ロンドンでの日々~夫の海外転勤と娘とわたし【第15回】学校への保護者のかかわり方

この連載では、ある共働き家庭の海外転勤前後の様子を具体的にご紹介します。前回はロンドンの学校や教育についての内容でした。今回は、保護者の学校へのかかわり方についてお伝えします。



夫の仕事の都合で、高校生の娘と家族3人でロンドンでの生活をスタート。これを機にイギリスの学校・教育について知りたいと思いましたが、娘は日本人向けの高校に通っていたため、学校訪問ボランティアの活動を開始。前回は、その活動をとおして見えたロンドンの学校の様子をご紹介しました。

今回は、イギリスの保護者の学校へのかかわり方についてお伝えします。我が家の娘もイギリスにある学校に通ってはいるものの日本人向けの学校なので、現地の小中学校にお子さんを通わせている友達からの情報なども含め、日本との違いを考えてみたいと思います。

ロンドンで朝夕によく見かけるのは、登下校中の子どもとその保護者の姿です。というのも、日本では小学校入学以降は子どもたちだけで登下校するのが一般的だと思いますが、イギリスでは基本的には子どもが小学生の間は保護者が送り迎えしなければなりません。子どもが一人で登下校することに慣れている私にとっては「大変そう……」と思いますが、両親で交代したり、近所の友人と助け合ったり……と工夫してやりくりしているかたが多いようです。

それ以外で保護者が学校へ行く機会はどれくらいあるのでしょうか。基本的に保護者の出席が必要なのはparents" meetingもしくはparents" eveningと言われる保護者面談、保護者会(年1~3回程度)くらいのようです。イギリスでは日本と違って授業参観日などを設けていない学校も多いようで、この面談で保護者は子どもの学校での様子、学習の状況を知ることができるそうです。また、参観日が設定されていない学校でも、保護者が希望すればいつでも授業参観できる学校もあるようです。

ちなみに、parents" eveningという言葉からわかるように、個人面談などは夕方以降に行われることが多いようです。先生方も授業が終わったあとですし、保護者も日中は仕事を持っているかたが多いので、この時間での設定になっているようです。また、任意で保護者が参加できる集会(日本でいう学習発表会や音楽祭のような行事)もあるようです。

ところで、日本の場合、新年度が始まり、学校での最初の保護者会に参加する前に気になるのは「PTA」というかた、少なくないのではないかと思います(私がそうでした)。この最初の保護者会でPTAの委員決めが行われる場合が多く、私の経験ではこの議題になった途端に皆うつむき無言になり気まずい沈黙が続き、その沈黙に耐えられなくなって誰かが立候補する……ということが毎年繰り返されていました。私自身も「娘がこの学校にいるうちに一度はやらなくちゃ……」と思いつつも、当時はほぼ毎日残業、休日出勤や出張もある生活をしていたため、平日の打ち合わせが多いPTAの仕事に積極的にはかかわることができず、肩身の狭い申し訳ない思いをして毎年新学期が始まっていました。

では、イギリスの学校のPTAはどうなのでしょう? 友人たちに聞いてみたところ、日本とはかなり違うことがわかりました。日本の場合は、クラス委員のように各クラスから必ず1名は選出というような強制感がありますが、イギリスは「やりたい人がやる」ということが基本のようです。もちろん、クラスから誰も委員が出ない場合もあるわけですが、別に構わないそうです。また、「PTA」という団体名ではなく、「Friends of School」と親しみやすい呼び名をつけている場合が多いようです。

活動自体もかなりシンプルで、日本のPTAのような会費や会報もなく、基本的には学校施設の修繕費などに充てるお金を集めるということが活動内容のようです。具体的にはバザーやディスコパーティー(!)などのイベントを企画・運営して、その収益を学校に寄付するというもの。イベントはもちろん、子どもたちが楽しむ場なので、委員ではない保護者もイベントに参加しがてら当日だけ手伝うという気楽な場合が多いようです。

もちろん、これも前回のイギリスの学校の様子と同じように、学校による違いはかなり大きいようで、家族そろって行事にも熱心に参加する保護者が多い地域もあれば、保護者面談すら欠席する保護者が多い地域もあるそうです。地域により、保護者自身の置かれる状況は大きく異なり、子どもや学校にも、それは陰の部分として大きく影響を与えているようです。

保護者面談やPTA以外で、保護者が学校にかかわる機会としては、ディナーレディー(またはランチタイム・スーパーバイザー)や学校理事会などがあるようです。ディナーレディーというのは、子どもたちの給食時間の見守りをする役割で、多くは有償ボランティアのようです。給食時間は、先生方は休憩時間にあたるため、その代わりを務めるのです。我が家の娘が夏にホームステイした際のホストマザーも、このディナーレディーでした。子どもが学校や園に通っている時間にできる仕事として、引き受けるかたも多いようです。ちなみに「ディナー」というと私は「夕食」のイメージなのですが、しっかりとした食事であれば昼食でも「ディナー」と言うそうです。

もう一つの学校理事会は、保護者、教員、地域の住人や教育委員会から選任され、学校運営や、場合によっては校長を含む教職員の採用の判断まで行うそうです。当然、その責任は重いのですが、基本的には無償だそうです。PTAのバザーもそうですが、イギリスでは、学校は保護者も協力して運営するものと考えられているようです。学校のことを協議し運営するには、学校・教育に関してそれなりの知識も必要になりますし、責任も重い役割ですので、この理事の経験は仕事のキャリア・実績と同じように評価されるそうです。日本でも、私の知っているPTA委員・役員には優秀なかたが多く、とてもいろいろな役割をこなしてくださっていました。ですが、それが仕事の実績同様に認められたという話は残念ながら聞いたことがなく、もっと評価されてもよいように思います。

友人たちの話を聞きながら、イギリスでの学校への保護者のかかわりは緩やかで自主的であると感じます。日本でも、仕事を持つ保護者が増え、PTAなどの活動が難しくなってきているように感じますが、シンプルな活動内容などイギリスから取り入れられるところもあるのではないかと思います。

次回は、放課後や休暇中の子どもの過ごし方についてお伝えします。


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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