遠距離通学のメリット・デメリットは? [中学受験]

今回は、遠距離通学についてです。保護者のかたから次のような質問がありました。

(質問)
田舎に住んでいるので、中学受験を考えると、通学時間が片道2時間以上かかります(電車は1時間に1~2本しか通っていません。交通手段は電車のみです)。子どもがどうしてもこの学校に行きたいと決めたところは遠く、本人は「時間がかかっても、がんばって通う」と言っています。親が車で毎日送り迎えしても、やはり2時間以上かかります。いろいろなサポートは親もできる限りしますが、通学は子ども自身なので、大丈夫か心配です。遠い学校に通うことは可能でしょうか? 現在、遠距離で通学されているかたがいらっしゃったらアドバイスいただけると助かります。お願いします。

(回答)
少しでも近くの学校に通わせたいという保護者の気持ちはわかりますが、実態はどうでしょうか。首都圏の私立中高一貫校105校を対象に遠距離通学の実態を限度通学時間の調査で行いました。限度通学時間の定義としては、生徒の生活に支障がない限度として考えられる通学時間ですが、学校の回答は、110~129分が31%、130分以上が19%と半数の学校は、120分以上の通学時間でも支障はないと回答しています。110分以上を限度通学時間とした学校は、難関校・上位校で65%、中下位校で44%が占めていて、入試難易度ランクの高い学校のほうが多いことがわかります。やはり、学校の教育内容が高ければ、通学時間を犠牲にしても良いと考える受験生・保護者が多いことがわかります。

「遠くから通ってくる生徒は、人格・成績とも良い場合が多い」と考える先生も多いようです。先生方の話をまとめると、「毎日、長時間電車に乗って、その時間を勉強に使うことで、毎日電車の中でコンスタントに勉強ができる。電車の中は、周りに人が大勢いるにもかかわらず、集中できるので、勉強するには最適な環境と言える」そうです。遠距離通学の生徒に成績の良い子が多いのは、勉強をするからではないかと言えます。また、電車の中では勉強はもちろん、趣味を楽しむこともできるのです。さらに遠距離通学となれば、学校にいられる時間は短くなり、また、電車の本数が少なければ、1本電車を乗り過ごすと次の電車を長時間待つことになるので、時間の管理が上手になることも考えられます。

これらの一見デメリットと思われることがメリットとなるのは、子どもが行きたい学校だからです。子どもが前向きな気持ちで取り組むからこそ、メリットとなると考えられます。遠距離通学する生徒が自分では行きたいと思わない学校であったら、「欠席」「不登校」などのデメリットのほうが多くなると思います。保護者の相談内容の中で「子どもがどうしてもこの学校に行きたい」というのが、キーポイントだと思います。子どもが行きたいと思う学校ならば、遠距離通学は、むしろ子どもにとってメリットとなるのではないでしょうか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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