読書は好きだが、国語の文章題での読解力がない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

読解力がなく、作者が何を言いたいかなどをわかっていないことがあります。説明文や記述式の問題が苦手なようです。読書は好きなのですが、間違った解釈をしているのかもしれません。

相談者:小5女子(大ざっぱなタイプ)のお母さま



【回答】

読む量を増やしていくのが、論説文の苦手を克服し得意になるための早道


■苦手は論説文では?

苦手の項目に説明文とありましたが、恐らく論説文が苦手なのではないでしょうか。説明文は、何かについて説明する文章です。一方、論説文は筆者の意見を理由とともに述べる文章ですから、論理的で抽象的なものであることが多いと思います。読み慣れていないと筆者が何を言いたいのかよくわからず、困ってしまうお子さまも少なくないでしょう。この傾向は男子よりも女子に強く、実際に授業で手を挙げさせると、物語文の好きな女子に対して説明的文章が好きな男子ということが多いようです。

そして、お子さまの苦手が論説文であるならば、読書好きであることとは必ずしも矛盾しないと思います。なぜなら、通常の読書で、小学生が入試レベルの論説文を読むことはまずないからです。


■小学生が読書で読むもの

一般的に、小学生が日常の読書で読む本は、物語や伝記、あるいは自然科学に関するノンフィクションなどが多いと思います。物語には児童文学、SF、ファンタジーなども含まれます。こうした種類の本は、入試では"物語文"として登場します。もちろん、大人が読むような内容の小説からの出典も多いのですが、心情表現をとらえることが中心のため、日常の読書はある程度は役立つと思います。

一方、自然科学に関する読み物は、説明文として入試に出題されます。自然環境や動植物に関する内容のものが多く、比較的読みやすい文章だと思います。


■論説文は突然出てくる

それでは、論説文はどうでしょうか。入試に出題される論説文は、一般的に中学生以上が読むような本である「新書」からの出典が多いでしょう。日常の読書で、新書を読む小学生というのはなかなかいないと思いますが、入試ではそこからの出典の文章が少なくないのです。

もちろん、塾などでは論説文の文章も演習させますが、本格的な論説文は5年生になってからのことが多いと思います。そのため、突然出てきた"読み難い"文章にとまどってしまう子どもが少なくないのです。
そして、保護者の皆さんは「読書好きなのになぜ読めないの?」といぶかしがることになります。場合によっては、日頃の読書を"間違った解釈をしているのでは"と不安に思えてしまうかもしれません。しかし、そうではなく、新しいジャンルの読み物が出てきたと考え、新しいのですから、それに合った読み方をマスターしようとするほうが悩んでいるよりも効果的といえるでしょう。


■論説文の読み方を学び、そして慣れる

今までにない文章なのですから、読み方も違ってきます。もちろん、読書で物語を読む時と、試験で物語文を読む時でも取り組む姿勢はかなり違います。読書で物語を読む時は、鉛筆を持って線を引きながら、という人はあまりいないでしょう。しかし、試験の時は、問題文にある登場人物、その気持ち、特に気持ちの変化やその理由などの大切なところに線を引きながら読み進めることが多いと思います。そして、論説文の場合も鉛筆を持ちながら、大切なところに線を引き、メモを取りながら読み進めることが大切なのです。手を使うことは、考えることや集中することに大いに役立ちます。また、メモを取ることで何がどこに書いてあったかすぐに見つけられるようになるでしょう。

ところで、論説文で「大切なところ」とはどのようなところでしょう。まずは、何といっても「話題」や「まとめ・結論」です。これらをまとめたものが「筆者のイイタイコト」すなわち要旨になりますから、何としても見つけ出す必要があります。さらに、難しい言葉や概念について「理由」やその「意味」について説明している箇所も大切です。そうしたところが問われたり、その答えになったりすることが多いからです。

このように、大切なところに線を引けるようになり、どこに何が書いてあるかがわかれば、文章はある程度読めたと言ってよいでしょうし、少なくともテストの点数はよくなると思います。また、入試に出題される話題はかなり決まっているので、そうした頻出の話題(テーマ)に慣れ親しむことも有効でしょう。いずれにしても、難しめの問題文をいくつも読んで読み慣れることが大切です。読み始めてから試験本番まであまり時間がありませんから、特に論説文が苦手だと思ったら、読む量を増やしていきましょう。それが、論説文の苦手を克服し、さらには得意になるための早道だと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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