将来、理系大学に進学することを考えた志望校選定 [中学受験]

今年のセンター試験の傾向として、特定の学部・学科に進学しなければ資格が取れない、医・歯・薬・看護などの医療系を志望する生徒が増えたそうだ。不況の影響で、就職難が続いている現状では、当然の成り行きと言えるが、ここで、中学受験を目指す保護者としては注意すべきことがある。
これら医療系大学を受験するためには、数学と理科が受験科目となる場合が多いが、中学校・高校では理系科目の数学と理科をうまく教えられる教師が少ないと言うことだ。文系の科目の英語・国語・社会でもなかなか良い先生がいないようで、採用するのが難しいということだからなおさらだ。理系科目では、子どもの才能にもよるが、指導力ある先生かどうかで、子どもの学力に大きな差が付く。しかし、学校案内を見ても教師の指導能力があるかどうかはわからない。指導した結果を見るしかない。つまり、大学受験合格実績で、指導した結果から推測することしかできない。

大学受験合格実績は学校のHPなどを見ると載っているが、大学名だけの合格実績が多く、学部や学科での発表は少ない。たとえ一部の学校で発表されていても、他校で発表されていなければ比較ができないので意味がない。そこで、東京理科大などの理系専門大学で、受験者数・合格者数が多い大学に注目して、合格者数/卒業者数で志望する中学校の実績を比較すると、同じ位の偏差値の学校でも理系の受験に強いかどうかがわかる。
たとえば、東京理科大の合格者数を卒業者数で割って、その数値で学校が理系に強いかどうかを判断する。合格者数には現役生と既卒生が含まれるが、どの学校も既卒生の割合が同じで、現役生と既卒生の割合は毎年同じと仮定すれば、学校同士を比較するうえでの問題はない。偏差値が高い学校でも、この数値が低ければ理系科目の指導が弱いと判断すべきだが、男子校は女子校よりも、この数値が高くなるのは、男子のほうが理系大学に進学する割合が高いからで指導力のせいではない。男子と女子のいる共学校は、男子校と女子校の中間になる。

つまり、学校が理系に強いかどうかは、男子校なら男子校同士で比較しなければ、判断できないということだ。女子校では、もともと理系志望者が少なかったが、最近では、女性が一生の仕事として医療系の仕事に就くことが多くなってきたために、医療系大学志望の受験生が増えてきた。文系大学志望者しかいなかった上位の女子校が医療系大学志望者に戸惑っているケースもあるだろう。

我が子の将来を考えて、理系の大学に進学させることが選択肢として大いにあるならば、単に偏差値だけではなく、大学受験合格実績でも理系大学の合格実績を比較して、志望校を選択すべきだろう。理系大学の合格実績の高い学校には、理系科目の指導に優れた教師が多いと考えられる。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

子育て・教育Q&A