説明文になると最初から苦手意識が邪魔をする[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小4女子(性格:論理的・弱気タイプ)のお母さま
質問
文中の登場人物に感情移入ができるような問題に関しては、よくできていると思うのですが、説明文になると、最初から苦手意識が邪魔をするのか「何が書いてあるのか、よくわからない」と言って、読むのを嫌がります。何度も音読させてみるのですが、本人にわかろうという意識が乏しいため、時間ばかりかかって無駄なようです。長い説明文などは、まるまる空白だったりします。
小泉先生のアドバイス
「得意な部分を少しずつ増やしていく」という方法が効果的
物語文と説明文でどちらが好きか聞くと、多くの場合、説明文のほうが読みにくいと言います。特に女の子は、物語文より説明文のほうが嫌いなようです。そのような彼らの「苦手意識」を克服するのは、なかなか難しい作業です。特に、お子さまのような弱気タイプは、言葉だけの励ましではなかなか納得しません。やはりテストの点数や偏差値など、目に見える形であらわれることが必要だと思います。
目に見える形で成果を出すには、「得意な部分を少しずつ増やしていく」という方法が効果的です。これはほかの科目にも使える手法で、算数であれば、まずはある特定の単元の学習に注力します。たとえば、「植木算」の問題を何問も解いて、「植木算」が出たら解けるという自信をつけるのです。全体を底上げするよりも、一つの単元をできるようにするほうがはるかに時間や労力が少なくてすみます。また、ある単元における問題を解く手順を習得することは、ほかの単元でも大いに役に立ちます。一つ得意な単元ができれば、あとはその数を増やしていけば良いのですから、目標が明確になり気も楽になります。
国語の場合は、「テーマ=話題」に注目すると良いでしょう。説明文でも論説文でも「何か」について説明したり意見を述べたりする文章です。その「何か(テーマ=話題)」は、好都合なことに中学入試ではある程度範囲を限定することができます。たとえば、説明文であれば、「自然環境」や「動植物」の話題であり、論説文であれば「文化習慣」や「言語・コミュニケーション」です。これらのテーマの文章が出てもなぜ読めないかと言えば、それは今まであまり触れたことのないものだからでしょう。知識もなければ興味もないのです。だから何が書いてあるかわかりづらく、「苦手意識」ばかりが先行して集中力が持たないのです。
そこで算数と同じく、たとえば「自然環境」をテーマにした文章を集中して何本か読んでみると良いでしょう。同じような内容が何度も出てくるでしょうし、時には違った視点での意見に出会うことになります。そうしていくうちに、「自然環境」におけるいろいろな知識、たとえば日本の「里山」のことや、「保全と保護」のことなどが体系的にまとまっていきます。知識が体系的になってくると、だんだんと文章の内容がすんなりと頭の中に入ってくるようになります。文章の内容が理解できれば、テストの点数も良くなるでしょうから、テーマが「自然環境」なら得点できるという自信がわいてきます。あとは、算数と同じく自分の得意なテーマを増やしていけば良いだけです。
ただし、点数や偏差値に結果があらわれるとしても、最初はそれほど大きくないかもしれません。ですから、少しでも成果があらわれたら大いにほめてあげてください。自分では「少し良くなった」と思えても、人に指摘されるほうが自信は強く持てるものです。
「得意な部分を少しずつ」という方法は、このように非常に効果的な手法です。しかし、やる順番を間違えないように注意しましょう。たとえば、互いに強く関連している単元を学ぶ場合は、≪元≫の単元から勉強する必要があります。具体的には、図形の性質→平面図形→立体図形などが良い例です。この場合、「図形の性質」をしっかり勉強してから、「平面図形」そして「立体図形」という順番で勉強しないと成果が出にくいということです。国語のテーマであれば、「動植物」→「自然環境」→「言語・コミュニケーション」→「文化習慣」の順番が良いと思います。