読書をすると国語の成績が上がるのか[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小4女子のお母様
質問
読書をすると国語の成績が上がるのかどうか知りたいです。
小泉先生のアドバイス
本を読むのが好きな生徒が必ずしも国語の成績が良いとは限りません。しかし成績を上げるには、過去に出題された入試問題の文章に数多くふれるという方法があります。
読書と国語力については以前お話ししたことがありますが、本を読むのが好きな生徒が必ずしも国語の成績が良いとは限りません。その理由としては、(1)国語の成績は「読む力」と「解く力」によって決まるが、読書だけでは「解く力」がつかない。特に「解く力」のなさは、記述問題などで顕著に出やすい。(2)読書では物語の展開を楽しむ生徒が多く、それぞれの場面における登場人物の心情などを細かくとらえないことがある。特にファンタジーなどでは、物語の展開に集中するあまり、登場人物の心情を意識しなくなる場合も少なくない。(3)読書では物語を読む場合がほとんどで、入試に頻出の説明文や論説文を読むことはほとんどない、などが考えられます。
しかしながら、国語力をつけるためには、やはりより多くの文章を読むことは必要です。と言うよりも、数多くの文章を読むことでしか「読む力」を強化させることはできないでしょう。そこで考えられる効率的なやり方として、過去に出題された入試問題の文章に数多くふれるという方法があります。使用する教材としては、志望校だけでなくほかの学校も掲載されている問題集をおすすめします。たとえば『2012年度受験用 中学入学試験問題集 国語編』(みくに出版)や『24年度受験用/国立・私立 有名中学入試問題集』(声の教育社)などには、首都圏の国立・私立の中学入試問題が収録してあります。前年の入試問題を集めたもので、その厚さから、大学受験では「電話帳」などと呼ばれることもあるようです。
この問題集を読書に使う場合は、読むだけで設問には一切手をつけません。問題を解きだすと、たちまちうんざりしてしまうからです。あくまでも読み物として好きなところを読んでいきます。他教科の勉強の合間に、気分転換として、一つの問題文を読むなどになれば理想的だと思います。
この厚い過去問題集を読むメリットは、たくさんあります。まず掲載されている文章は、元の文章から抜粋されたものですが、比較的中心的な内容である場合が多いでしょう。興味深い、味わい深い文章と期待できますから、楽しんで読めることと思います。また、文字数的にも一冊の本よりははるかに短いですから、本を読破するような負担はありません。特に論説文の場合は、難しい内容であっても短いので、なんとか読み終えることが可能だと思います。
もちろんテーマによっては難解なものもあるでしょうから、5年生から6年生の初めにかけては、読むテーマを「自然環境」や「動植物」などに絞り、慣れてきたら「言語・コミュニケーション」や「文化・習慣」と広げていくことは必要です。また、難しいものでも同じテーマを数多く読むと、だんだんと読めるようになってきますから、同じテーマを続けて読むことは意義があると思います。そして、続きを読みたくなる文章がいくつか出てくるでしょうから、その時は本屋さんや図書館に行って出典の本を手に入れてください。そのようにして選んだ一冊は、物語文でも説明文や論説文でも、きっと興味を持って読み進めることができると思います。
それからもう一つ。読解力をつけるためには、文章を通じて筆者のイイタイコトを考えることが大切です。できれば一つの文にして、問題文の内容をまとめてみましょう。「○○の物語」や「△△についての話」など、短い文章にまとめることで筆者のイイタイコトを的確につかむ練習が可能になります。
また、これらの問題集はあまりに厚いので、そのまま携帯したり読んだりするには不便かもしれません。場合によっては、本を分割したりするのも方法でしょう。そして何よりも、お子さまに与える前に保護者の皆さまが先に読んで、お子さまの力にふさわしい、楽しい文章を選んであげるのも良いと思います。あるいはその手間を省くのであれば、「偏差値55未満の学校の文章から先に読む」などの指定をすれば良いでしょう。ただし、偏差値がそれほど高くない学校でも、問題文の内容が難しい場合があるので注意したいものです。これらの学校は、設問を易しくすることで試験問題全体の難易度を低く抑えています。学校の偏差値が低いから言って、必ずしも問題文が易しいとは考えないほうが良いかもしれません。
以上の方法は5、6年生の皆さん、ある程度読書に慣れているお子さま、あるいは物語文は好きだがどうも論説文が苦手と言う生徒さんに最適だと思いますので紹介しました。