をつなぎ合わせて結果としてAという事象に到達する方法です。もう1つは、Aという事象を最初に思い付き、それを実現するために現時点とAを結ぶ道をあとでつなぐ方法です。前者は積み上げ型、後者は発想型といえるでしょう。あるいは、前者は努力型、後者は天才型といってもよいでしょうか。もちろん、実際に考える時はどちらか一方ということではなく、この2つの方法の中間的なやり方で考える場合もあるでしょう。そして、お子さまの場合は後者の発想型の思考方法です。ただし残念ながら、発想してもそれを現実の事象とするための努力がなされていません。それでは、単に発想しただけで事象Aを事実として受け入れることはできないのです。これは算数や数学ばかりでなく、現実の生活の場でもいえることです。「ああなればいいな」と思うばかりでなく、それを現実のものにする方法を考え、実際に努力しなければ評価すべきではないのと同じです。

さて、2通りの説明をしてきましたが、お子さまのようにまだ中学年の場合、「根拠を持ちなさい」と言ってもなかなか納得しない可能性があります。そんな時は今回使ったような図を用いて、「あなたの考え方はよいけれども、この部分が足りない」と目で見える形で示すと納得が早いかもしれませんね。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

子育て・教育Q&A