人はなぜ働くのか? 考えることで将来の夢と向き合わせる達人の授業
NHK Eテレの教育番組を担当する、NHK制作局チーフ・プロデューサーの桑山裕明氏。学校を訪ね歩く中で、「こんな先生に教えてほしい」と思う授業に出会うことがあるという。今回は、子どもたちを正解のない問題に取り組ませる授業の達人、岡山県のAQ先生。ベネッセ教育情報サイトでは、10年後の自分の「未来予想図」を書くという、小学校6年生の総合的な学習の授業を、桑山氏に紹介してもらった。
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正解のない問題は子どもにとって難しく、先生の力量が問われます。このような問題は、中学校、高校、大学、社会へと進む中で、一番多く向き合う課題といえるでしょう。その最初の壁になるのが、AQ先生のねらい。粘り強く自分自身と向き合い続けて、あきらめない意志を育てることを目指しています。
授業は、「なぜ働くのか」を考えることから始まりました。多くの子どもたちの頭の上には「???」が浮かんでいます。「どうすればいいの?」「正解は何?」「先生が望んでいることは?」と、その場で立ちすくんでいる状態。社会に出てもよく起きる状況です。そこを脱出する手だてをAQ先生は、身に付けさせていきます。
先生は、「わからなければどうしたらいい?」と訊ねます。「インターネットで調べる」「人に聞く」「本を読む」など、子どもたちは情報を集める方法は、よく理解しています。そこで先生は、「社会人に質問する機会を作るので、その質問作りをしましょう」と提案します。先生を社会人の代役にして、作った質問を投げかけていく中で、子どもたちは表面的な質問では「自分がなぜ働くのか」へのヒントには行き着かないこと、「自分だったらどう答えるか」をイメージした質問が必要なことに気付き、さらに深く考えていきます。その上で、最終的に自分の夢とあらためて向き合いました。
小学生をここまで追い込む? と驚きましたが、未来予想図を書き上げた子どもたちの笑顔には、「考えてよかった!」という達成感が浮かんでいました。
出典:未来予想図を書いて将来と向き合う、総合的な学習の授業 -ベネッセ教育情報サイト